それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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また誤飲して酔ってるよこの指揮官……


久方ぶりのBAR『スプリングフィールド』

人形人間問わず、長らく生活していれば失敗したと思う事案は多々存在する、誰しも完璧な存在というのは難しいのだから。

 

それはこの基地の面々も同じである、ついのこの間もアーキテクトが珍しく実験に失敗、どうやら掃除機を作ってたらしいのだが稼働テストの折に爆発四散、テスト場所に選んだ宿舎の共有スペースに細かな粒子となったゴミが飛散すると言う事件が起きている。どうやら超静音で吸引力は十分で落ちない性能で更に吸ったゴミを粒子に変換、これにより幾らでも吸える掃除機をと思ったのだが粒子変換の過程で火花が発生、そして粉塵爆発がゴミが集まる箇所で起きたというのが原因らしい。

 

「いやぁ、まさか変換の過程で火花が起きるとは思わんだ」

 

因みに飛散した粒子状のゴミはスイーパードッグと協力して処理した模様、今でもアーキテクトはその部分の調整を施しているらしく完成はまだ少しだけ掛かるようだ。

 

他にはPKも薬の調合の際に配分を間違えて危うく大惨事が引き起こりそうになったというのである、しかし彼女の場合は珍しく、というのは無く割としょっちゅう失敗している感じはある。彼女が言うのはこれは失敗ではなくオリジナルの薬品故にまだまだ改良の余地が残りに残っているものだから仕様とのことなのだが毎度、テスターにさせられる人形達には溜まったものではないと苦情が彼女にはよく向かう。

 

ともかく彼女達も失敗はするのだ、更に言えば人形でこうならば人間である指揮官、カリーナ、ヴァニラだって失敗などは良くしてしまう、そう今回のように

 

「……やっちゃった~」

 

「あ~、顔真っ赤ですね、何呑ましたんですか?」

 

「ほ、ホワイト・レディ」

 

うっわ、それ完璧に明日に響きますよとFMG-9がヴァニラに苦言を漏らせば正直済まないと思ってるわと反省する、その二人の視線の先には真っ赤な顔をしてデロンデロンにもう私酔ってますというのがありありと分かる少女、指揮官の姿。

 

ここは休暇前にも開かれるようになったスプリングフィールドのBAR、詰まる所、この指揮官はどうやらまたお酒を誤飲したようである。

 

「うっへっえへえへ」

 

「おい、これかなりヤバイ酔い方してねぇか?」

 

「M16もそう思う?誰かペーシャに連絡入れておいて、もしくは来てもらった方が早いかも?」

 

眼はトロンとさせ、呂律が回らないのかはまだ会話をしていないから分からないが奇妙な笑い方をし始める指揮官、お酒に弱いとは知っていたが事前情報よりも更に弱くなってないかとヴァニラが思うがそもそもにして彼女が此処まで酔ったという事案はこの基地の最初期の頃にスプリングフィールドが悪戯心で飲ませた『ブラッディマリー』が最初で最後なので正直宛にはならない。

 

しかも今回の『ホワイト・レディ』はそれよりも度数が高いので指揮官がこうなったのはその所為だろうというのが正直なところだ。

 

「ヴァにだ~さんが~よひん~」

 

「駄目みたいですねこれ、ボスー、私が分かりますー?」

 

「……がと~しょこだ~」

 

「猫耳だけで判断されましたねこれ」

 

そのやり取りを見たM16がテーブルを叩きながら大笑いをすれば酔っぱらい指揮官も釣られてまたあの奇妙な笑い方をし始める、どうやら楽しいとこの笑い方をするらしい。

 

マスターのスプリングフィールドもこの状態の指揮官は始めてなので大丈夫なのだろうかという顔をしながらお酒を用意する手は止めない、そんな空間のBARの扉が開かれれば、念の為に呼ばれたPPSh-41と保護者の副官、旦那のPPKが迎えに入ってきたのだがそんな状態の指揮官を見て

 

「これは、また随分と酷く酔ってますわね……」

 

「と言うより何をどうすればホワイト・レディを間違えて呑むのじゃ」

 

「ジュースと間違えた、でしょうかね。はい、指揮官一度私を見てくださいね~」

 

救いなのはこの状態でも聞き分けがとても良いという部分だろう、なのでPPSh-41の言葉にも素直に従い彼女の前に向かってからペタンと床に座り込む、聞き分けは良い、だがかなり単純な思考に切り替わっているらしいので彼女としてはPPSh-41に呼ばれたのだから何かお話があるんだと楽に聞ける体制をと座り込んだようだ。

 

「ユノ、せめて椅子に座って下さいませ、ほらこちらですわ」

 

「ああ!!ぴ~ぴ~け~!!!」

 

「ちょちょ!?うわっとと」

 

「えへっへへへ~、ぴ~ぴ~け~だ~」

 

元々が素直で甘えん坊である指揮官、普段は色々抑えているのだがそれがお酒の力によって全てが外れているらしい、なのでPPKを視認したと同時に彼女の中の優先順位が一瞬で書き換えられPPSh-41の指示からPPKに抱き着くに移行される。

 

座り込んだ体制から急に立ち上がり飛び込んでくるという鍛え始めたことによって可能になった行動にPPKは反応が遅れ、結果そのまま抱きつかれたたらを踏んでいるところに指揮官は頭をグリグリと押し付けながら酔いが回り緩かった顔を更に緩くさせ大好きな人の名前を唱えるように呟く。

 

「見せつけてくれるのう、マスター『コニャック』」

 

「え、迎えに来たのではないのですか副官?」

 

「PPKが居る時点でわしは呑みに来ただけじゃよ、PPSh-41、コヤツは平気なのか?」

 

「ん、まぁ大丈夫だと思いますよ、少し深く酔っているだけです、強いてあげるなら明日は二日酔いで辛くなるってだけですかね。あ、すみません私は『カサブランカ』をお願いします」

 

呼ばれてきてみればイチャつきを見せられた副官とPPSh-41はそれぞれ注文してから席に座り酔っぱらい指揮官とPPKのやり取りの傍観に回る。

 

「ゆ、ユノ、他の方も見てますし、あの、聞いてます?」

 

「ぴ~ぴ~け~!!!ぴ~ぴ~け~!!!いっしょ~、ずぅぅぅっと、いっしょ~」

 

「何でしょう、見てるととてもとても自分が惨めに思えてくるのですが」

 

「ペーシャ、そう言えば貴女院長に好意持ってたわね。ああ、だからカサブランカ」

 

旦那の言葉はどうやら泥酔に入った彼女には届かず、それはもう心底嬉しそうに顔を緩ませて、ただひたすらに大好きかずっと一緒か名前を唱え続ける。

 

そしてそれを見ていたPPSh-41が過去を思い出すように遠い目をし、SOCOMが慰めるように自身が注文した『ティフィン・タイガー』を呑み進めたり、M16は夫婦のいちゃつきを酒の肴にジャックダニエルを。

 

キャリコはそれすらも癒やしに変えながらコンテンダーと共にモスコーミュールを呑みながらRO635が遂に染まってしまったと嘆いたり、BARは今夜もカオスに賑わいを見せるのであった、最後に翌日なのだが

 

「……うぅ、ああ~」

 

指揮官は無事、二日酔いで半日を死んで過ごしていたらしい。




そういや最近BARを出してないなぁってことで

そろそろアーキテクトに物作らせて『みらくるふぁくとり~』すっかなぁ

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