それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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全てを賭けて


一人っきりのパーティータイム

響いた銃声、だが悲鳴も、鮮血も上がらない……煙を吐いている銃口の先にあるのは右頬から血を流し続けるユノの姿、叫びとともに放たれた弾丸は彼女の右頬のほぼ真横を通り地面に着弾、結果としてそれなりに深い切り傷が付くだけで済んだ。

 

撃たれるその瞬間も、そして今も、ユノは目を閉じも逸しもせずにスペクターを見つめ続けていた、それが彼女には理解できなかった、自分が死ぬかも知れない、痛い思いするかも知れない、そんな時に人間というのは目を閉じてしまう、逸してしまうのではないかと。

 

頬の傷だって浅い訳じゃない、血がまだ止まらないくらいに痛みだってあるはずなのにユノは特に反応を示すわけでもなく、少し前と同じ様に優しい視線が送られる。

 

「……」

 

言葉が出ない、まるで自分が反らすとそう信じていたという行動に、だがそれ以上に彼女が困惑をしていたのは、自分が無意識に銃口を『逸した』ということに、自分は迷いなく殺すつもりだったと言うはずなのに、銃口は、手はまるで彼女を殺すのを拒むかのごとく動いた、そして結果が今目の前に広がる光景である。

 

ガチャンと生成したリボルバーが手から落ち地面に叩きつけられる、それを気にすることもなく、スペクターはユノから逃げるように彼女から離れる、怯えるようにだが彼女から視線を離さないように這いずりながら離れる。

 

「大丈夫、怖がらないで」

 

「うるせぇ、なんだよこれ、どうしてだよ、殺したかったはずだろ……」

 

流れる血を気にせずにユノは立ち上がりスペクターへと声をかける、それは優しく、まるで妹に掛けるような声で、だがスペクターはそれを受け入れられない、自分の無意識の行動ですら意味がわからずにパニックを引き起こし始めている。

 

否、薄々とだが彼女自身も気付いていた、敵として見ていたはずのユノを段々とそう見れなくなってきていたことを、だがそれを認めたくない、認めたら自分が、今日までの自分が崩れてしまう気がして、妹たちを忘れてしまいそうな気がして

 

「ちくしょう、来るなよ……来ないでくれよぉ」

 

情けなく、先程までの覇気がまるでない声で否定する、だがユノはゆっくりと、できるだけ安心できるように彼女に近付いていく、そして側まで来た時、手を差し伸ばした、もしかしたら自分からというのは初めてかも知れない、今日まで拒絶をし続け、一度は壊れかけた彼女が

 

「いきなりは難しいかも知れない、でも貴女と、友達、ううん、姉妹ってなれないかな」

 

「し、まい……」

 

「もちろん、貴女の、私にとってもか、妹たちのことも、形だけになるけどお墓作ってあげてさ、みんな一緒の所で住まない?」

 

手を差し伸ばした体制のまま、頬から血を流し痛々しいと言うのに何処か安心できる表情と雰囲気のユノにスペクターは迷い、だがゆっくりと手を伸ばして……彼女の手を『弾いた』

 

「黙れ……」

 

「す、スペクターちゃん?」

 

「黙れ黙れ黙れ!!!!私を惑わすな、信頼させるな、もう希望を持たせないでくれ!!!!」

 

許容を超えてしまった彼女は錯乱し飛行ユニットを展開、急速にブーストを焚いて周りに衝撃波を起こしつつ空へと逃げるように飛び去っていく

 

「スペkきゃあ!?」

 

「ユノ!」

 

至近距離でその衝撃波を受けてしまったがために吹き飛びかけた時、ライブから抜け出して追いかけてきたクリミナが彼女を支える、だが今のユノはそれでどころではない。

 

掴めなかった、後少しだったのに孤独に生き続けた妹の手を、彼女は繋げなかった。

 

「私、失敗したの?」

 

「いいや、成功だよ。大丈夫、この天才アーキテクトさんがこの展開を読めてないわけないのッタタ……」

 

え、とアーキテクトを見つめれば、蹴られた腹部を抑えながら彼女はサムズアップをする、だが彼女も知らなかった、予測はあってたがその上で想定外なことになっていたことに。

 

逃げるように去ったスペクターは街からかなり離れた上空を飛んでいた、逃げなければいよいよ自分が壊れてしまうと判断してしまった。

 

