それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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話してもらいますよ


名も無き科学者のよくある狂気 Session2

目の前の女性が見知ったどころではない顔をしていた時、しかも立場を考えれば母親、夢というのは自分の願望が云々とか聞いたことあるような内容なと冗談を口にしてみようとするがこれが追体験だと推測されている今、その冗談も言えず、はっきりと言えば

 

(間違いない、この夢はこの少女の記憶を追体験している)

 

でも何故、何の接点もないはずの自分がこの少女の記憶を?新たに湧き出た疑問に答えるものはおらず、夢は静かに進んでいく、ここはどうやら推定【ヴァニラ】のラボなのか白衣姿の彼女があれこれ作業をしつつ書類を纏めたりと業務をこなしている後ろ姿が見れる。

 

とすればこの少女は彼女の職場に着いてきているらしい、前回の夢で父親の姿は見れなかったが今回のコレで居ないのかもしれないという推測が生まれた、もしくは家に滅多に帰ってこない仕事か。ともかく誰かに預けたり家に留守番をさせたりとかはさせていないらしい。

 

(相も変わらず音は駄目……てかアイツ、昔は科学者だったのか、思えば必要なかったとは言え過去を全く知らないですね私)

 

二度目となれば流石に慣れるものでFMG-9は見える範囲で分かることを冷静に一つ一つの情報を整理していく、先程も言ったようにここはラボ、最初はIOPかもとも思ったが彼女が取り落とした書類で一瞬だけだが読み取れた文にはハイエンドモデルについてのタイトルが書かれていたのを確認。

 

どうやらここは鉄血のラボらしい、つまり推定【ヴァニラ】は昔は鉄血で科学者として働いていたと言うことになる、がここでFMG-9はふと疑問に思う、それにしてはIOP側の人形も詳しすぎると、その御蔭でイントゥルーダーと副官が初めて接敵したあの日に助かったのだが鉄血所属だとすれば少々話が変わってしまう。

 

鉄血の人形とIOPの人形は違う、似てる部分は確かにあるだろうがだとしてもあそこまで深い所となれば専門でもなければ弄ることは出来ない筈の部分を彼女は難なく修復、しかもその後基地の人形のプロテクトと副官には更に強化したのを施していたので知識はかなりのものだと分かっている。

 

(せめて、もう少し彼女が行っている作業の内容が見れれば何か分かるかもしれないんですが、動かないんですよねこの少女)

 

多分、大人しくしていてと言いつけをキチンと守っているのだろう、絵本を読んだりぬいぐるみで遊んだりとばかりで推定【ヴァニラ】の所へは邪魔にならないようになのか、決して向かわない。

 

いい子なのは非常に良いのだが少し位わがままとか言いそうな年齢だと思わ得れる少女だがそれがないところを見ると相当良い子らしいとFMG-9が呆れつつ感心していると急に視界が真っ暗になる、どうやら場面が変わるらしいと今度は何が出てくるか待ち、暗転が晴れた瞬間

 

(ッ!?い、いや、夢なので痛覚はないですが……これは)

 

状況を単刀直入に言えば視界の主の少女は暴行を受けている、霞み出す視界の先には知らない女性と手下と思われる男性二人に取り押さえられているヴァニラの姿、こちらに来ようとするが男二人に力で勝てるわけもなく、少女はそんな彼女に細い腕を伸ばす……が最後にヴァニラの悲痛な表情を最後に視界が途切れる

 

(……死亡したと考えるべきでしょうねコレ)

 

後味の悪すぎる夢だったと起きていれば苦虫を噛み潰し多様な表情をしていただろうなと思って、待てよとなる、終わったのなら何故目が覚めないと、その疑問はすぐに解けた。

 

視界が明けたのだ、馬鹿なとなるFMG-9、あの少女が死んだのならば追体験はコレ以上無いはずだと開けた視界に意識を見ければ驚愕することになる。

 

(この風景、待て、待て待て待て待て!?ここは、この場所は!)

 

今までは全く覚えのない光景だった、だが今見えている風景は違う、だってここはFMG-9とヴァニラが初めてであった場所だからだ、ここで機能がダウンしていた自分を見つけ再起動させたのがヴァニラ、そして今見ている夢もあの日と同じ様に進行されていく。

 

なんで、どうしてこの光景が夢でと驚愕を隠さずに居ると視界にノイズが走り文字が浮かび上がる、そこに書かれていたのは

 

【ユ ル シ テ ア ゲ テ】

 

(何をですか、いや、貴方は誰なんですか!!)

 

【ワ タ シ ハ ア ナ タ】

 

彼女の質問にそう書かれ、前回と同じ様に弾かれるように目が覚める。今度は息が上がっているとかは無く、寧ろ異常なまでに冷静な頭でFMG-9は先程までの夢と最後の推定【ヴァニラの娘】との短いやり取りを元に推測を立てていく。

 

(私は貴方……?まさか、いや、だとしたら夢を見れた理由も、この追体験も納得できます、許してあげてと言うのもそういう事かもしれませんがコレばかりは情報が足りなさ過ぎますね)

 

冷静に考えているが同時に困惑もしているし動揺もしている、何せコレが正しければ自分という存在をヴァニラが作ったということになるからだ、しかもこの技術は、あのイントゥルーダーとも間接的に関与していると考えれば、事が思ったよりも厄介な展開になっていることを自覚して

 

「はぁ、参ったなこりゃ」

 

相棒が抱えている闇が思ったより深すぎた、指揮官も副官も一部人形も大概だったがコイツも例外なくそうだったらしいと疲れたため息を吐いてから、ですがだからと言って此処で止まる訳にはいかない

 

(時間が飛びすぎて分からない部分が多い、ですが分かるのはあの阿呆はコレを理由にマスターの好意を拒否しているとすれば、本当に馬鹿ですよ貴女は)

 

鋭い目をしたままFMG-9はヴァニラの過去についての情報を集め始める、少々情報が古いこともあって収集には苦戦を強いられるも、鉄血のハイエンドモデルであるアーキテクトまで使って蝶事件寸前までの人員名簿まで出してもらって探ればそれなりに集まり始め、それを纏め上げて

 

「何よアリババ、私に真面目な話って」

 

「そうですね~、そろそろ相棒として貴女の過去をキチンと知ろうかと」

 

「私の?面白くないし必要ないでしょ?」

 

「所がそうでもないんですよねコレが、私見ちゃったんですし?」

 

向こうが何をと聞いてくる前にFMG-9は昨日見た夢という形の追体験の光景を、それを聞いたヴァニラは目を見開き、しかし少ししてから諦めたように、観念した感じの表情で椅子に座り

 

「……ネクロノミコンに繋げすぎて封が開いた、か。いいわ、どうせ指揮官達も聞いてるんでしょ?話してあげるよ」

 

「バレてましたか、まぁ音声だけですけどね、必要なら呼びますが?」

 

「必要ないわ、そうね、じゃあ先ずは娘についてから話してあげる、疑問に思うでしょ、私は男性と付き合ったことないとか言ってたのにどうして子供がってね?」

 

そう、ヴァニラは男性嫌いであり、年齢=彼氏居ないと公言していた。まさか昔は違ったのかともFMG-9は思っていたのだがどうやらそうでもないらしいと続きを促してみれば、彼女は静かに目の前の相棒にすら話したことなかった自身の過去を

 

「私の唯一の娘【ミーシャ】はね、私が無理やり犯されて生まれた娘なのよ」

 

重すぎる切り出し方で語り出すのであった。




語り出すとか言ってるけどそんなに長くならんぞコレ……

一応、FMG-9が見てた夢の視点はヴァニラの娘視点です。

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