それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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指揮官と言うより副官に懐いた珍しいタイプ


シュタイナーさんは褒められたい

帰っていく一台のコメットをスコープ越しに追う、あれにはハイエンドモデルの二人が乗っているのだが彼女等は指揮官の命の恩人であるがため手出しは無用と言われてはいるが配属され日数が少ない彼女にはとことん違和感しか無い指示である。

 

少女、【IWS2000】はつい最近、しかも割とバタバタしてる時期に配属となった戦術人形である、本部からはこの基地の防衛戦力、と言う事らしい。が来てみれば特にこの基地に襲撃してくる存在も今の所確認されず、更には基地内にハイエンドモデルが存在、しかも好き勝手に過ごさせてると聞けば大丈夫なのかこの基地となる、一応は納得してはいるのだがやはり

 

(……本当に宜しいのでしょうか、いえ、指揮官たちを信頼していないという訳ではないのですが)

 

「何処か納得できない、と言う顔じゃな?」

 

突如、声を掛けられスコープから目を話して振り向けばそこに居たのはこの基地の副官であるナガンM1895、幾ら眼の前に集中していたとは言え副官が来ていたことに気付かないなんてと慌てて立ち上がり敬礼を取る。

 

因みに此処はアーキテクトが向こうのドリーマーに触発され製造した特殊監視塔、元から存在した監視塔の一つを改修しただけなのだがあのハイエンドモデル、今度は反重力ユニットの可能性を広げたいのかはたまた思い付いたからなのか、監視塔が損壊が発生しそうな攻撃が来た際には反重力ユニットを利用した特殊な磁場が発生、攻撃そのものを重力で止めてしまおうというまたこいつ訳が分からない事してんなと言う技術が使われている塔になっている。

 

「よい、楽にするのじゃ……して、やはりハイエンドモデルと共存しとるというのはお主にはまだ慣れぬことか?」

 

「……はい、彼女達は暴走し人類を抹殺せんと攻撃を仕掛けていた存在です。それがアーキテクトは指揮官の母親との約束、向こうは人類の食事という文化、それだけでこちら側に本当に付くのでしょうか?」

 

「ふむ、そうじゃな。これはあくまでわし個人の推測なのじゃが、何もあやつらは『人 類(こちら)側に完全に立っているというわけでは無いと思うのじゃ」

 

「え、そ、それって余計危険では?!」

 

あまりに予想通りな彼女の反応に副官は呵々と一つ笑ってから、監視塔の窓からコメットが去っていった方角を見つめて、それから偶々視界に入った今日ものんびり【ごりあてさん】の操作練習をしているアーキテクトとそれを呆れ顔でニワトリの散歩のついでに付き合っている牛飼い姿のゲーガ-を一つ見てから

 

「あやつらはな、個人に協力している、そんな感じなのじゃろうて、それが結果人類に立っているという形になっているという話じゃ……覚えておけシュタイナー、少なくともこの基地のわしはな、何も人類のためだとかでは戦っては居らぬ、全てはあのゆっるい指揮官の為じゃよ」

 

「指揮官の為に……」

 

「だがまぁ、戦う理由、協力する理由、そんなの個人個人の自由じゃよ。故にお主には、と言うより他の者にもだがこの考えを強要はせぬよ」

 

それだけを告げて副官は監視塔から出ていく、それをIWS2000は見送ってから、先程までの副官との会話を電脳内で整理する。彼女は自分に何を伝えたかったのか、戦う理由を態々出してきた意味は?もしかして

 

「私は、私の理由を見つけておけ、ということでしょうか?」

 

生真面目な彼女、今戦う理由は本部からのそうであれという理由だけ、だけどもしなにかがあってそれが無かったことにされたら?普通ならばそんな事はと言えるかもしれないが彼女は此処に来る前にこの基地であったことを調べている身としてはその万が一が起きる可能性が普通に眠っていることを知っている。

 

(私が、戦う理由。銃を手に取る理由、役に立ちたい、力になりたい……誰に?)

 

それは勿論指揮官だろう、だけどそれだけじゃ無い気がした。思い出すのはここに来て、最初の任務は新たに設営された対装甲RF部隊の一人としての活動、マンティコアが現れたという地点での戦闘で彼女は過去に未完として凍結されたこの銃を用いて作戦の成功に貢献し帰還、その時は勿論だが指揮官に称賛され

 

『うむ、ご苦労であった。それとシュタイナー、良い働きだったと聞いておる、何か褒美を考えておくのじゃ』

 

『え、い、いえ、自分ができることをしただけです!』

 

『故にじゃよ、自分ができることをする、それだけでも立派なことじゃよ』

 

そして、褒美としてカフェでのデラックスパフェが副官の奢りとして彼女に出された、製造されずっと本社で形だけの警備の仕事をしていただけの彼女にとってその日は特別だった、初めて戦った、初めて褒められた、初めてこんな風に褒美を貰った。

 

指揮官に称賛された時も嬉しかった、やっと自分の力が役に立てたんだと、だがそれ以上に副官に褒められた時、何というか指揮官のとは違う嬉しいという感情が生まれた、初めて会ったはずなのに何処か安心する雰囲気の彼女の言葉を聞いて、そう言うなれば祖母という存在に褒められた、そんな感じだと思い付いてから

 

(いや、人形の私に祖母というのもおかしな話ですけど、だけどそれが一番しっくり来るんですよね)

 

ガチャリと愛銃を側に立て掛けて一息、もしこれが本当の気持だとすれば、これが自分の戦う理由、もっと言えばこの基地で働く理由になるかもしれない。

 

そう考えれば何というか変な欲求が生まれる、もっと副官から褒められてみたいという欲求が

 

「……頑張ります!」

 

そんな彼女なりの覚悟から数日、ある日の基地。IWS2000が所属している第七部隊が今日も出撃、そこで部隊長のダネル曰くかなりの張り切り具合で敵を殲滅していったと言うほどに活躍、そうして帰還してから出迎えに来ていた副官と指揮官を見て駆け寄り

 

「お二人とも、今回の成果は如何だったでしょうか!?」

 

「凄かったよ、ダネルがあそこまで褒めるなんて珍しいくらいだもん」

 

「うむ、M99が嫉妬しておったぞ?だがよくやったシュタイナー、今後も頼めむぞ」

 

「はい、この力、もっと活かしていきます!!」

 

この一連の流れを見ていた部隊長のダネルは、もし彼女にステアーみたいな尻尾と耳があったらそれはもうブンブン千切れん勢いで振ってたんだろうなぁと思うほどに褒められた彼女は嬉しそうな輝かしい笑顔をしていたらしい。

 

因みに、同じく褒められるの大好きのG41曰く尻尾の振っている勢いは指揮官からの称賛を100とすれば副官からのお褒めの言葉では150位にはなってるらしい




IWS2000ってなんかこう、褒められたい大型犬みたいな空気を感じ取ったんですよねというお話。

一応紹介
第七対装甲部隊
部隊長『NTW-20』
IWS2000
M99
ゲパードM1
キャリコ

編成を見た通り、この部隊一つで運用されることはほぼ無い。と言うより今回のように出撃するのは珍しく基本的に基地の防衛がお仕事な部隊、キャリコはもしもの時の護衛のようなもの

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