それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
視聴覚室、と名ばかりのアニメ鑑賞室、そこでは今日も休日なのを良いことにRFBがDVDを持ち込んで観賞会と洒落込もうとしていた。しかも用意が良いことにジュースとお菓子もある、完全に全話見る体制だというのは誰が見てもすぐに理解できる光景だ。
とはいっても彼女は平日の業務はしっかりこなしているのでこの行動に特に注意がされるということはない、寧ろ正当な対価であるのでどうぞご自由にと言う感じである。
「今日も一週間お疲れ私!さぁ、のんびりアニメを見ようじゃないか~」
「アニメ、とは何ですかRFB」
「ひょっ!?あ、何だよ79式か、驚かさないでよ~」
突如声を掛けられたことに驚き肩を跳ねてから、RFBは何時からそこに居たかは知らないが【79式】に文句を言えば向こうも申し訳ないと言った感じに頭を下げる。
どうやら悪意があって驚かしたわけではない感じなのでとりあえず許してから、彼女の質問に答える、いや、答えるというよりは
「まぁ、あれこれ説明するよりも見てもらったほうが早いね、という訳でさぁ座った座った」
「そう、言うのでしたら……」
彼女が座ったのを確認してからリモコンを操作して再生を始める。内容はロボ物、中身は割愛するが中々に見応えがあるものであり、最初こそなんでしょうかコレと言った感じだった真面目キャラ79式も気付けば展開に飲まれ、真剣な眼差しで映像を見つめる。
中でも戦闘シーンでは更に食い入りるように見入り、特に登場するロボの一機には目を若干輝かせるほどだった。
「(めっちゃ食い付きいいんですけど)どうかな?」
「正直、甘く見ていました……まさかこんなにも面白いものがあったとは、おぉ!」
(よっしゃ、また一人引き込んだ、次からは女子力を気にしている彼女が更に気にいるアニメ見せよ。それにしても79式、そんなにあの機体が気に入ってるんだなコレ)
彼女が目を若干輝かせるほどのアニメに登場する機体、それは主人公側の中でもエースが乗る赤い機体、特徴的なのは右腕のギミックだろう、輻射波動機構と呼ばれる高周波を短いサイクルで対象に直接照射して破壊するという必殺の武器、それに彼女は惚れた、なんだったら偶に自身の右腕を見つめたりしているので、RFBは何かを察した顔になり、同時に悪い顔を晒した……そんな事が起きている視聴覚室から場面を映してアーキテクトのラボ、ここでは最近助手として配属されていた【59式】と共に彼女達は休日だということで趣味の発明を考えていた。
「うーん、だめかな~」
「駄目だと思うな~」
モニターに映されている設計図、それは基地防衛を目的としたジュピターなのだが、無論ただのジュピターではない、監視塔にも採用した防御用反重力ユニット、あれの応用したのを中に組み込み、実弾でも光学兵器でもなく【重力波】を射出、敵及び敵集団にぶつけるという代物、先ず第一に1基あたりのコストがヤバイ、一応いつぞや設計図に起こした小型ジュピター【ドッカノンちゃん】をベースにしていたとしても無視できないコストになってしまっている、次に明らかにコレ防衛目的とは言え過剰なのだ、ついでにPMCが持つにはやはりいろいろ波紋が呼んでしまうというものもある。
「……駄目かぁ」
「防衛はいいけど、こう、もう少し大人しいのはない?」
「うーん……輻射波動砲弾とか?」
「どうかな、重力波よりはまだ行けそうな気がするけど……結局怒られそうじゃない?」
うーん、そんな声が響くラボ、二人共キチンと基地のことを思っての開発なので巫山戯ているのではないのだがどちらのしろ過剰防衛と言われる代物を作ろうとしているという自覚が若干薄い、数時間、進展してるのかしてないのかわからない計画会議をしているとラボの呼び鈴が鳴り、応えれば入ってきたのはRFBとアニメを見ていた79式
「どったん?と言うか珍しいね~、ナナちゃんが来るなんて」
「そうだね~、と言うか初めてじゃない?」
「ナナちゃん?それよりもですアーキテクト、貴女に相談があるのです!」
お、何だ真面目な顔でと彼女の相談を聞いたアーキテクトは次の瞬間、コレ以上にないほどに口元が弧を描き、それから声を抑えながら笑いつつキーボードのEnterを叩けばモニターに映ったのは義手、その性能を見て79式はアーキテクトを見つめる、その顔はアニメを見ていた時以上に輝かせ、まるで欲しい玩具が目の前にあったという顔だった、それを見ていた59式が貴女そんなキャラだったっけ?となるほどと言えば余程だというのが分かるだろう。
