それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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情報は漏れるもの


監視者の人形

委員会、その名が出た時、副官の眉がピクッと跳ねた。時間を少々遡り執務室、業務をこなしている最中ヘリアントスからの通信が入ったとカリーナから報告が上がり繋がてみれば内容は人形を一体新たにそちらに配備するという内容。

 

それ事態は何ら不思議ではない、寧ろいつものことなのでそうかと言う流れで終わらそうとしたのだが今回の配備、どうやら少しばかり事情が違うようでヘリアンが難しい表情をしてから

 

《今回の人形なのだが、グリフィンからの配備ではない……『委員会』からだ》

 

そして冒頭に戻る、『委員会』グリフィン本社とは別の存在であり、委員会と一口に言っても様々なものがあるのだが今回のはIOPがトップを務めている所からの配備、とここで指揮官、偶々通信前にお茶を出しに来ていたG36に小声で

 

ねぇ、委員会ってなんだっけ?

 

「……お嬢様、流石にそれはその、不勉強過ぎると言わざる負えないかと」

 

「そうじゃな、ヘリアン暫し待て、灸を添える」

 

「へ?」

 

《……はぁ》

 

数分後、そこには軽く煙を吹かしながらもヘリアンに謝る指揮官の姿があった、ヘリアンも過去に座学で教えたはずなのだがどうやら綺麗サッパリど忘れしていたらしい、それから漸く話が再開する、ともかくその委員会からというのは何故かという事を聞いてみれば

 

《どうやらIOPにユノ指揮官が鉄血の生体実験の生き残りでありハイエンドモデルの素体だという情報が流れたらしい、そこで向こうが危機感を覚えたのだろうな》

 

「監視役か、こやつがグリフィンとして指揮官してからどれほど経ってると思っておるのじゃ」

 

《奴らにとっては関係ないのだろうな、いつ人類に謀反するか気が気ではない、だからこそ安心できる要素が欲しいという所だろうな》

 

真面目な顔してそんな会話を繰り広げる副官とヘリアンの側で謀反とか監視とかなんかえらくスケールの大きい話になってない?と困惑の表情を隠せない指揮官、彼女からしてみればそんなの欠片も考えたことのないことなので急なその単語にどう反応していいか分からないのだ、だが何とか噛み砕けた所を要約してから

 

「まぁ、とりあえず迎えてあげようよ」

 

「それはそうなのじゃが……」

 

「大丈夫だって、そもそも私悪い事したこと無いし」

 

違うそうじゃない、やはりこの少女微妙に意味を履き違えていると周り全員は思ったがどちらにせよ今回の配備を突っぱねる事ができるわけもないし、指揮官の言うことも決して間違っているということではないのでと言うことになり、最後に

 

「して、その情報を流した阿呆は?」

 

《目下調査中だ、だが直ぐに尻尾を掴めるだろう、ではな》

 

「はい、あ、ヘリアンさんも体に気を付けて下さい!」

 

なんとも彼女らしい言葉にフフッと微笑んでから一つ頷いて通信が切れる、これが数日前、そしてその人形が配備され数日経ったある日の屋上にその件の人形は備え付けられたベンチに座り15時のおやつを食べようとしていた。

 

委員会から配備された彼女の名は【TAC50】少々特殊な能力を持った彼女がこの基地に来た理由は予想通り指揮官の監視役、と言うのもその能力の御蔭で監視役としてはコレ以上にない逸材なのだ、それが

 

(……特に何か問題などはありませんね、中庭でP7達と遊んでるだけね)

 

屋上から中庭は普通であれば見れない、だが彼女は見ることが出来る。彼女の左眼は特性の義眼となっており専用のドローン【楓月】からの映像をその左眼で見れる、なのでどんな時でも対象を監視することが出来るというのが彼女の強みであり今回の抜擢理由でもある、のだが

 

(する意味あるのかな、今までだって問題が起きてるわけじゃないし、委員会の人達が言ってた関与した者が消されてるっていうのも指揮官を亡き者にしようと計画を立てたのを事前に此処の暗部が潰してるだけ……どう見ても問題ないように見えるな~)

 

だが上からの命令なので反故するわけにも行かず、彼女は今日も監視と報告は続けている、偶に本当に何もなかったのかと言われイラッとする時もあるが、そんな日は自分が大好きなメイプルシロップを大量にぶっかけたまるごと茹でたジャガイモをおやつに食べることでストレス発散をしている。

 

今日も今日でそれを食べようとした時、楓月ではなく自身の視界に誰かが映りそっちを見れば、HK416の姿、彼女も彼女で誰かいるとは思ってなかったようで驚いたようにTAC50を見てから手元の蒸したジャガイモを見て引き攣った表情になってから

 

「お、美味しいのかしらそれ」

 

「はい!やはりメイプルシロップは最強調味料ですね!」

 

「……そうね、最(高に)狂(ってる)調味料ね」

 

皮肉のつもりでそう発言したのだがTAC50は何故か驚いた風な表情をしてから、それから自身のジャガイモを見つめ、そっと半分に割ってから

 

「食べます?」

 

「皮肉に決まってるでしょ、誰がそんな甘すぎる物体食べるのよ」

 

あ、皮肉だったのねと安心したようにジャガイモを食べ始めるTAC50、これでもかとぶっかけられたメイプルシロップの蒸しジャガイモを頬張る、見てるだけで甘さで胸焼けを起こしそうなその光景に416は軽く胸をさすりながら視界を柵の向こうに変える。

 

因みにだが416に限らず殆んどの人形がTAC50が委員会からの人形で指揮官の監視のために配備された、と言う事実は知っている、だからといって邪険に扱ったりはしていないのは指揮官の人柄がなせる技なのかもしれない、だが

 

「まだ、監視は続けるのかしら?」

 

「そういう命令ですからね、委員会も彼女を未だ危険視してますし」

 

隠す素振りも何もなしに答えるTAC50、流石に配備早々にその事を言い当てられれば隠しても無駄かコレとなるものだ、それと同時にここの暗部の実力も思い知らされたので正直に言えば監視した所で同しようもないというのが彼女の本音だったりする。

 

今だってこの場に居るのは彼女と416だけだと思われそうだがFMG-9が操作する警備ロボ複数とSuperSASSによる監視が常に付き纏っており、少しでも怪しい動きをすれば即座に無力化されるだけだろう。

 

「まぁ好きに続けると良いわ、何も彼女には心配してないし」

 

「余程信頼してるのね、それは本心から?それとも支配者(ルーラー)の片鱗が現れてる彼女の能力?」

 

「さぁ、どちらにしろ私はあの指揮官の為に働くだけよ、完璧に、ね?」

 

優しい笑顔を浮かべてそう告げた416は屋上から去っていく、一人残されたTAC50は残りのジャガイモを食べ切り、楓月が見せる指揮官の様子を覗いてから

 

「本日も異常なし、通信終わり」

 

この筒抜けで間抜けな定例通信を終えるのであった。




まぁ、そろそろこういう感じの動きがあっても可笑しくないよねって話。

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