それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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何処からどういう形で出てるの?


基地の賃金事情

当たり前といえば当たり前なのだがグリフィンと言うのは一応民間企業である、なので指揮官を始め職員などには(恐らく)給与というものは支払われている。

 

特に前線や激戦区、または何かしらの本社からの協力を受けている基地などは給与が乗算されてかなりの高給取りだったりする……のが世間一般的な基地と指揮官、そしてグリフィンとの関係である。

 

そう、『普通』ならば。ことS09地区P基地と呼ばれているこの基地はいつぞやカリーナがヴァニラに語ったように特殊な基地であるが故にコレが適応されない。ここは確かに対外的には基地という存在にはなってはいる、だが本社からの正式な認識は今も昔も変わらずに『対鉄血早期警戒レーダー施設』というのが向こうの認識、なので指揮官には給料という形ではお金が振り込まれていなかったりする。

 

彼女は備品の一つである、故に『維持費』という形で基地予算の中に一括されているのだ。勿論だがこの事実を指揮官にも副官達にも知られてはいない、流石にコレばかりは知られると本気でマズイので当たり前なのだが。

 

(分かってても結構キツイですわね。救いなのはヘリアンさん達が理解を示してくれて指揮官さま専用の通帳を作ってくださっているという点ですわ、じゃなければ今時珍しい現金支給にしないといけなくなる所でしたし)

 

ところでだ、給料と言えば必要出費さえ支払ってしまえばあとは大体は自分の自由なお金という物である、グリフィンの指揮官、更にはS09地区という激戦区の最前線のこの基地も指揮官に当てられているお金は相当であり、さぞや彼女は色々と買えるんだろうな……と言えれば何と良かったか。

 

というのも、この基地では指揮官の給料を通帳に記した後、それは先ず祖母たる副官が目を通すために渡す決まりになっている。

 

「はい、こちらが今月の指揮官さまのお給料でございますわ」

 

「うむ……増えたか?」

 

「恐らくは今日までの戦績と、アーキテクトとゲーガ-という二人のハイエンドモデルの鹵獲、まぁ実際には殆んど共存なのですが、それが認められたからかと」

 

と、らしいことをカリーナが報告する。無論、それも正しいがココ最近になりこの基地の設備を更新が入ったのでその分増額した維持費がと言うのが強かったりする、コレを通帳に記してる訳はなく本社からの給料となっているのだがカリーナは何時もこの瞬間が緊張している。

 

この副官にバレないだろうか、表情はできるだけ崩さないように、極めて冷静に、何時も通りに報告を上げる、それを気を付けているのだが相手はあの副官、もしかしたらバレているのかもしれないとすら思わざる負えないのだが未だ向こうからそういった事を聞いてきたこともないので大丈夫だろうと彼女は判断している。

 

「なぁ、カリーナよ」

 

「ひゃ、コホン、はい、なんでしょうか!」

 

「何を慌てておる……いやな、少しだけ相談があるのじゃよ」

 

真面目な顔で副官がそう告げる、事は何やら深刻らしいと感じればカリーナも真剣な表情で彼女の机の前に向かって話の続きを待つ。

 

通帳を見つめる副官、少しの沈黙から、それからゆっくりと顔を上げて

 

「そろそろ、指揮官の小遣いを増やすべきかのう?」

 

『小遣い』これが指揮官に適応されている制度である、コレはある日突然ではなくこの基地が始まり最初の給料からの決まりとなっているのだ。普通に考えれば指揮官の給料を副官と言えど人形が彼女のお金を管理しているのはどうなのかとすら思われそうなのだがそこは此処の指揮官はそういうものなんだなと納得してしまっている。

 

そしてそのお小遣いは決して少ないと言うわけではない、しかし最近は家族も出来た手前もう少し彼女のお小遣いを増やしてあげても良いのでは考えたらしい。

 

「でも、今も指揮官さまってそんなに使ってなくてお小遣いも溜まってますわよね?」

 

「そうなのじゃがな、急な入り用というのもあるじゃろ?ならば少しは増やしても良い気がするのじゃ」

 

おばあちゃん……思わずそう呟きそうになるのをグッと堪え副官の疑問に真面目に考えてみる、なのだがやはり今のお小遣いでも指揮官がお金に困っているということは聞いたこと無い。

 

それは結婚してからも特に変わらない、なのだから彼女に渡す金額は現状維持でもよいのではないのかなというのが本音である、だがそれを副官に伝えても恐らくは微妙に納得はしないだろうなぁと考えてどうにか妥協案をそこから考えてみる。

 

「あの副官、やはり指揮官さまのお小遣いは現状維持でも宜しいのではないでしょうか?」

 

「そうか?そうかのぉ……しかしなぁ」

 

「ですから、少し違う形で指揮官さまへのお小遣いを増やしてみませんか?」

 

「違う形じゃと?」

 

副官の疑問の顔にカリーナはええ、と一つ頷いてから自分が考えた妥協案を提示してみる、なんてことのない、今使うわけでもないのならばという形での妥協案。

 

同じ日の午後、副官にその計画を話して通されたカリーナは通帳を片手に指揮官が居ると思われる場所へと歩いていきノック一つしてから

 

「あ、いらっしゃいカリンちゃん」

 

「こんにちは指揮官さま、それとPPKさん」

 

「珍しいですわねカリーナが此処に来るなんて、如何なされましたか?」

 

そこは指揮官の自室、業務を終え非番だったPPKとゆったりとしていた所申し訳ないとは思いつつもカリーナは今朝方のやり取りを話し始める。

 

妥協案、それは単純に指揮官の直接渡すお小遣いは増やさない、だが給料として振り込まれる通帳とは別にそこに一定金額が振り込まれるように設定された本当に彼女専用の口座をカリーナは作成、今手に持っているのはその口座の通帳である。

 

詰まる所、家族資金としての貯金に増やそうとしていた分を回したのだ。因みに現状でも指揮官一家が普通に過ごせるほどに入っていたりする。

 

「ということですので、こちらは指揮官さま、と言うよりは家族皆様が何かを買ったり、少し遠出したりの際に使ってくださいね」

 

「あ、ありがとう。うん、大事に、皆と相談しながら使うね」

 

「……げ、現状でもそれなりには入ってますがこれは初期費用でしょうか?」

 

誰しもがそう思う、カリーナだって副官から言われた時にはそうだと思いこんでいた。だが実際はそうではなく、副官曰くこの既に口座に入っているのは

 

「あ、これ私が使ってないお小遣いだ」

 

ユノ指揮官、彼女は基本的に外に出ないし、出てもそこまで使わない少女である。




月のお小遣い制度で過ごしてる指揮官が居るらしい。まぁ本編でも言ってますが基本的に使わねぇんだけどねこの少女。

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