それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
コケコッコー!!と朝を告げる鶏の鳴き声が響き渡る基地の一角、農業エリアに建設された養鶏場に今回の主役たる彼女は居た。
麦わら帽子に白のシャツの上からオーバーホールという格好のこの基地では二人しか居ないハイエンドモデルの一人『ゲーガ-』である、この基地に来る前はF小隊が居る基地の近所にあった牧場で手伝いと警備を担当してただけあって今の格好は物凄く様になっている。
「よしよし、今日も卵ありがとうな。ああ、待て餌は沢山あるから奪い合うな」
ひよこは生まれたがまだまだ成鳥になりには時間がかかる、なので卵を生むのは雌鳥のエッグタルトのみ、それも一日に一つなので流石に基地を賄うのは全然足りない……とゲーガーは思ってたのだが彼女がこの基地に配属になってから数日後、鶏が増えた、しかもご丁寧に雄鶏と雌鳥が四組、それでも卵は全然だが将来的に考えれば凄まじい勢いで卵は量産されるだろうと考えている。
因みに、急激に増え、更に今後も増えると聞いた指揮官は
「……な、名前のレパートリー足りるかな」
とかなり深刻な声で呟いていた、なので流石に増え過ぎれば牧場に帰す個体も出るので深く考えるなと教えておいたらしい、因みに名誉名付けられた鶏である『エッグタルト』『カスタードプリン』『トーンエーク』『フリッタータ』『ロコモコ』『トルティージャ』に関してはこの基地所属の鶏として天寿を全うするまで過ごしてもらうつもりとのこと。
見分け方に関しては脚にリボン、しかもアーキテクトが妙な真剣さで開発したマイクロチップ内蔵型のリボンであり『にわとりだいすきちゃん』もしくは鶏の健康状態を確認するために開発された『コッコスコープ』という聴診器型の機械をかざすと見れるようになっているのでそれで見分ける形をとっている。
「おはようございます、ゲーガ-さん」
「む、ああ、お前らか、おはよう」
養鶏場の掃除、鶏世話などをしていると後ろから声を掛けられ振り向けば農業するための作業着姿であるスリーピースの面々、声を掛けてきたのはそのリーダーのP38、それから時計を見れば確かにそろそろそんな時間だったなと分かる。
なのでゲーガ-も残りの作業をせっせと終わらせてから、養鶏場近くに備え付けられた農具が収めてあるロッカーを開いて一式を取り出してから
「手伝うぞ、今日は何をすればいい」
「毎度助かります、では今日は……」
こうして彼女らの早朝は過ぎていく、農業を終える頃にならば丁度朝食になるくらいであり、基地も起きてきた人形たちで賑わいを見せ始める時間帯になる、作業を終えた彼女らもそれぞれがシャワーで汚れと汗を流してから朝食に向かうのかと思えばゲーガ-だけはそうではなく、向かうはアーキテクトの自室、当初は農業の手伝いなどでよく早起きしてくれていた彼女だがどうにも最近は緩んでいると言うべきか、業務がある日でもギリギリまで寝ている日が多くなっているらしい。
自室前についた彼女は先ずノックをし暫く待つ、返答なし、再度ノック、やはり返答なしという結果、なので
「入るぞ」
と一言入れてからドアノブを回せばあっさりと開く扉に思わずため息を吐く、幾ら基地の中とは言え無用心過ぎるだろうと、更に言えばアーキテクトの部屋には様々な設計図がその辺りに散らかっている。
一応余程機密なものは金庫だったり、彼女の網膜などの情報がなければ開かないようになっているラボに保存されてはいるがそれでも外に流れれば厄介極まりない物もこの部屋にはあるので防犯はしっかりやれと言わざる負えない。
そしてそんな部屋の主たるアーキテクトはと言うと自身であれこれ手を加え、そこにG11も監修を付けた『ものっぞい眠れるベッド』でのんきな寝息と間抜けな寝顔を晒していた、この調子では恐らく昼を過ぎて漸く空腹で起きるだろうという熟睡っぷりである。
「(はぁ、コイツは)おい、起きろ、朝だ」
「んんっ?あと5時間……」
