それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
マズイ、M16の思考はそれに終着する、他の誰かならば話した上で黙っててくれで済んだかも知れない、だが相手が副官となるとそうも行かない。
この事実はどう考えても彼女には耐えられない、特にM16は副官の悲壮にも似た覚悟を聞いてしまってるが故にそう考える。絶対にメンタルに異常をきたすレベルで衝撃を受けてしまうと、だからこそ何とか誤魔化したいのだが
「どうした、よもや話せぬことをしているというわけではあるまいて」
目の前の彼女はそれを許さない、口調こそいつもの調子に感じるが声の性質が明らかに誤魔化しも嘘も許さないと語っている。ハッキリ言えばこうなるともうM16にはあまり手段がない、影でコソコソは得意だが面を切っての腹の探り合いは言うほど得意ではない。
しかしこのまま黙っていられる訳もない、どう切り出していくべきかと悩むM16を知ってか知らずか、416が何を思ったのか
「指揮官についてよ」
「おまっ!?」
「黙ってて、大丈夫私は完璧よ」
ものっぞい不安なんですけど!?と思うも既に賽は投げられた、なので言われた通りにM16は黙って事の成り行きを見ていくことにする。
対して副官は416の言葉にほぉ?と声を上げる、だがそれは何となしに態とらしいと感じてしまう、もしかしたら割とこっちの行動筒抜けだったのではと思わざるを得なかった。
「して、指揮官の何を調べておったのじゃ?」
「眼の適合実験の際に適合率を高めるために投与されたらしいナノマシンよ、それについて調べ回ってるわ」
416は怯まない、副官から威圧混じりな質問にも決して嘘は言わずに答えていく、確かに今日までの行動は全てナノマシンに関することではある、PPSh-41から今までのカルテのデータを受け取り、そしてペルシカには例のUSBを渡して調査の依頼。
結果はまだ出てないし、カルテのデータからアーキテクトが何度もナノマシンの尻尾を掴もうとするが上手くはいってない。これでとりあえずは切り抜けられるかと思ってたその時、副官は一度タバコを吹かしてから二人を見据えて、一言
「それで、他に何を隠しておる」
「他って何か……」
「二度は言わぬぞ、何を隠しておる?」
威圧が、更に重くなる。416が本当の中に上手く隠していたことを副官は見抜いていた、先の質問の時点で何かしらを掴んではいたのだろう、そして416の答えで確信に変えた、何がどう確信に変える要素だったのかはM16にも416にも分からないが。
言葉に詰まる416、当然だろう自分達が副官のために何が何でも隠そうとしていたことなのだから、話せるわけがなかった、どうする、どうすればとひたすら電脳の中で糸口を模索する416だったがポンっと肩に叩かれた衝撃で我に返りそっちを見ればなにか覚悟を決めたM16の姿。
まさかコイツと言う目で見つめれば、向こうはもし万が一の時は私が悪役だと小さく呟いて
「副官、あんたの指示通り私達が隠そうとしたことを話す、だが……覚悟はしておいてくれ、いや、覚悟をしてくれ。これから話すのは今までとは段違いで、副官には辛い話だとこっちは思ってるからな」
「……良い、話せ」
許可が降りる、アーキテクトから聞かされた『ハイエンドモデル【
「今、ここで指揮をしている彼女は……その被験者から作られたクローンだ」
真っ直ぐとしたM16の目が副官を見つめる、どうなるかなんてもはや分の悪すぎるギャンブルだった。隠し通せないしあの副官が適当なことを言って納得するわけもないという理由で自分が悪者になるの覚悟で行ったことだ。
だが、彼女の予想とは反して副官はそれを聞いてから箱から一本取り出して、慣れた手付きで火を付けて吹かし、それから
「ああ、やはりそうだったか」
「やはりそうだったか?え、ちょ、ちょっと待ちなさい副官、貴女もしかして」
「クローンだとかの確証はない、ただ……そうさな、違和感みたいなものは感じておった」
