それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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雨降ってるからユノっちの出番はないです


とある雨の日のお話

少し前までは確かに晴れていたと言うはずの空、しかし現在は晴天だったはずの空は鳴りを潜めて今にも降り出しそうな雨雲に覆われている。

 

街の人々も降り出す前に帰ろうと足早に動き、その中には

 

「チッ、来た時は晴れてたってのに……急がねぇとびしょ濡れで帰ることになんぞコレ」

 

「すみません、天気の情報は流石に仕入れてませんでした、今後は集めておきます」

 

「いや、天気なんて急だし気にしなくても良いんだが。それよりも雑貨屋だ、どこにあんだ?」

 

ノアと案内のために手が空いてたからと連れてこられたG17の二人は今にも降り出しそうな空の下、あの日、自分が初めて感じた暖かい物をくれたあの老婆が店主をしているという雑貨屋に向かっていた。

 

要件はあの日のお礼と謝罪、あの時の自分は確かに全てに不信であり分けてくれたというのに何も言わずに逃げるように去ってしまったことが心残りだったのだ。

 

なので休日である今日を利用して街に来たのだが結果はコレ、相変わらず自分はついてねぇなと思いつつG17の案内で雑貨屋へと急ぐ

 

「にしても、あのババア何者なんだ?あん時のアタシなんて人一倍気配に気を配ってたってのに足音一つ気づけなかったぞ」

 

「本当に謎ですよね、情報部でも何度か収集したのですが雑貨屋を始めた年月まで空白なんですよ、この街で雑貨屋を開く以前が全くの空白、出てこないんです」

 

「空白?つうことはあれか、知られたくないことがあるってことか?いや、だとしてもFMG-9のなんだっけか、あれなら探れるんじゃねぇのか?」

 

『アレ』とはFMG-9が切り札にしているネクロノミコン、ノアの言う通りあれならばいかなるセキュリティの中に隠されていようと探り出せるはずである、なので今回もそれで探ればと思いそう聞いてみたのだがG17はゆっくりと首を振ってから

 

「ネクロノミコンとて、万能ではありません。確かにどんなセキュリティも素通りし情報を自由には探れますが今回はもっとそれ以前の話です」

 

「それ以前?」

 

「無いんですよ、探るべき場所が。どこを探れば良いのか、そこからもう既にまっさらなんです、まるで始めからそんな期間がないとばかりに……」

 

「んだよそれ、だが少なくても只者のババアじゃねぇぞ」

 

そこだけははっきり分かってるんですけどねと疲れたように返すG17、とここでポツンと額に雨粒が当たった。

 

思わず空を見れば降り出しそうな空模様から、振り始めた空模様に変わる天気、見なきゃ良かったと二人で後悔することになり、更に急ごうと動き出した刹那

 

カキィン!!

 

そんな甲高い音が辺りに響いた、G17が何事かと音の方を見ればノアがウィンチェスターが装備しているシールドを展開している姿、見れば銃弾が当たった跡がありそこで気付いた。

 

(襲撃!?)

 

「迷いなく頭、完全に殺しにかかってきやがったな……!」

 

悪態つきながら手に【Colt 9mm SMG】を生成、今の弾道から撃ってきたやつが居ると思われる方に銃口を向けて叫ぶ

 

「誰だか知んねぇが街中でぶっ放すたぁいい度胸だ、出てきな!!」

 

「今の一撃で決めるつもりだったのだけど……」

 

そろそろ本降りになるかという雨の中から現れたのは黒一色の、まるで葬祭業者のような服と大きな白い花の髪飾りを付けた女性、この雨の中で傘は差しておらず、手にはサプレッサーが付けられた一丁の【AUG】

 

間違いなく発砲してきたのはコイツだとノアはその女性を敵と断定し睨むが一方でG17はその特徴から彼女が何者なのかを分析、直ぐに答えにたどり着いた。

 