「何が5時間だ、良いから起きろ、三度目は無いからな」
若干ドスを聞かせた声で起こそうとするがこのハイエンド、起きない。それどころか五月蝿いなぁとばかりに布団を更に被ってしまう。
そんな態度に遂にキレたゲーガ-は無慈悲に布団を剥いで、そのまま拳を握って……部屋に鈍い音が響いた。
「酷い……酷いと思わない?ちょっと起きなかっただけだよ?」
「二度は声で起こしたのに動かないお前が悪い」
「あ、あはは」
頭を擦りながらトーストを噛じ近くの指揮官に不満を漏らすアーキテクト、かなり本気でやられたようで眼には未だ涙が浮かんでいる、この様に最近ではアーキテクトを朝起こすというのもゲーガ-の仕事になりつつあったりする、まぁゲーガ-じゃなくともG36だったり極稀に指揮官だったりも起こしに行くのが一概にゲーガ-の仕事というわけではないのだが。
午前はこんな感じに農業や鶏の世話、アーキテクトを叩き起こしたりと裏方な仕事が多い彼女、しかし午後となると鶏の世話はそのまま継続されるのだが、ここ数日ではアーキテクトと自身のいざという時の装備の開発に協力している。というのも彼女たちは確かに戦術人形が扱うような銃器でも問題はないのだがそれでは十全に自身の能力を発揮できない、なのでとアーキテクトはペルシカとヘリアンから許可が降りる範囲での武器の開発を始めたのだ。
「で、なにか出来たのか?」
「うーん、一応ってのが頭に付くかな。近接はまだなんだけど自衛程度だったら一つできたんだ」
ほらこれと差し出されたのはコンパクトに畳まれた通信機のようなもの、天辺のスイッチを押せばトリガーが存在するグリップが現れる。
そのグリップにはタッチパネル式のモニターが表示されており、そこには周波数を合わせたり、シュートカットで誰かに繋げられるように設定できるようになっている。
しかしこれだけでは携帯できる通信機、なので説明を促せば
「これ、こうやってグリップの位置を調整して銃のようにしてからENTERを一度だけ押してから、ちょい待ってね……ほい、あの的に向けてトリガーを引いてみ」
「あ、ああ……」
カチャリとグリップが可変し見てくれは銃のようになったそれを構えてアーキテクトが出した的に向けトリガーが引けば、赤い光が発射され的を射抜く。
威力としては恐らくは人間程度を気絶させるのが限界だろう、だがアーキテクトがそれで済ませるはずがないと彼女の方を見れば
「とりあえずは護身用、だから人間一人を確実に気絶させる程度に収めてる」
「『とりあえず』はか。調整次第で人形も殺せる感じか」
「それは勿論だけど、最終目標としては初期までのE.L.I.Dを射抜き殺せる威力にはしておきたいと考えてる」
なんでまたとゲーガ-は思いかけたが、そう言えば指揮官の知り合いであるR06地区の指揮官がE.L.I.Dと戦闘、負傷していたなと思い出して、どうやらそれに備えてのことかと勘づく。
だがまだまだ試作段階、今さっきゲーガ-が試射した威力でも確実に発射されるというわけでは無いらしくこれからも調整が続くらしい。とりあえずなにか手伝えることがあるならまた言ってくれとアーキテクトに伝えてからゲーガ-は午後の残りの作業を始める。
(にしても、アイツが此処まで誰かのために動くとはな。って人の事は言えないか)
「にゃああああ!!??」
「ほら、鶏ども、それでもこの基地の一番偉い人だ、あまり虐めてやるな?」
ゲーガ-はゲーガ-でこの基地の生活が良いものだと感じている、勿論、F小隊との日々も大切な思い出だし、何だったら3日に一度は通信をしているらしい。
基本的に任務とかでもなければオーバーホール姿が基本のゲーガ-さんである。
アーキテクト商品紹介コーナー
『コッコスコープ』
見てくれはエグゼ○ドで出てきたゲームスコープ。かざすだけで個体の健康状態から何まで見れる便利品、と言っても精密検査にはまだまだ勝てない。
ハイエンド組護身用携行武器
早い話しファイズ○ォンⅩ、ただまだ完成には至っていない。