それはクローン元になった『ユノ』とそして今副官を務めているこの基地の指揮官の『ユノ』二人と過ごしたことがある彼女だからこそ気付けた差異、まず初めに気付いたのは利き手。
クローン元の『ユノ』は左手だった、それはレイラと同じでありこの辺は遺伝だねぇと喜んでいたのを覚えていた。だが再会してからの『ユノ』は右手になっていた、だがこの時点では養子時代の所為だろうと思い気には止めなかった。
だがその後も過ごせば過ごすほどに微妙な差異に気付いていく、記憶がなくなり、養子時代を考えれば当然だろうとも言われるものだが副官にはどうにも引っかかりを覚えてしまっていた、更に言えば
「わしはな、レイラ程に楽観視出来る人形ではないのじゃ……誘拐され、レイラが死に、その時点で恐らくユノも駄目じゃろう、いやそう考えるのが当然じゃと考えるほどだったからな」
無論、レイラとて楽観視しして娘の生存を信じてたわけではないとは思うがなと悲しげに笑ってから、だからなと続け
「指揮官が現れた時は素直に喜んだ、奇跡が本当に起こったのかとな。だがその差異を見続けていく内にわしながら残酷な考えが浮かんでしまったのじゃよ……」
「もしかしたら、似てる誰かかも知れない、と?」
「ああ、酷い祖母じゃと笑いつつ、同時に腑に落ちてしまう部分もあってな、まぁだから何だという話で片付けてしまってはいたが、そうか、こういう時の勘だけは当たってしまうのう」
だが、そこでM16は思うのは、彼女なりに覚悟を決めていたとは言え、あそこまで彼女を孫娘のように思ってた副官がどうして今こうして冷静にいられるのかという疑問。
聞けるわけがないその疑問、だが副官はそれを勘付いたのか、一度タバコを吹かし呵々と笑って
「わしがアヤツがクローンだと知ってどうにかなるとでも思うたか?」
「まぁ、正直言えばな。前に話を聞いた身としちゃあそう思っちまうよ」
「馬鹿にするなよ、アヤツがクローンだとか何とかで今までを否定するほど落ちてはおらぬ、それにな、最後にレイラとあったあの作戦の時に『ユノをこれからも頼んだ』そう伝えてきておる、間違いなくあの時点でクローンだと気付いているはずだと言うのにな?」
彼女は副官として祖母として指揮官と過ごしてきた、その中で楽しい思い出も、辛い思い出も、笑いあった思い出も、どれも本物であり、掛け替えの無いものだ。それをクローンだから、本物ではないから、そんな線引をしてどうなる。
寧ろ、彼女はこう告げる。奇しくもそれはアーキテクトが聞いたレイラの言葉と……
「それにじゃ、アヤツのクローンだと言うならば双子というのはどうじゃ、なぁに今更あやつとの接し方も変わるわけではないがそう考えるのも悪くはないじゃろ?」
月明かりに照らされながらタバコを手に持ち不敵に笑う副官、その顔に強がりはなく、だがどこか少しだけ一人にしてくれと伝えているような目をしていたのを感じた二人は
「はは、全く強い婆ちゃんだな……詳しい話は後日にな、タバコ吸いすぎんなよ~」
「私達の苦労は何だったのよ全く、匂いちゃんと消さないとネゲブに言われるから気をつけなさいね」
それだけを告げて屋上から去ったのを副官は確認してから、ゆっくりと偶然にも満月の月を見上げ、またタバコに火を付けた。
何も言わずにただ月を見上げ、途中ふと何かに気付いた彼女はああ、参ったのじゃと呟く、その声は少し震え頬には一筋の涙が流れ始め、彼女はそれを拭かずに
「こんな綺麗な月だと言うのに雨が振りおったわい……ああ、勿体無いのじゃ、これでは月がキチンと見れぬではないか、仕方がない、名残惜しいがこれだけはお主らに伝えよう」
親子二人で水入らず暮らせよ、わしはこっちでお主らの『娘』であり『妹』と共に過ごしてから揃って向かってやるのじゃ。
いろいろ考え、メンタルブレイクルートも生まれ、だけどこれ以上追い込んでどうするんだと思い、再度考え、今回の流れになりました。
確かに今までを見ればメンタルが弱いかも知れないのにどうしてとか思われそうですが、ごめんなさい、もう自分が持たないんですこれ(満身創痍
まぁまだユノっちのナノマシンとかの問題は残ってますがまたドッタンバッタンします、ええ、しますよ!