それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
「へ、ゲーガ-さんがこっちに?」
《ああ、本部から正式に異動が出てな。どうやら今日まで揉めに揉めていたらしい》
「揉めすぎじゃろうて……」
失温症作戦後、F小隊の方に保護されていたゲーガ-から今朝方通信が入ったと思えばこの基地へ配備になったという話、これは二人にとっても初耳であり理由を聞けば、上記の通りかなり揉めていたのか、今日まで保護という立場だった彼女を本部はこの基地への正式な人形の一人として決定したらしいとのこと。
しかし向こうで牧場の牛飼いみたいなことをして働き、警備も担当し、F小隊とも交流を深めていただろう彼女。それについて大丈夫だったのかと聞いてみれば返ってきたのは微笑んだと思われる声、それから
《まぁ、悲しまれはしたな。だが何も今生の別れというわけではない、会いに行こうと思えば行けるから問題にはならないさ》
「ならいいけど、ゲーガ-さん、何だか柔らかくなった?」
《フフ、向こうで過ごしていれば嫌でもこうはなるさ。ともかく今向かっている、それと手土産もあるから楽しみにしててくれ》
以上だとそこで通信が途切れる、通信機越しから聴こえた音からどうやらハンヴィーに乗ってきてるらしいことから到着までの時間を推測して準備を進める事に、その間に副官は念の為とF小隊の方にも確認を取り間違いがないことを確認しておく。
因みにだがアーキテクトには何も知らせていない、これについては指揮官が
「ほら、サプライズってやつだよ!!」
「ほぉ、わしはてっきり普段から拉致られたりするからその意趣返しかと思ったが違うのか」
「……そ、そんなことないし、うん、無いし!」
意外と根に持っていたようだ、目を泳がして答えた指揮官に副官は少々呆れ顔をしてからまぁそれならばそれでよいがなと指揮官のささやかな嫌がらせがそれなりに成功することを祈っておく事にした、偶にはそういう事を挑んでみるのも彼女の糧になるかもしれないと。
数時間後、正門前にて彼女達は居た。居たのだが二人はゲーガ-の姿に驚いていた、彼女達の最後の記憶はハイエンドモデルらしいあの中々に過激な姿だったのだが今こうして降りてきたのは大きめな麦わら帽子、白のシャツに青いオーバーオールというまさに牛飼いという格好
「お待たせしたな、ゲーガ-、本日付でS09P基地への正式配属となった。ってどうした、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
「いや、お主その格好は?」
「これか?どうにも最近はこれじゃないと落ち着かなくてな、だが安心してくれ作戦時はそれ相応の姿になる」
「ず、随分と向こうで働いてきたんだね。んっん、ともかくようこそ!って言いたいんだけどさ、その、さっきからハンヴィーから聞こえる鳴き声は?」
指揮官の言う通り、ゲーガ-が乗ってきたハンヴィーの後部座席からは鳥と思われるモノの鳴き声がけたたましく聴こえ、副官も触れようかどうしようか悩んだほどだった、というより彼女達はその鳴き声を知っている、これは間違いなく、というタイミングでふらっと現れたVector、そして
「2羽の鳥、そう、『ニワトリ』ね……ぶふっ、くっふふ」
「自分でツボるのか」
困惑の声の副官、気付けば後部座席のニワトリも静まり、場には物凄く微妙な空気とVectorの堪えきれていない笑い声が支配する、流石の指揮官も少しだけ困惑していた。
数分後、漸く落ち着いたVectorも着いてきて農場エリアへと歩を進める、ニワトリの飼育場所ならば此処が良いと通信で聞かれたP38の助言である、どうやらこの機に彼女はニワトリの飼育方法も会得するつもりらしく、声にはやる気が籠もりに籠もっていた。
「おぉ、これは中々いい農場じゃないか」
「お褒めに預かり光栄です!ようこそ、私はP38、この農場の責任者、ということになってますね」
P38の活発な自己紹介に続き、PP-90、HK45も自己紹介を終えて、彼女をとある場所へと案内する、そこは農場エリアからそんなに離れていない空き地、彼女達はここを養鶏場にするつもりらしい。
だがゲーガ-はそれよりもと、ニワトリの入ったケージ2つを丁寧に地面に置いてからカツカツと歩き、ダイナゲートを使って測定していた元上司である彼女に近づいて
「これくらいなら、増えたとしても十分なスペース取れるだろうし、うっしっし、そうすりゃあ卵のスイーツも料理も食べほうだーい!」
「お前にしては随分と真面目に働いているようだな、アーキテクト?」
「でしょでしょ、さっすがゲーちゃんは私のことを……え、ゲーちゃん?」
振り返ればとてもいい笑顔のゲーガ-の姿にアーキテクトは暫く固まり、それから飛び込んで抱きつこうとして
「ふんっ!」
「ふぎゃ!?ちょ、ここは感動の再会のあ、はい、ごめんなさい」
無常にも迎撃され地面に沈み、即座に顔を上げ抗議をしようとするがニッコリ笑顔の彼女に白旗を上げる、それを見ていたダイナゲートはこの短時間で起きた出来事を基地の他の個体に送信、ヒエラルキーの入れ替えが行われゲーガ-が上と設定される。
因みにアーキテクトは割と低い、一応ダイナゲートの創造主であるので上であることには上なのだが指揮官や副官よりは当然、下であり、何だったら他の戦術人形にも負けてたりするがまぁこれは余談だ。
その後はアーキテクトが養鶏場に必要だったりあったら便利なものを聞いたり、P38達が飼育の際の注意を聞いたり、副官がゲーガ-の部屋のことを話したりしている最中、指揮官は2羽のニワトリを前にしゃがみ込んでうーんと唸っていた。
「先程から唸っているがどうした?」
「ねぇ、ゲーガ-さん。この2羽って夫婦?」
「ああ、向こうでも繁殖するようにと牧場のおやっさんからな」
そうなんだと呟いてから、再度うーんと唸り、数十秒ほど何かを悩んでから瞑っていた目を見開いてニワトリに指を指しながら彼女は高らかに
「右の子は『カスタードプリン』!左の子は『エッグタルト』だ!!」
えぇ……とHK45のまだ染まりきってないからこそ出る困惑の声、しかしそれは残念ながらあまりに遠慮気味だったがために彼女の耳に届くことはなく、ニワトリ、もとい『カスタードプリン』のコッケッコー!!という鳴き声にかき消されてしまう。
「楽しげな基地だな、アーキテクト」
「でしょ?」
「『卵』推しの名前が『エッグ』いわね……ふふっ」
「今日はお主、嫌に調子が良いな」
ただ一つ言えばVectorのこの発言に慣れるのはまだまだ時間がかかるだろうなとゲーガ-は思ったとか。
後にこの空き地には立派な養鶏場が作られ世話係と卵の回収、更にはそれが有精卵かどうかの判別も行うプラウダ-『にわとりだいすきちゃん』も開発された。
基地に養鶏場じゃ出来ましたがシメはないです、卵だけもらいます。
アーキテクト製品紹介コーナー
『にわとりだいすきちゃん』
もはや名前にやる気が感じられないと思われそうだがアーキテクト的には分かりやすくしたからとのこと、全てを養鶏場の運営に注いだ性能なのでそれ以外は物凄くダメなやつ、カラーリングは白に赤という雄鶏スタイル、トサカもある。