それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
S09地区P基地に技術提供者として保護という破格な形で日々を過ごしているハイエンドモデル、アーキテクトはここ最近悩んでいた。
当初こそグリフィンに属する技術方面でのハイエンドモデルと言えば自分しか居らずだからこそ何ら危機感も覚えずにあれこれ好き勝手開発しては楽しみ、時に繋がりのある基地にも提供していた……そう、奴が保護されたと聞くまでは
「(……うぅむ、私のお株、ドリーマーに奪われてない?)う~~む」
D08地区にて鹵獲と言うべきか懐柔というべきか、ともかく奴が来てからというものの、どうにも負け越ししている気しかしないのだ、この間の開発品である【かせいふちゃん】も即座に向こうがドラグーンタイプのメイドを制作という形で向こうは向こうで答えを示してきた。
畑をオートメーション化したり、監視櫓や反重力ユニットで浮かぶ椅子などと言った成果報告に、彼女的には非常に悔しいが己にはない発想で様々な開発品を作っていたのだ。
それを考えると自分が解析してると思っている【フォースシールド】及びそれの発展形【フォースフィールド】の2つもドリーマーは既に握っていると考えるべきだろうと言う考えに至れば、また唸り椅子を回転させる。
(う~~~~~~む、何作っても結局はそれ以上のものを出される未来しか見えんぞ)
と彼女は悩んでいるがそもそも『みらくるふぁくとり~』をやってるのを考えれば量産が難しいものは彼女的には作りたくないのだ、あれはあれで割りと商売に使っているのでどうしても鉄血人形という手は使えず結局はロボの方に収めるのが限界なのだ。
詰まる所、微妙に土俵が違うというのが今回の話なのだがそこは負けず嫌いなアーキテクト、どうにかして驚かせないだろうかと考える、考えて
「や~めた、そんな事に頭回してもしゃーないし、ダイナゲート用の追加パックと追従型医療用スカウトでも作ろ」
確かに彼女は負けず嫌いだ、だがそれ以上に気分屋でありめんどくさがり屋でもある、要は張り合って面白くないもの作るくらいなら自分が面白いと思えるものを開発し、適当に自慢したいだけだという話、アーキテクトというハイエンドはそういう存在である。
結局、張り合うことを止めて開発を始めた数日後、何時ものスタジオにて
「「「3!2!1!ドッカーン!わ~い!」」」
「やぁやぁ、今日も元気におはこんばんちは!『みらくるふぁくとり~』が始まったよ~、みんな大好きマスコットの『アーちゃんうさぎ』と~」
「このうさぎの世話担当の『ゲーちゃんにわとり』だ」
「『ユノっちおねえさん』です!!……本当に太ったのかな、胸周りキツくなってる」
「おぉう、今度リサイズしておくよユノっちおねえさん、さてじゃあ早速今回の発明品を紹介だ!」
もはや慣れたやり取りを行ってからのユノっちおねえさんがそんな事を呟けば、ゲーちゃんにわとりは驚いた顔をし、アーちゃんうさぎは微妙な表情を晒しながら気を取り直して、パチンと着ぐるみ姿だと言うのに器用に指を鳴らせばフワフワとそれなりの速度で現れたのは一機のスカウト、なのだがよく見れば細部が違う。
ボディから生えていた脚のような部分には何かとドッキングできそうなパーツが、そして側面にはアタッチメントが装着可能なパーツが、そして背面には何故か小さめな翼が、これだけでは何なのか分からないとユノっちおねえさんが首をかしげる。
「さぁ本日紹介するのは【そらとびちゃん】!これはダイナゲートの追加パーツとして開発した物なんだ。実際に合体させる前に軽く説明しよう」
これは普段は地上しか活動できないダイナゲートに空中でも活動できるようにと開発された支援ユニット、アタッチメント部分にはそのダイナゲートの役割ごとの装備を取り付けられ、スイーパードッグならば例の掃除機を小型化した【みにまむがねーしゃちゃん】を、警備用には超強力トリモチ砲【ねばーるちゃん】を、と言った感じらしい、残念ながらアグリカルチャーにはこれは適用されなかった模様、奴ら飛んでも意味ないのではというのがアーちゃんうさぎの本音。
装着の方法は至って簡単であり、ダイナゲートのAIが必要であると判断した場合、もしくは誰かがそらとびちゃんに指示を出せば後は自動でドッキングしてくれるらしい。という事で一体の警備用ダイナゲート【見回りちゃん】をステージに出して、そらとびちゃんに指示を出してみる。
指示を受けたそらとびちゃんは見回りちゃんに一直線に飛んでいき背中部分まで行ってから位置を微調整しつつドッキングパーツを見回りちゃんの胴体に括り付け、最後にベルトが固定される際に『ビップガン!!』と態とらしい効果音が鳴ればドッキング完了、どことなく見回りちゃんも誇らしげである。
「お~、カッコいいね!」
「カッコ、いい?い、いや、そうか……これが今の人間の感性なのか」
「ふっふっふ、ニワトリにはまだ早かったいったい!?だから本気で打つのは止めてよ!?」
相変わらずなコントを見せてからユノっちおねえさんが見回りちゃんに飛んでみてと指示を出してみれば、了解とばかりにカメラアイを光らせればそらとびちゃんが作動、フワッと反重力ユニットで浮き上がるのだが……
見回りちゃんはその自慢の四本の脚で犬かきをしていた、それはもう一生懸命にバタバタと、そして休むとジワリジワリと高度が下がっていき、またバタバタと動かせば上がる、それを繰り返しながらフワフワとそれなりの速度で移動を始める、無論、犬かきで
「なんか、和むな」
「あっれ、ちゃんと飛ぶように設定したはずなのにな~、こうシュバって!」
「でもこの方が可愛くていいと思うよアーちゃんうさぎ?」
こんな一見頼りなさそうな姿だが砲の命中率は非常に高く、信頼性は高い、因みにそらとびちゃん単独でも行動は可能である、がダイナゲートからのAIが無ければ装備を使用することができないので微妙とのこと。
みにまむがねーしゃちゃんもスイーパードッグとのドッキング状態だと自身でホースを伸ばし認識したゴミを吸い込んでいく、飛べるようになったので高い場所の掃除もお手の物とのこと。
「だが、なんでダイナゲートに飛行ユニットを着けようと思ったんだ?」
「ちょっと、質問の意味が分からない……着けちゃ駄目なのかなぁ?」
「お前が特に深い考えもなしにコレを開発したことは今よく理解できた、後で覚えておけ」
「まぁまぁ、アーちゃんうさぎの開発品は何時も役立ってくれてるからさ、怒らないであげてよゲーちゃんにわとり」
にわとりを煽るうさぎと、それを宥めるユノっちおねえさん、今回のみらくるふぁくとり~も撮れ高だらけだなぁと一人カメラを回すFMG-9は微笑んでいた。
アーキテクトだって偶にはそんな事で悩むけど結局はどうでも良くなる感じがする。
ていうか300話なのに主役がアーキテクトとかウッソだろお前wwwですが此処まで来たならあと65話、駆け抜けますよ!!
アーキテクト製品紹介コーナー
【そらとびちゃん】
スカウトをダイナゲートにドッキング出来るように改造した支援ユニット。詳細は本編通り、因みに武器の類もアタッチメントに装着できるのでやろうと思えば戦場を浮遊するダイナゲートも出来る、意味は決してないが。