「一度言ってみたかったんだ、こんな事もあろうかと!!ってね、お望み品はこちらかな?」
「そうです、これ、コレです!」
「あ~、でも一度は副官達に報告するよ?じゃないと後怖いし、そもそも許可降りるのコレ?」
結果だけ言うと降りた、79式がこの腕にする意味を全力プレゼンし、実戦前に試験運用をし安全及び確実性が認められた場合は今後の運用を許可するという内容ではあるが許可の判を押させたのだ。
ノリに乗ったアーキテクトの指示の下、その義手の完成が急がれ数日後、彼女達は基地に作られた実験場に来ていた。
《ナナちゃん聞こえる?》
「こちら79式、感度良好、問題ありません」
《それは良かった、腕の調子はどうかな?》
そう聞かれ、自身の新たな右腕を見る、色合いなどは今までとは変わらない、が多少重量が上がってしまったそれを見てフフッと笑い、それから握ったり開いたり、肩を回したり、何度かパンチを打ったりし調子を確認してから
「義手も異常見られません、何時でもいけます」
《よっし、じゃあ今回の試験の内容を説明するよ、と言っても簡単なもの、出てくるターゲットを義手の機能を使って破壊する、それだけ、3つ破壊したら試験は終了だ、但し注意点として破壊の際は『直射』と『拡散』を一度ずつしてね~》
「了解」
短い返事を聞いてスイッチが入ったなと確認してからアーキテクトが端末を操作、実験場からカウントダウンの放送が入り、そして
【3、2、1、0】
(目の前、対象1、ならまずは!!)
床が開き、迫り上がってきたのは鉄血人形の装甲兵、SMGであれば碌にダメージを与えることが出来ない敵であるが79式は恐れず突撃、一応訓練でもあるので向こうは反撃のために武器を構えるがその前に彼女が閃光手榴弾を投げ炸裂、装甲兵はメインカメラを潰され、それでもと銃弾を乱射するが盲撃ちに当たるわけもなく79式は接敵、そのまま義手で装甲兵の顔面を掴み
「弾けろぉぉぉぉ!!!!」
叫びとともに右掌の中央が開いたと思えばそこから短いサイクルの高周波が装甲兵にぶつけられ、次第に赤みを帯び始め膨れ上がり、それを確認してから79式が飛び引けば装甲兵はボンッ!と爆発を起こして破壊される。
内心ではあのアニメと同じ様に出来たことが嬉しいのだがそれを顔に出すことはせずに冷静に義手の腕の部分に備え付けられたポンプを引いてカートリッジを排出、次のターゲットを目視、今度は装甲兵ではなくスカウトの集団、ならばとその場で腕を構え
「行けっ!」
今度は右手全体が変形し広がり、輻射波動を広域照射、赤い波動が右手から撃ち出されスカウトの集団を飲み込めば火花を散らしながら機能を止め落ちていく、その結果に満足気に頷いてから先ほどと同じ様にポンプアクションをしカートリッジを排出。
「行ける、これなら更に活躍できる!」
最後のターゲットも一度目と同じ様に破壊した所で試験は終了、誤作動も不発もなし、それはコレまでの実験でも確認されてたので当然といえば当然なのだがそれでも本番でもキチンと動いてくれるのは嬉しいものだとアーキテクトもふぅと息を吐く。
「どう、凄いっしょ?」
「全く、本当にお主はトンデモナイやつじゃよ……79式、副官じゃ、その義手の運用は認める、だが出来る限り公にはするな。いろいろ面倒なのに絡まれるからな」
《はい、指揮官さまに迷惑になるようなことは慎みます、それに3発しか使えないので本当に切り札ですよコレ》
こうして、79式の右義手はトンデモ兵器になった。しかし使われるのは部隊が余程の危機、もしくは想定外の強敵が出てきた際に限られた、因みに最後に余談だが
「あ、ドリーマーに自慢してやろ」
アーキテクトのお蔭で輻射波動機構の義手は他の基地に漏れた、当たり前だが後に副官にめちゃくちゃ怒られた。
キャリコ「話が、違うじゃない……79式は常識人だって……!」
コンテンダーさん「しっかりするんだ、キャリコ!?」
79式さん、義手と言うのもいろいろツッコまれそうだけど、まぁこの基地じゃあ義手ってことでお願いします。
アーキテクト製品紹介コーナー
輻射波動機構搭載義手
元ネタはコードなギアスの紅蓮のあれ。但し一任務で3発のみ、ガードも出来ない、直射か広域照射のみ、しかも広域照射に関してはスカウトは落とせるが装甲兵とかにはダメージは入るが一撃じゃない。
でも直射はハイエンドモデルだろうが落とす、接近できれば相当強い