それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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動物も人も人形も機械だってクソ暑いのは苦手


ファッキンホット!!

平年のデータであれば熱くはなるはずだがこんなに気温が上がることはなかったはず、一部からは愛嬌があると愛好家が出始める警備ダイナゲートのメインカメラのモニターの温度グラフが指し示している数値と平年のデータを比べ明らかに異常であると告げる。

 

耐熱やら何やらと施されてはいるダイナゲートではあるがかと言ってこの暑さに加え地面のアスファルトからの反射熱も加われば流石に異常を来し始めても可笑しくはない機体温度になってしまう、無論そんな事はこのダイナゲートに搭載されているAIも理解できているのでガチャンガチャンと行動を開始してとある場所へと向かう、その場所とは宿舎の中に設営されたその名も【ダイナゲート冷却スタンド】読んで字のごとくである。

 

基本的にこのスタンドには警備型のダイナゲートやアグリカルチャーなどの外で活動することが多いダイナゲートが集まり、小型クーラーの効いた空間で伸び切っている、とダイナゲートがこうなるほどの暑さということは、それはつまり

 

「動物たちも、相当きついようね……」

 

「だからこうして水浴びをしてあげてるのですけどね、それにしても水浴びても動きませんね大福」

 

中庭、柵で区切りがされている空間の中で普段は救護室にいる動物たちも今日はここでWA2000とG43の二人が水浴びを行っている、救護室でも温度調整はされているのだがそれでも一部が茹だっていたのだが始まればみんながワイのワイのと楽しげに遊んでいる。

 

しかし、その空間でも大福はぶれない、例え子猫や子犬に踏みつけられても、何処から来たのか鳥たちの羽休めにされても、水浴びの水を直撃しても微動だにしない、流石に水の時は身震いをして体の水分を飛ばしているが。

 

「ガッ、ガァ!」

 

「はいはいって、チョコパイもずいぶんと慣れたわね此処に」

 

「クア、クア゛!?」

 

「……フゥ!」

 

どうにもチョコパイが近づいてきたときだけは容赦ない猫パンチが飛ぶ、だがチョコパイはそれを回避して抗議するも大福は一つ鳴いてからまた寝転がる、どうにも彼?彼女?的にはチョコパイは気に食わないらしい。

 

それを二人は何とも微妙な表情で見つめつつ、近寄ってくる他の動物と水浴びを楽しむ、動物でもこうして水浴びをしなくてはならないほどには暑さを感じる基地内部、それはつまり……

 

「うぅあぁああ」

 

「流石に急に熱くなられるのはキツイのじゃ」

 

執務室の指揮官が呻き声を上げ溶けているということになる、元より暑さには少々弱い彼女、前もって時期が分かれば覚悟も出来るが此処数日の気温上昇はあまりに唐突すぎた、そして間が悪い事に

 

「どぉしてエアコンがまだついてないの執務室~」

 

「来週の予定だったのじゃよ、それに前も何だかんだで扇風機と風鈴で乗り切れたからなぁ」

 

「それと、今回は、別個に考えようよ」

 

ていうかこの基地だってもう前みたいに小さい訳じゃないんだから全部屋エアコンでも許されない?と指揮官が愚痴る、一応エアコンを使うリソースもこの暑さで思考がやられてきたアーキテクトが電気は大切にね!とかのたうち回り、基地に大型発電機の『たいようばんざいちゃん』による超ソーラー発電で割と余裕で賄えるほどにはあるので設置しようと思えば可能である。

 

が肝心のエアコン本体が無い、本社から取り寄せても数日、今アーキテクトが作ってるのも早くても明日、つまりどうあがいても今日はどうしようもないのだ。

 

「扇風機、そうだよ、エアコンよりも先に扇風機をアーちゃんに改良してもらうべきだったんだよ」

 

「しっかりしろ指揮官、思考が飛びすぎているぞ」

 

段々と良く分からないことを言い出すという器用な真似をする指揮官にやれやれと思っていると扉がノックされて入ってきたのはM16、彼女は入ってくるやすぐに

 

