それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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皆が皆、好きに過ごしてる


ヤークトフントの日常

一人の戦術人形がしゃがみ込み蟻の行列を眺めている、片目が隠れるほどの前髪と2つのおさげ、縫われたような傷跡が特徴といえば特徴の【イングラム】だ

 

戦闘時の彼女は知っての通り、まさに狂犬であり、許可さえ降りればカニバリズムも辞さないと言うメンタルモデルに異常をきたしているのではと疑われる彼女だが、日常ではそんな素振りは一切見せない。寧ろ小動物や仲間、この様に小さな虫にすら何かと気にかけるような優しい?少女である。

 

「……」

 

「なぁに見てるのイングラム~って蟻?」

 

「蟻、今日も行列作って何かを運んでるわね……」

 

そんな彼女に声を掛けたのはM21、同じくヤークトフントの仲間であり下手したらイングラムよりも狂ってるのではという嗜好の持ち主である彼女も日常ではそんな事無い、因みに何時だったかハンディカメラで取った映像は無事、FMG-9の検問により全削除を喰らい今後録画をするなと副官から直々に禁止令が出たのでもうやらない模様、と言うよりあの時はノリノリだったが急に冷めたと本人は言っている。

 

同じチームだからか、この二人は一緒にいる時間が多かったりする、主にイングラムがこうやって何かを眺めているのをM21が声を掛けるという流れが大体だが。

 

「面白い?」

 

「退屈はしないわよ……私はね」

 

「それ私には面白くないってこと?まぁ、盛り上がりがないことは面白くないけどさ……巣に水攻めとかh」

 

「駄目、この子らは真っ当に生きてるからね……そういう事をするのは悪役相手よ」

 

真面目な声で促されればM21も肩を竦めながら肯定の返事を返す、戦闘時に狂ってるような彼女だが日常じゃこんな風に真面目、と言うよりもイングラムは何も戦場であれば無差別に殺戮を繰り返すような存在ではない。

 

ある時のヤークトフントとしての戦闘時では思いっ切り罠だと分かる位置に取り残されていた『善良な』市民や子供のために圧倒的数の敵集団にダミーごと躍り出て救出に貢献したりしている。この様にこちらに危害を加えない存在には比較的優しい。

 

「よく分かんないなぁ……まぁ無関係な人を巻き込むな~ってのは理解できるけど」

 

「それでいいのよ、そう、無関係な奴を巻き込んで……死なせるのは、辛いから」

 

「……ヤークトフントのルールだから深くは聞かないし、調べないけど。イングラムって相当難しい人生歩んでるんだね~」

 

「人のこと言えないでしょうに」

 

何のことやらとすっとぼけるM21、この世界何も抱えずに居る存在なんて、人も人形も早々居ない、だからこそヤークトフントと言う脛に傷を持つ者たちが集まったこの部隊では特にルールとして組み込むほどに過去を聞こうとはしない。

 

知った所でどうしようもないというのもあれば、今更このメンタルモデルが治るというわけでもない、もしもそれが行き過ぎて暴走をし始めたというのならばその時はヤークトフント内でケリをつける、それが彼女達の部隊の掟

 

「そう言えば、MG4は?」

 

「ネゲブとシャフトちゃんと一緒に掃除しての見たけど、それ以降は知らない」

 

丁度、二人が彼女のことを話題にした頃、件の彼女はと言うとその時もネゲブ達と共に基地の掃除などを手伝っていた、スイーパードッグ達とも協力しながら行っているのだが

 

「……(黙々と床を磨く)」

 

「……(黙々と窓を拭く)」

 

シャフトとMG4、どうにも変な方向で波長が合うのか、それともただ単に両方共コミュニケーションと言うのが未だ苦手なのか、協力して掃除を始めてから二人共殆んど言葉を発していない、それほど集中していると考えれば納得できたかもしれないが時より二人して何か話しかけようと言葉を選ぶ素振りをしてから、結局糸口が見つからずまた掃除に戻るというのを繰り返しているので多分、会話はしたいものだと思われる、そうネゲブは冷静に判断していた。

 

(不器用ねぇ)

 

二人を微笑ましく見ている彼女的にはどうにか会話のキッカケを作ってあげたいというくらいには気を利かせてみようとしてみるが、忘れてはいけない、彼女も割りと不器用だということを、この場合だとどんな感じで話題を出せば二人も会話できるかと考え、出した結論が

 

「今日も良い天気ね」

 

「え、あ、そう、ですね」

 

「ええ、そうね」

 

途切れる会話、流れる沈黙、その場に響くのはスイーパードッグ達の稼働音だけ、もう一度言おう、ネゲブもそんなにコミュニケーションが得意な人形ではないし、どっちかと言えば不器用な分類にはいる存在である、何をどう思って自信を持っていたのかはわからない。

 

結局、その後も簡単な会話だけで三人は基地を巡り掃除などを終わらせた同時刻、ヤークトフントの切り込み隊長、もしくは鉄砲玉とも言われているKS-23はと言えばその手に猫じゃらしを持ち

 

「ほれっ」

 

「にゃっ!!」

 

「ハッハッハ、良いジャンプだ、ほら!」

 

「にゃああ!!」

 

「はい残念、クックック、可愛いなぁお前らは」

 

WA2000に続き、動物の魔力に囚われていた。この時の彼女の顔は戦闘時にそれではなく緩みに緩んだ笑顔、彼女は動物も子供も好きなのだ、だが子供だとどうにも怖がられるのでと動物に逃げることが多い、ついこの間も泣かれて物凄く凹んでいる彼女が居た。

 

こんな風にヤークトフントと言えど、日常となれば至って普通に過ごしている……だがリーダーたるUSPコンパクトだけは違った、彼女はこの時、基地に居らず

 

「……ターゲットダウン、ヤークトリーダーからアリババへ、対象の始末を完了、カメラから確認できますか」

 

《確認、あ~、ヤークトリーダー、今日は休日だからゆっくりしてれば良いんじゃないかなぁって》

 

「……することないんですよ、それに基地の中じゃ、ンッ」

 

プシュ、と何かを刺し注入する音が部屋に響く、それが空になれば足元に捨て踏み割る。

 

彼女が今打ったのは人形用に製造された『精神安定剤』彼女はとある事情からこれが欠かせないメンタルモデルとなっている、本来であれば修復、出来なければ初期化が行われるはずなのだがこの状態での運用と精神安定剤のテスターが欲しかったIOPが彼女の基地へと配備させ今もこうして過ごしている。

 

だがUSPコンパクトはこれを指揮官には、もっと言えば基地の誰にも知られたくない、だからこれを打つ時は細心の注意を払って基地の影で、もしくは今回のように簡単な暗殺任務の時についでに打つようにしているのだ。

 

「帰ります、車ですか、ヘリですか」

 

《今車で向かってます、端末に合流地点を送ったので時間までによろしくお願いしますね、アリババ、アウト》

 

「少し、遠いですね。ふぅ、駄目ですよ、幸せな基地にちょっかい出そうとするなんて……」

 

それだけを呟いて彼女は闇に消え合流地点へと向かう、翌日、元IOPの違法科学者が死体となって発見されたとニュースが流れた




ヤークトフントは揃いに揃って皆、脛に傷を持ちである。まぁKS-23とかMG4はそこまでじゃないかも、と言うより傷無いかもなこの二人は(未定)

USPコンパクトちゃん?まぁ、ほら、医務長は知ってるからへーきへーき

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