それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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だが今ここに居る彼女らにとっては贋作にあらず


複製された者

「もう、一度言ってくれるかしら?」

 

「ま、待って、そりゃあ私だって驚いてるさ、でも確かにあの資料のはそう書かれてた、それは間違いない」

 

「その全滅ってのはどういう意味でだ?」

 

決して笑えないという冗談に感情が失せている声の416にアーキテクトが両手を振るいながら慌てて弁解すればまだ冷静なM16がそう聞いてみる。

 

だが彼女から返ってきた答えはM16が欲しかったものとは違った。向こうもそれを理解しているのだろう、少し顔を俯かせながら

 

「文字通り、だよ。ご丁寧に科学者達は一人一人に実験を行い……死亡を確認して、結果、計画は凍結された。当時の私はそこで興味を無くしたんだけどさ、あのイントゥルーダーが指揮官の眼のことを話してるのを聞いて、あれって思ってまた資料を漁ったら」

 

どうやらデータとして手元に残していたらしく、PCのモニターに鉄血に居る時に彼女が見つけたという資料が表示される、題は『第二次【支配者(ルーラー)】適合実験』二人はでは指揮官はこの時に?と思ったがアーキテクトはその考えを見据えていたのか、首を横に振って

 

「……この第二次は、第一次の時みたいに孤児や誘拐した子供を集めて行ったものじゃない、それじゃあ成功率は相も変わらず低いままだからね」

 

「じゃあ、どうしたんだ?」

 

M16が問いかけるも、まるで話したくないという態度で急に静かになるアーキテクト、それでも話さないといけないとは理解しているのだが口は思うように開いてくれない、そんな感じの口の動きに416も何があったのかと心配になる。

 

何を彼女は答えを出し渋っているのか、それとも本気で言い辛い内容なのか、推測しようにも材料が少ないと416もM16もどうしたものかと悩んでいると意を決したという表情のアーキテクトが漸く答える。

 

「だから、第一次を担当した科学者は第二次の被検体に選んだのは……第一次の際に一番適合率が高い数値を出した子供の遺体、そこから……クローンを作り出し、それに微調整を加えながら被検体にしたんだよ」

 

「おい、おいおい、冗談だろ、それってまさか」

 

「言わなくても分かる、クソが」

 

誰の、などという疑問を持つ間もなく二人には理解できてしまった。だからこそ質の悪い冗談だと思いたくもなった、そんな感情を抱いているとごめん、まだ続きがあるんだとアーキテクトが告げ話を再開する。

 

実を言えば資料は蝶事件の最中に一部は消失しており彼女が手に入れ読んだのも一部なのだがそれによれば、クローンは少なくとも数十人は作られ、ここに居る指揮官は恐らく最後の方のナンバーだということ。

 

適合させるためにナノマシンなどが投与され体の一部はハイエンドのそれと近い物に変えられていること、そこで416から待ったが掛かる、だとすれば

 

「PPSh-41が健康診断なり、何だったらこの間の手術とかで気付いて報告を上げるはずよ」

 

「見た目とかは人間のそれとは変わらないんだと思うし数値とかは投与されたナノマシンが誤魔化してるのかも知れない、ごめんそこらの細かい技術とかの資料は見つかんなかった」

 

「にしたって、今の今まで何もなかったし、指揮官はここ最近はある程度運動はできるようになったけど、最初の頃なんかは年頃よりもか弱かっただろ?それがどうして急に」

 

「挙げれる推測があるとすれば、あの暗殺未遂、意識が回復してからほら、お隣の指揮官に活を入れられて、多分それが一番大きな変化の原因だと思う」

 

それがどう関係するのかと詳細を求めれば、アーキテクトは再度PCを操作しながら、こう続けた。

 

曰く、支配者(ルーラー)というハイエンドモデルはエルダーブレインが暴走しても影響を受けないように人間を素体にした。しかし素体と言ってもクローン、しかも急速成長を促した存在なので着任当初の指揮官が運動神経がないとか体力がないとかはそこから来ていると思われる。

 

続いて、では何故最近まではハイエンドの雰囲気などは感じなかったのにそれを感じ、更に身体能力もドンドン飛躍し始めているのかについては彼女の経過観察のために金と引き換えに向かわせた養子先での虐待に寄って人間不信となった結果

 

支配者(ルーラー)は資料によれば人類に味方であれと言う存在、なのに当の本人が人間不信なもんだからハイエンドとして機能が全てバグったんだと思う」

 

「じゃあ、この基地で指揮官が過ごしている内にバグが収まって、言い方変だけどハイエンド化が進んだってこと?」

 