「お、溶けてんな指揮官、所で今二人共暇かい?」

 

「なんじゃ突然、まぁ見てのとおりじゃよ。強いて言うなら指揮官が暑さに思考まで溶け始めているくらいか?」

 

「はは、そりゃあ大変だ、だったらプールに来ないかい?M4たちも今そこに居てさ、折角だから誘ってこいって言われたんだけど」

 

ガタッ!と音が聴こえ二人が見ればプールという言葉に席から立ち上がり眼をキラキラさせている指揮官の姿、どうやら今の今まで存在そのものを忘れていたらしく、その顔は盲点だったと言わんばかりの表情になっていた。

 

「……プールあったねそう言えば!」

 

「まぁ、わしもすっかり忘れかけておったわい」

 

「おいおい、SPPとかよく泳ぎに行ってるだろ……」

 

それでも忘れるものじゃよと言いつつ呵々と笑う副官とすぐに準備して来るねと執務室から消えた指揮官、先程まで溶けて茹だっていた少女とはまるで別人の動きの良さに苦笑を浮かべつつ、グッと立ち上がり

 

「思えばプールには足を運んだことがなかったのう」

 

「副官ってそもそも水着すら見たこと無いんだが?」

 

「当たり前じゃろう、持っておらんのじゃらかな」

 

さも当たり前の表情でそう告げてから、プール用の服を持ってくると彼女も執務室から出ていく、一人残されたM16は割とこういう時は自由な二人だよなと思いながら自分はプールに向かうために執務室を後にする。

 

因みに、プールに現れた二人の格好は指揮官は例のスク水、どうにも泳ぎやすい着やすいからと気に入ったらしい、流れでAR-15がM4に沈められたのは残当だろう。対して副官は白の半袖Tシャツに緑の半ズボンとラフな格好で現れ周囲が驚く光景が見られた。

 

こうして暑さで溶けていた指揮官はAR小隊と水遊びをしとてもとても涼しく楽しい一日を過ごすのであった、まぁその光景をRO635が普段のキリッとした表情を崩しに崩して見ていたのは余談だと思いたい、その視線の先に指揮官達だけではなく比較的ちびっ子人形達が遊んでいる光景も入ってたのも気のせいだろう、彼女は今日も常識人なのだから。

 

……そして、その翌日の深夜、416とM16は副官が何時も喫煙所としている屋上の扉に向かう階段前でばったり出会う。

 

「……もしかしてお前も呼ばれたのか?」

 

「そう、M16も呼ばれたのね」

 

これはもしかしなくてもマズイ展開だな、そうぼやくM16に頷いて賛同してから階段を上る、416もM16も完璧に隠し通していた、調べる時も最大限の注意を払っていたつもりだった、だがしかし

 

彼女等の完璧を上回られた時、それは無意味となる、彼女達は忘れていた。最近は茶目っ気があったり抜けていたりが多かったが故に副官と言う存在の底知れぬ洞察力を、勘の鋭さを、何より扉を開け屋上に着いた彼女達が見た。

 

「すぅ、ふぅ~」

 

タバコを吹かした紫煙の向こうから見える鷹のような鋭い瞳から発せられる威圧、嫌でも感じさせられるこの基地の裏のトップとも言われる者の空気を、場馴れしているはずの二人がそれに飲まれ緊張に身体を固くする、それを見て副官は静かに告げる。

 

「お主ら、何を探り、調べておるのじゃ?言ってみよ」

 

自分達は忘れていた、誰よりも何よりも指揮官という少女を側で見続けたのは彼女だったという事を




先に宣告します、おばあちゃんは強い人でした。つまりどういうことかって?明日を待て

あとROはすぐに出頭するように

アーキテクト製品紹介コーナー
『たいようばんざいちゃん』
ソーラー発電システム、従来のそれよりも遥かにいい電気効率で太陽光から発電し、これ一機でこの基地を賄えるほど。大型と言ってはいるがそこまでスペースを取るものでもない、現状は三機稼働中

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