「葬儀屋、アリババの話じゃ誰にも今は雇われていないはずじゃ……」

 

「関係ねぇ、どうであれ撃ってきた、なりゃ敵だ。この街のためにもぶっ潰さなきゃなんねぇな」

 

「街のため?それはこっちの言葉よ、ハイエンドモデルが好き勝手歩いてられると街の人達が怯えてしまうわ」

 

あ?と流石にノアも何か可笑しいぞコレと思う、と此処で自分の姿を見てみる、自分の服装は動きやすく正直言えばデザインが好きだという理由で鉄血のハイエンドモデル【ハンター】の服を今の体格に合わせてもらったもの、一応ジャケットの背中にはG&Kのロゴは入れている、なのでいやまさかそんなバカなと思いながら

 

「なぁ、もしかしてアタシ勘違いされてねぇか?」

 

「少し待ってください葬儀屋、彼女はハイエンドモデルではありますが敵ではありませんよ!」

 

「彼女の言う通りだよ葬儀屋、それにしてもアンタがそんな勘違いで動くなんてねぇ」

 

この声とノアが振り向けば番傘と呼ばれる日本にあった傘を差してこちらに歩いてくるあの日の老婆がそこに居た。がノア的にはそれは問題じゃない、何より今叫ぶ言葉がある、それは

 

「ババア、直ぐにこっから逃げろ!!」

 

「相変わらずの口の悪さだね、それに安心しな、私が出てきた以上もう事態は収まったも同然なのよ、ねぇ葬儀屋?」

 

「……お久しぶりです【蜃気楼】それと勘違い、とは」

 

外で話すのもなんだしとりあえず私の店に来なさいな、この場の空気に似合わないほどの優しい声で3人は促されれば、とりあえずで着いていくことに、無論その間も葬儀屋とノアは互いに警戒し続けてはいるが

 

だがその警戒も店内に入り、一先ずとタオルが渡され体と頭を拭いてからの事情説明で

 

「そう、ごめんなさい。てっきり鉄血のハイエンドモデルが侵入したとばかり思ってしまったわ」

 

「ま、まぁそう反応が出ちまう以上しゃーないから別段良い……」

 

「ふぅ、一件落着ね、それよりもお嬢ちゃんこっち来な、ほらちゃんと拭けてないじゃない」

 

「それにしても葬儀屋と知り合いって何者なんですか店主」

 

まだ濡れているというのにタオルを返そうとしたノアを拭いている老婆にG17が思わず聞いてみる、が返ってきたのは優しくも妙に底冷えする笑顔、コレ以上聞くのはあまりに危険かと悟る、更に言えば蜃気楼という名称も出てきたがコレを元手に探るにもヤバいだろうなぁとも。

 

「それで葬儀屋、アンタが何も用事もなしにこの地区に来るわけ無いわよね、何しに来たんだい?」

 

「S09P基地、そこに配属されるようにと委員会から依頼されたのよ、二人はこの辺のよね、何か知らないかしら?」

 

「知ってるも何も……なぁ?」

 

「私達の所属基地ですよ、ついでに基地にもハイエンドモデルは居ますから撃たないで下さいね?」

 

冗談でしょ、そんな呟きが雑貨屋に響く。その日、基地に【AUG】が加わった、ファーストコンタクトこそ最悪だったがそれから数日経った今では

 

「また雨の日に散歩か?その雨の日の陽気さをあの能天気バカにも見習ってほしいもんだ」

 

「あら、そういう貴女もあまり好きではないでしょ?」

 

「たりめぇだ、好き好んで濡れたかねぇからな」

 

軽い言い合いをして笑い合うくらいにはなっていたとさ。




なんか知らないけどこの店主の老婆のイメージが隻狼のまぼろしお蝶に固まりつつある、というか固まった。

あとなぜか知らないが難産だった、やっぱリアルも雨の日だと駄目だな!

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