「進んだのは本当に最近だと思う、この基地に来てから確かにユノっちは人間不信が改善されて言ってたけど結局はセーフティみたいなのが掛かってたからね。だけどあの暗殺未遂後にお見舞い、と言うかカウンセリングによってユノっちの中で人形とか人間とかの括りが消えてしまった」

 

結果として、少々強引にだけど支配者(ルーラー)の機能がそれで回復し始め、だから最近になってM16もそれを感じるようになったのだと語り、でも確かにこれも問題なんだけどとアーキテクトは本当に恐れていることを口にする。

 

「ユノっちの身体が、後どれくらい保つのか、本当はこの事に関する資料を見つけたかった、ハイエンドとしての素体として作ったのならそんなに短命とは思えないんだけど投与されたナノマシンがどんなものか分からないし……」

 

「ハイエンド化とか、そういうのは指揮官に悪影響無いのか?」

 

「多分、無いとは思う。危険だったのは眼の脳に対する侵食だけだったし、あれも本来はハイエンド化と同時進行で行われるはずだったから危険って話だけど」

 

「じゃあ当面の問題は指揮官の身体、それと」

 

これを話すか否か、だがそれに真っ先に反対したのはアーキテクトだった、416がその話題を出した時、席から立ち上がり

 

「だ、駄目!!それは絶対に駄目、何が悲しくてユノっちに君はクローンだとか言わなきゃいけないの!?そもそもクローンだとかそんなの関係ないじゃん!!」

 

「誰もクローンだからどうこう言うつもりはないわよ、でもそうね、指揮官は衝撃を受ける程度で済むかも知れないけど……」

 

「副官がこの事を知るのはマズイな、そういや指揮官の母親は知ってたのか?」

 

「レイちゃんは知ってたよ。それでも彼女は双子が出来たわねとかそう言って受け入れた、いや、でもこういう呼び方は良くないけどオリジナルのユノっちの生存も諦めてなかったっぽいけど」

 

だからといって副官が大丈夫だという保証は無い、そういう事でこの件はこの場の三人、それと指揮官に投与されたというナノマシンの調査のためにM16がペルシカにも協力を仰ぐことを提案、それと同時にPPSh-41にも身体の数値などを今一度再調査してもらうためにこの件を伝えると決める。

 

「私も、出来るだけの事はしてみる。でも現状はD地区のドリーマーとかには」

 

「伝えない方が良いわ、情報漏えいの確率はできるだけ抑えるほうが良い。M16分かってるわね」

 

「勿論だっての、AR小隊にも伝えない、安心しろこれでも影でコソコソは得意だ」

 

「ああ、そうだM16。このUSBメモリをペルシカって人に渡して、中身はこの適合実験の資料と私なりに推測してみたナノマシンについてが入ってる」

 

投げ渡されたそれをM16は受け取り、とりあえず今日はもう難しいので後日ペルシカに渡しに行くことにし、それから再度この事は出来るだけ内密にという確認をしてから解散となり、急いで執務室に戻り、残りの片付けられる業務を終わらせているとガチャリと扉が開かれ、ヘトヘトですという顔の指揮官と副官が入ってくる。

 

「おかえりなさい、どうやらそれなりに絞られたようね?」

 

「あれ、416?ああ、まぁはい……」

 

「む、もしや仕事を?」

 

ええ、放ったらかしで慌てて出ていった誰かさんたちの代わりにねと笑いながら言いつつ、指揮官を観察、あのすれ違った時みたいな雰囲気ではなく緩い感じの空気に何処か安心を覚え、ついつい優しいほほ笑みを浮かべてしまう。

 

「ん、どったの急に、あとお仕事ありがとうね!」

 

「ふふ、そうね。やっぱり指揮官はその空気が一番似合うわと思っただけよ、それと礼には及ばないわ、だって私は完璧なのだから、これくらいのことは苦でもないわ」

 

そう、私は完璧よ。だからあの真実を隠し続けるのも、造作でもないわ。




極低確率の適合率を突破したとかじゃなかった系少女

本当はもう少し色々書きたかったのにいざ文にしようとしたら大半が消し飛ぶの何なんでしょうね……ガバガバ理論やんけこれ!!

Q
つまり?

A
此処に居るユノっちはクローンだよ。
ハイエンド化する条件が整ったので進行してるよ。
ユノっちの身体がこの先どうなるかは分からないから急いでナノマシンの解析とかするよ。
指揮官にならまだしも副官には絶対に知られちゃ駄目だよ。

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