《ハァイ、スペクター……どうやら作戦は失敗したようね》

 

「ドリーマー……うるせぇ。すぐに体制を整えて」

 

《生意気言ってんじゃねぇぞ、てめぇにはもう期待してない、まぁでもあの街にルーラーを、そして祭りで沢山の人間が来てることを判明させてくれたのは助かったわ》

 

言ってる意味が分からなかった、この性悪ハイエンドモデルは何を言ってるのだと、それから勘付いた彼女は高度を落として反転、地上を見ればそこには警戒網を上手いくらいに躱しながら進軍する鉄血の姿、数だけを見れば街どころか下手なグリフィンの基地は飲み込まれそうな数

 

「どうするつもりだこれ」

 

《どうもこうもないわよ、この地区で一番の戦力なんて言われてる基地の指揮官、更にその人形たちがあの街に集ってるなんて聞いたら襲撃するに決まってるじゃない》

 

それを聞いた彼女は……迷った。ほんの少し前の自分であれば恐らくはこの集団に加わりユノを殺すために動いていたかも知れない、だが今のスペクターにはそれが出来なかった。

 

じゃあ、このまま見て見ぬ振りをして帰還してしまえばいいとも考えたがそれも出来なかった、彼女は知ってしまった、悪意だけじゃないということを、確かに全てが手遅れだったとは言え純粋な善意が、優しさが、そして何よりも、自分と違うベクトルとは言え過酷な扱いをされながらも幸せに笑うことが出来ていた彼女を……そんな事を考えていれば気づけば

 

《……どういうつもりかしら?》

 

鉄血の軍団の先頭に降り、立ち塞がっていた、機械仕掛けの翼のような飛行ユニットを広げ、右手にはミニガンの【M134】を生成、その姿は戦線に加わるという形ではなく明らかに邪魔をしに来たという光景に鉄血人形の視界を借りてみているドリーマーも通信越しで疑念の声を上げる。

 

「……」

 

《ダンマリ、ねぇ。邪魔するっていうのかしら、いきなりどういう風の吹き回し?それとも大嫌いが大好きに変換でもされたのかしら?》

 

「……今でも、人間は、アイツは大っ嫌いだ」

 

なら退けよとドリーマーが言おうとした時、スペクターが更に言葉を続けた、確かに彼女は今でも人間が、ユノが嫌いだ、認められないとも言える。

 

だけど、こんな自分にも彼女は手を差し伸べてくれた、老婆は優しく食事を分けてくれた

 

「あったけぇものを、こんなアタシにくれた、手を差し伸べて救おうとしてくれた……」

 

《あらぁ、自分でそれは裏切る前の前準備だって言ってたじゃないの、こんかいだってそれよ》

 

ドリーマーの言葉が染みる、確かにそうだ、そうかも知れない、今までのスペクターだったらそこで思考を止めて肯定してしまったかも知れない、だけどユノの言葉は、拒絶したが確かに彼女の心には刻まれていた、そして何より自分が受け取っておきながら此処で何もしなかったら

 

「としてもだ」

 

《あ?》

 

「だとしても!!!」

 

右手、ではなく左手に生成されたM82A1が吠え鉄血人形が数体ガラクタとなる、それを行ったスペクターは顔を俯かせていたが、少しして上げる、その眼に、顔に、戸惑いも何もなかった。

 

「確かにその可能性があるかも知れねぇ、だが、だとしても……受け取ったものを返すこともしねぇで、見て見ぬ振りなんかしたらアタシがもっと嫌いな畜生と同じになっちまう!!!」

 

《ガッカリだわ、やっぱり人間は駄目ね、死ね》

 

心から底冷えしそうなドリーマーのその一言で鉄血人形達は目の前のハイエンドモデルを敵と認識、殺さんがために行動を開始する。

 

相手はたった一人、敵は圧倒的数、だがスペクターは不敵に、少女らしからぬ男らしい笑みを浮かべ

 

「来いよデク共、テメェらにあのあったけぇものをくれた街を、笑ってられてるあの底抜けのバカを、やらせねぇからなぁ!!!!」

 

彼女はただ、羨ましかった、だからこそ、自分にはないそれを、そして自分にも分けてくれようとした彼女たちの為に戦う、殺るためじゃなく初めての守るために……




ここから明日文字数稼げとか中々に辛いことを明日の私に託す畜生の図。

スペクター編、明日完結(未定)
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