それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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クレアの場合


とあるダミーの朝

この基地のダミー達がスリープ状態で待機している部屋、基本的に作戦などの時以外はこうしてスリープ状態にしておくというのがこの基地での決まり事である。

 

理由は様々あるのだが最近ではユノ指揮官から何かしらの影響を受けた際にダミーであろうと何かしらの想定外なマインドマップの変化或いは生成が行われてしまうかもしれないのでそれを避けるためにでもあったりする、が今までそんな事があったという話は聞いてはいない、『彼女ら』を除いては

 

誰かが入り操作をしなければ起動も何もしないはずのダミー、その一体から物語は始まった……などと雄々しい感じに書き出してみたがこの基地で勝手に動き出すダミーというのは

 

「ん、ふみゃ~……あれ、おねちゃん(ほんたい)が居ない?」

 

時間にして早朝、P7のダミーの一体であり指揮官から貰った黄色いリボンが特徴的な【クレア】が突如として起動、台から降りて眠そうにあくびをして目を擦ってから辺りを見渡すが自信を起動したと思っていたP7、もといこの基地では『ルピナス』と呼ばれる彼女の姿がない。

 

考える、これはもしかしてもしかしなくてもと、何度も周囲を見渡す、隠れてる様子もない、通信も入らない、タスクに命令は何一つ無い、となれば

 

「やったぁぁぁぁぁぁ!!!自由だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

他の姉 妹(ダミー)を起こすとかそういう考えは一切なく、クレアは勢いそのまま待機室を飛び出してピタッと止まる。出てきたは良いのだがさて何をしようと考えているのだ、確かに自由ではある、がやたらめったらに行動すればきっと早い段階でおねちゃん(ほんたい)に気付かれてしまう、それはよろしくない。

 

では指揮官の所にとも考えたのだが時間はまだまだ早朝、眠っているのを起こすのは良くないと過去におねちゃん(ほんたい)とステアーにこっ酷く怒られたのでそれも出来ない。うーんうーんと折角だから思いっきり遊びたいがどうすればと悩むクレアだったがその唸りはまた突然と止まり、その目はとある猫、白いズングリムックリ、そう

 

「大福だ!待てぇぇぇぇ!!!」

 

この時点で彼女の悩みは掻き消えた、今はそれよりもあの猫を捕まえるんだと言うことに全神経を回している、対して突如大声で呼ばれた大福は驚く様子もなく一瞬だけクレアの方を向いてから、即座に逃亡を開始、ここに大福VSクレアの壮絶な基地での追いかけっこが始まった。

 

因みにだがP7のダミーである彼女たちは既に基地の者全員に認知されているし勝手に起動して遊び始めるということも知られている、なのでこうして大福と追いかけっこをしていたとしても

 

「元気やなぁ、あれは……」

 

「黄色のリボン、クレアちゃんですね」

 

「ああ、てかよぉ見えたな、それとそのカメラはすぐに止めたほうがええと思う、うん」

 

ガリルとRO635の言葉の感じに寧ろ微笑ましいものを見れて良かったという感じにすら収まっている、そんな周りの反応を知ってか知らぬかクレアは大福を力の限り追い回すも向こうは逃げ慣れているのか急転換や速度の緩急、挙げ句に壁蹴りからの三次元移動でクレアを飛び越えたりと縦横無尽な動きで翻弄、最後には

 

「ぜぇ、ぜぇ……」

 

「な~」

 

「く、くっそぉ」

 

クレアが先にヘバリ大福は一つ鳴いてからまた基地の散歩に戻っていった、本日も大福の逃げ切り勝利である、では今日はもうこのまま活動を停止するのかと思えばそうではなく少しだけ息を整えればバッと立ち上がり特に目的地を決めずに誰か居ないかを探し始める。

 

この誰かとは遊んでくれそうないい人という意味である、確かにまだ指揮官達は眠っている時間ではあるがステアーや他の人形たちは常に誰かが起きている、なので少し歩いていれば

 

「おや、P7……ではなくてクレア、でしたか?」

 

「うん、クレアよ!あ、そうだウェル、遊んで!!」

 

あ、遊んでですか?と困った感じに呟くウェルロッドMk2、彼女はこういう場合の動きがよく分からない少女である、警邏の時に子どもたちが遊んでいるのを見たことがあったりするが、自分が相手するとなると何をすれば良いのかと考え込んでしまう。

 

しかし、彼女からの要望を無碍には出来ない、と言うより輝かしい笑顔を向けられて断れるはずもなく、クレアの性格を考えた結果、ウェルロッドが出した答えは中庭で良いですかだった、要は普通に体を動かして遊んであげようという考えだった……のだが数十分後、そこには

 

「にゃああ!!!」

 

「こ、子供の体力は凄まじいとは聞いてましたが、ここまでとは……」

 

ベンチに座り込むウェルロッドと現在は『おゆうぎしますちゃん』と全力で遊ぶクレアの姿、端的に言えばウェルロッドが先にバテたのだが彼女としては先程まで大福とあんな追いかけっこをしていたはずだと言うのに何処にそんな体力がという驚愕のほうが強かったりする。

 

だがこうして傍からクレアが遊んでいる姿を見ていると自然と頬が緩む、やはりこういう平和は良いものだと、そんな事を思っているとクレアが急に自分の方を向いておゆうぎしますちゃんを無視して走り出してくる

 

(え?え?な、何を!?)

 

いきなりの事に驚きつつ身構えるウェルロッドだったがクレアはスルーしてそのまま彼女の後ろへと走り抜けていく、一体どうしたのだと振り向けば、直ぐに納得した、そこに居たのは

 

「おはよう、ママ、パパ!!」

 

「おはようクレアって、貴女だけが今日は動き出したのかな?」

 

「そのようですわね、誰かに遊んでもらってたのですか?」

 

「うん、ウェルとおゆうぎしますちゃんに!」

 

それを聞いた彼女らがウェルロッドを見つけると近寄り二人して頭を下げ礼を伝えてくるので思わず

 

「い、いえ、私も暇をしてましたし、楽しかったですよ」

 

「それでもだよ、本当は私が起きてれば良いのだけど……」

 

「ママはゆっくり寝てても良いんだよ?その間私は他の人と遊んでもらうから!」

 

「ユノは休みの日の朝は弱いですからね、ですがあたくしなら起きてますわよ?」

 

じゃあ今度からパパを呼ぶね!ニコッと花が咲くような笑顔でクレアが笑えば周りも自然と笑顔が溢れる、今日はこのまま【アニス】達も起こして家族皆で遊ぶことにした、途中で他の人形たちも混ざり凄いことになってたりするが今日も今日とてこの基地は平和でしたとさ。

 

因みに今日までヴァニラがダミー達のこの勝手に動き出す現象を調査しているのだが原因らしい原因が分からずじまいであり、それでも何となしに出された答えが

 

『まぁ、ユノちゃんやPPKに会いたいとか遊びたいとかで動き出すんじゃないかなぁ、この子らマインドマップが独自すぎて私でもわからんのよ』

 

結局、害もないし寧ろ制限するほうが可哀想だしと言う夫婦の言葉で彼女らはこうして遊べるようになっている、




今後思いついたらこんな感じにP7のダミーズのお話でも挟みましょうかね、割と書いてて楽しかった。

まぁ最近リアルが忙しくて帰るの遅くて浮かびが悪いけどね!!

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