それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
パチン、と何かを強く打ったような音が響き、少女【一〇〇式】が目の前の対戦者を見据える、その目には確かな自信があった。
対してその対戦者【64式自】が盤面を見つめ、考えるように手を顎に当てる、局面を見ればそろそろ中盤、戦況は一〇〇式に多少有利か、だが決して打開の策がないというわけではない、それを電脳で組み上げてからパチンと返しの駒を置く
「ぐ、ぬぅ……」
その手に一〇〇式の表情が先程のものから一点し曇る、今彼女達が行っているのは将棋と呼ばれるかつて極東に存在していた【日本】と呼ばれていた国で遊ばれていたゲームである。
チェスのようでチェスではない、シャンチーのようでそれでもない、日本将棋と題されるそれが倉庫から発掘されたので折角だからと始め、かれこれそれなりの時間が経っている。
「うーん、これで」
パチンともう何度目かわからない小気味良い音がここ、休憩室に響く、気付けばここは休憩室と言うよりはテーブルゲーム等を楽しむ空間になっており、先程述べたチェスやシャンチーも揃っているので各々が楽しんでる場面がよく見られる、と言うより今もそこで
「むぅ……い、いえ、まだ手がある筈ですわ」
「うーんそうだね~、あるね~」
「顔がこれ以上なくらいに愉悦じみてますわよ45」
UMP45に煽られたカラビーナがチャスをしているのだがハッキリ言えばほぼチェックメイト寸前である、それでもどうにかしようとするのは意地か、はたまたその事実に気付いていないのか……
これだけ聞くとカラビーナが戦場では不安要素ではと言われそうなので補足しておくと戦場の彼女はコレ以上にないくらいに心強い存在となる、特にライフルで行われる
だがここは残念ながら平時の基地、戦場の凛々しい彼女はそこにはなく、起死回生(のつもり)で打った一手をあっさり返され、更には
「はぁい、
「うぅ、も、もう一度ですわ!今度はギャフンと言わせてあげますから」
「ギャフン」
「がぁぁぁぁぁぁ!!!」
怒りに優雅を忘れそうになっているカラビーナをドウドウとSIG-510、だがその慰め方は少々馬鹿にしているのではと一〇〇式達の将棋を眺めていた62式は思いつつ、さてどうなったかと将棋に視線を戻せば、おぉ?と声が上がる。
戦況は64式自に流れつつあるも、打つ手次第では一〇〇式の一撃があり得る展開、あの64式自がその手を潰さない理由はないので恐らくは残さざる負えない状況にさせられているのだろうと理解できる。
「(こう言っちゃ何だし人のこと言えねぇけど一〇〇式ってこうした頭脳戦も出来たんだなぁ)そういやさ、さっき指揮官とアーキテクトが出掛けてったが大丈夫なのか?」
「急に話題振らないでよ(パチン)なんでも本社から許可が降りたみたいで態々変装して出てったみたいだから大丈夫でしょ」
「ですがあれでも彼女はハイエンドモデル……やはり心配にはなります」
割りと辛辣な一〇〇式の言葉に苦笑いを浮かべつつ62式も少しだけ心配だったりする、ティスも一緒とは言えもし街の住人にハイエンドモデルだということがバレたりすればそれはもう大問題に発展してしまう、だが同時に思ったのはアーキテクトのハイエンドモデルとしての知名度だ。
もしかしてアイツそんなに有名じゃないのでは?そんな疑問が唐突に浮かぶ、自分たちは民生も視野に入れられていたので新たにロールアウトされたとしても一般人にそれなりの知名度だったりはするがハイエンドモデルは初めから軍用の存在、企業とかならばまだしもタダの一般人が知る由もない可能性が高いと思えば
「心配し過ぎか、まぁそれに街には他にも向かったって話だろ?」
「TACとSASSがコンビで向かったみたいよ、他には……」
「PM-06さんが遊びに行くついでで遠巻きに警護すると言ってました、王手」
ついでとは言っているが比重で言えば護衛の意味合いの方が高かったりする、少し前までの指揮官であればそんなに気にする必要でもなかったのだがナノマシンの処置が終わり急成長した今の姿の彼女は街の男性陣に注目されやすくなり、そうとなれば所謂良からぬことも考える人間も居るという物
なのでその三人以外にも陰ながらの警備が街には敷かれている、少々厳重すぎないかとは思うが何かあってからでは遅い、故に副官主導のもとそのような形が取られている。
「ま、アーキテクトも意外と強いし指揮官だって鍛えてるから不意打ちでもなければ大丈夫でしょうね……(パチン)」
「はい、指揮官には私達が知ってる限りの護身術を今も伝授してますから強くなってます!(パチン)」
将棋とは全く関係のない会話をしつつも繰り広げられる打ち合い、一進一退の攻防はもう少し続くかとも思われたが先程一手打った一〇〇式が、急にしまったという表情を晒す。
それと同時に64式自がニコリと笑い、持ち駒からパチンと打ち
「王手、少し迂闊だったわね?」
「ま、まだです!」
とは言ったものの、一〇〇式側の旗色は凄まじく悪くなっている、どうにか切り替えせる手はあるのだがその場しのぎに過ぎず、結局はジリ貧に追い込まれていくだけと言う展開。
うーんと声を上げ冷静に、だが何とかならないかなぁと盤を見つめるが答えはあまりに無慈悲であり、何度電脳でシミュレーションをしても行き着く先は詰みと言う結果……一〇〇式はその事実にむむむと眉間に皺を寄せてから
「敗北です……参りました」
「ふぅ、危なかった。これでも少しでも気を抜いたら負けてたわ」
頭を下げ降参の意を告げた一〇〇式を確認してから64式自がゆっくりと息を吐いてそう呟く、彼女としてもまさか一〇〇式がここまで強いというのは想定外だったらしく緊張してたらしい。
何故、彼女が此処まで強いのかと言うと所属している部隊に秘密があった、一〇〇式が居るのは【第一部隊】確かに優秀な副官の指揮のもと戦っているがふとある日彼女は思ったのだ
(もし、何かがあった時、自分でも考えられなければいけないのでは?)
それが結果として戦術を即座に組み上げる、冷静に戦況を見るなどなどのスキルに繋がっていったと本人が語れば二人はただ一言
「何というか……」
「貴女らしいわね」
コテンと小首を傾げる一〇〇式だったが褒められたと知り顔を真赤にしてこの暑さでも外してないマフラーに顔を埋め、だが小さく二人に感謝の言葉を告げるのであった。
因みにその後も相手を変えて将棋をやったのだがそこで判明したのは62式はそこまで強くはなかったということだった。
きょうもなにもないへいわないちにちだった