それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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望むは彼女の笑顔、本当なら自分が隣が良かったけどね


好きだから、惚れたから

彼女は何を思ってK5を難儀と言ったのか、そしてそれに対してK5はと言うと今のやり取りをしていた二人が居た噴水を静かに見つめていた。

 

その目は漸く進んだ二人を祝福する、というのも含まれているのだがIDWには同時に羨ましいという感情が含まれていることに気付いていた、だからこそ彼女は言ったのだ、難儀なもんにゃと

 

「おめぇ、どうして敵に塩を送るようなことしたにゃ、態々宣戦布告なんてしないでさっさと掻っ攫っちまえば良かったと言うのににゃ」

 

「ふふ、惚れた相手に笑顔に居て欲しい、ていったら納得してくれるかな?」

 

「してほしいと言うなら納得してやるにゃ、ああ、それと安心するにゃ。今はもう奴との通信は切ってるから聞いてるのは私だけにゃ」

 

なお、FMG-9は突然通信を切られたので何があったのかと割と慌ててた模様、そんな事は知らないIDWは強がってるように感じるK5に向け、更に言葉をかけていく。

 

「確かにそれもあるだろうにゃ、だが私にはこの一件、全部がお前がなにか踏ん切りを、いや違うにゃ……諦める理由を見つけるための流れに見えるにゃ」

 

「……私は暗に君は腰抜けだ、臆病者だとマスターに昨日言ったんだけどさ、あれは私だって話」

 

「お前さんが?そりゃあ笑える冗談にゃ」

 

「いいや、臆病者さ。なんたって彼女の笑顔を消すかもしれないと思ったから当たりもせずに譲るくらいだからね」

 

彼女はあの、初めて出逢ったあの日に占い、そして『視ていた』彼女の過去の断片を、そして少し先の未来を、『視える』ことすら稀だというのに過去と未来を同時にというのは始めてだった。

 

だからこそ惹かれた、この人と共に歩けばこの先どんなモノを視せてくれるのだろうかと、そう想いマスターには悪いがと積極的に彼女と接触を試み、ある日それは訪れた。

 

何時ものように覗く彼女の未来、いつもいつも笑顔のヴァニラを映し終わる筈だったそれ、だがその日だけはもう少しだけ先を視せてくれた、いや、この場合は

 

「視てしまった、だね。それがなければ私はまだ当たりに行ってたよ」

 

「大方、その笑顔を見せてる相手がK5ではなく、マスターだったってオチかにゃ」

 

「断定は、出来ないけどね。ただ特徴が一致するのは彼女しか居なかった、そんなって思ったよ、今もこうして楽しげに会話してるのに心の奥で想っているのはマスターなのかって」

 

悔しかった、コレも彼女にとっては初めてだった。今こうして向けられている笑顔はただ友人に向けるようなものなのかと嫉妬が混ざった、どうにかそれを自分に向けられないかとも考えた。

 

考え、踏み止まる、それは自身が占い師として動いている時からの信念だった、これだけは守り続けると決めたもの

 

「視えたモノは良くても悪くても手を加えない……私がそうやって『視える』ことは本当に稀、だけど視えたってことは多分余程重要なこと、だから手を加えて変えてはいけないって」

 

それにねとK5は見せたことのない感情がごちゃまぜになった笑顔で近くのベンチに座り込んでから

 

「多分、私には初めから勝ち目なんて無かった、もしこのまま、いや、昨日想いを告げに行ったとして多分、ヴァニラは困った顔をしてから断ってきたさ」

 

「……はぁ、おめぇ本当に難儀なやつにゃ」

 

「かもね、あ~あ、こんな機能なぁんで人形に載せたのかなぁ、コレがなければまだスパッと斬られて諦められたのに」

 

悔しいなぁと呟くK5の目には涙が、大粒なそれは重力に従いゆっくりと地面に落ちて弾ける、自身のいつもの口調ではなく何処と無く年頃な少女の口調であれこれ言葉を吐き出していき、IDWはそれを適度に相槌を打ちながら隣で黙って聞く。

 

どうやら彼女らは暫く戻らないらしい、それを聞いたのは漸く通信が回復し何があったのかと聞いたFMG-9

 

「あ~、はいはい、あまり遅くならないでくださいよ……え、夜にBARで呑むからPKPとG36と医務長を呼んでおけ?は、はぁ声を掛けておきます」

 

《頼んだにゃ、ってはいはい、聞いてやるから少し待つにゃ》

 

本当に面倒見がいいなあのIDWと思いながらFMG-9はヴァニラとスプリングフィールドが今どうしてるかをヴァニラの携帯に仕組んでおいたGPSで位置を確認すると

 

「ありゃ、マジで帰ってきてる……うーん、まぁそこだったら確か、ああ、居たいた」

 

どうやらいつの間にか基地に戻ってきてたらしい二人、なので近くを巡回していた警備型スカウトを一機拝借して様子を探ることに。

 

二人が居るのは倉庫区間の外に取り付けられたベンチ、そこに座っているのだがヴァニラはと言うと

 

(言っちゃった……いやいや、あんなお前駄目だろ、こうもう少し言い方ってのがあったんじゃないのかなぁ)

 

毎朝、私のためにコーヒーを淹れてくれ、昔コレに近い言葉を何処かで聞いてそれを改変したのなのだが絶対に意味を取り違えられると思い込み一人頭を抱えたくなる。

 

そもそもにして何故急に告白をとか言われそうだがそれすらも彼女にはわからない、分からないが言うならばあそこしか無いと思ってしまったからだ。

 

しかし、それにしたってもう少しストレートに言えただろうと思わずにはいられない、しかも向こうが答えを言おうとした時に急に怖くなり逃げるように帰ってくる始末。

 

何とも情けない、そんな感じにため息を吐くたくなるが流石に今はマズイと飲み込んだタイミングで

 

「あの、ヴァニラ、さん?」

 

「え、ああっと、何かしらスプリング?」

 

「返事、していいですか?」

 

思わず息を呑む、彼女が自分をどう想っているか、それは理解しているつもりだ、だがそれと返事は別、もしかしたらあの情けのない姿で失望されたかもしれないとすら考えてしまいながらスプリングフィールドを見て

 

声を失った、今日のどの場面の、いや、今までの日常の中でも比べ物にならないほどに綺麗な横顔の彼女がそこに居た、夕焼けの所為かは分からないが顔を相変わらず赤くしながらスプリングフィールドは

 

「喜んで、いいえ、はっきり言えば凄く嬉しいんです、ヴァニラさんからその言葉が聞けて……本当に、嬉しかったです」

 

彼女がヴァニラの方を向いて微笑む、対してヴァニラはその言葉を聞き、そして彼女の嘘偽りのない微笑みに眼を、思考を、その全てを奪われていた。

 

「私からも言わせてください……私、スプリングフィールドはどの世界の誰よりもヴァニラさん、貴女を心から愛しております」

 

ふわりとそよ風が二人を包むように吹いた。




悲報 三話じゃ終わんなかった

速報 明日で終わりかもわからん

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