それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
休憩室、エアコンからの冷たい風を気持ちよさそうに当たりながら指揮官がじっと見つめる先、そこには【Zas M21】ツァスタバと呼ばれる人形の指先、自身のよりも何というか綺麗な色をしているなぁと思っていると視線に気づいたツァスタバが
「気になりますか?」
「え、あ、うん、綺麗な爪だなぁって」
「あら、もしかして指揮官はネイルをご存知ではないのですか?」
初めてきた単語に一つ頷く、それを見てあらあらと言った感じに周りの同じく涼みに来ていた他の人形、FALとFive-seveNに視線を飛ばせば二人はあ~という感じに口を開いて
「切っ掛けがなかったのよ」
「そうねぇ、そんな事しなくても指揮官は可愛いから」
「この感じですと化粧ですら、いや、もしかしてスキンケアと言う物も?」
「スキンケアっていうのはクリミナとStG44から教わったよ……あ、でも最近してなかったかも」
え、という表情になったツァスタバは断りを入れてから指揮官の肌を触っていく、スキンケアをしていないと言う割には張りも艶も文句なしの肌、ホッペなんて寧ろ羨ましいほどにモッチモチでありコレには思わず
「卑怯と言わざるおえませんね……ですがもしかしたら今日まで維持できていたのはナノマシンの所為なのでは?」
「どうなんだろ、だとしたら今後はきちんとしなくちゃいけないのかな……」
面倒だなぁと言うのがありありと浮かんでいる表情に苦笑をしてしまう三人、がここで二人は思い出す、そもそもナノマシン治療後も彼女は沢山食べてるしスキンケアとかしていない気がすると、だとすれば彼女のそれは完全に体質で維持されている可能性が生まれる
(……これは黙っておきましょう)
(そうね、もし本当にそうだったら立ち直れないわ)
後日、一応でPPSh-41とアーキテクトに聞いてみたらその通りだったことが判明して沈む模様、それはまぁ余談なので今は置いておこう。
ともかく、ツァスタバは指揮官が女を着飾る術を服以外に知らないとなればこの休憩室で急遽、座学が始まるのも必然ということだろう、何処から持ってきたのか化粧道具一式を取り出して一からあれこれと教えていく。
「……でも、クリミナはいつも綺麗だって」
「確かに、今のままでも指揮官は不思議と素敵というのは否定しません、ですが化粧というのはキチンと行えば更に上に上げてくれるもの……ネイルもその一つになりますね」
「でも指揮官に施すとすればナチュラルメイク位よね、下手にあれこれ弄るとバランスが逆に崩れそうだし」
「ネイルも自然体そのままに少し手を加える程度かしら、本当に指揮官ってこのままで完成されてるのね~」
二人の言葉に確かにそうなのですがと同意はするツァスタバ、彼女自身も何となくだが指揮官は下手にメイクするのは却って悪くなっちゃうとは思ってはいた。
それにしてもとFALとFive-seveNは思う、クリミナと長らく生活するようになってから以前のような無垢な少女のような可愛さだけではなく、何処と無く大人びた女性の綺麗さも伴うようになったなぁと
「指揮官ってさ、PPK、あ、いや、クリミナだったわね、彼女の何処が初めに好きになったのよ」
へ?とネイルをしてもらっている指揮官は不思議そうな顔をする、まさかいきなりそんな質問が来るとは考えても居なかったらしい、FALもふと浮かんだだけで特に深い理由はないのだが指揮官の口からそういった話を聞いた覚えがなかったなと思い聞いてみた。
「初め……初めかぁ。うーん、笑顔、かな。うん、多分初めは笑顔だと思う、私と最初はお茶会くらいしか会話しなかった時に見せてくれた向日葵みたいな笑顔」
当時を思い出して懐かしい目をしながら語る指揮官、当時は本当に奥手でそして自分も恋とかの感情を知らなかった時期、ただ彼女が暇にしてそうだという理由で自分から誘った小さなお茶会、今に思えばそれが二人を今日に繋いだ出来事。
それを思い出すと自然と笑みが溢れてしまう、クリミナもクリミナで実は自分に一目惚れしてて見つめていただけで暇をしていた訳ではないと後で聞いたことだが。
「向日葵みたいな?それきっと指揮官しか見たことない笑顔ね」
「私は来たのは最近ですから当時というのは分かりませんが、今の二人は誰が見ても本当に幸せな夫婦だとは思いますわ……はい、出来ましたよ」
言われ自分の爪を見れば淡い色のマニキュアが飾られた自身の爪に感動の声を上げる、ツァスタバの腕は確かであり幾つもあるマニキュアから彼女に合うものを的確に選んで塗ったのでFALとFive-seveNが見ても納得の出来である。
ここではその後、化粧の座学は終わってからは再び指揮官からクリミナについてのあれこれ、と言うよりも半ば惚気に近い話を聞き出すことになるのだが、同時刻、スプリングフィールドのカフェでは
「あ~、くっそ甘いし胸焼けするにゃ……」
「聞いてきたのはそちらでしょう?」
「これは、予想以上でしたね」
「おぉう、スプリング、コーヒー頂戴……」
偶々集まったという理由でIDWがクリミナに惚気話を聞いていたのだが内容がどストレートに甘すぎて、普段はあの紅茶愛好家のIDWが殆ど飲まないブラックコーヒーを飲んで凌ごうとすらしていた、それほどまでに甘々だった。
「おめぇ、本当にあのクソヘタレPPKと同一人物かにゃ?」
「し、失礼ですわね、いえ、まぁあの時のあたくしはそれはもう酷かったというのは自覚してますが別人扱いされる筋合いはございませんわ」
「はぁ、で、二人は何処まで行けてるにゃ」
まさかの白羽の矢が立ったスプリングフィールドとヴァニラ、何処まで行けたかと言うのはつまりそういう質問であり、しかも声の質からは大した期待をされていないのが分かりきったことにムッとなりつつ
「て、手を繋げるくらいには」
「小学生か!!!!」
GSh-18魂のツッコミがカフェに轟く、これにはIDWも想定外な返答に目を見開いて驚いており、クリミナは優しい笑みを浮かべ二人を見つめている。
まさか互いに想いを告げてから、順調に進むかと思っていた二人の距離、それが此処まで牛歩だったとは……そう思わざる負えないIDWは手を額に当てながら
「……進んでるなら、もう何でも良いにゃ」
「知ってるかいIDW、それは丸投げって言うのだよ」
とK5は言うが自身もこれには半ば苦笑いを浮かべる他無かった模様、それと同時に指揮官とクリミナ夫婦の進んだ速度に
「まぁ、比べるのもあれよね」
引いたカードは『月』の逆位置、読み解くとすればヴァニラの『真実』を知り、そして『過去』を『脱却』、そして今こうして少しずつではあるが『好転』している……つまりゆっくり見守れということかな?と読み解いてからコーヒーを一口、特に何も入れていないはずのそれは不思議なことに甘く感じれた。
マジかよこのカップル……(他人事)(困惑)
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MDR来ました