それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
彼女とのファーストコンタクトはユノとしてはとてもとても久しぶりな感覚に襲われるものだった。
「今日より配属された【C-SM】よ。私を迎えるなんて、唯の気まぐれじゃないよね?まっ、私に信用されたいって言うなら『部下』として頑張ってよ」
これには隣で聞いていた副官も軽く口元を引くつかせていた、対してユノはと言うと冒頭にも書いたように久しぶりだなぁと笑顔を浮かべていた。
何もこの基地の人形たちは最初から好意的、もしくは指揮官として認めているという者たちだけではなかった。中には本当にお前で大丈夫なのかや、子供が指揮官とかバカにしているのかとすら言われたことだってある、何だったら今自室でボトルシップを作っている416や、救護室で動物に囲まれて頬を限界まで緩ませているWA2000、今ではユノに甘いFALだってその一人である。
だがそんな彼女たちにもユノは怒ったり不貞腐れたりショックは、少し受ける日もあったが向き合い、任務を通して実力を見せ、日常の会話で解きほぐしていき今がある、なので今回だってそう
「うん、よろしくねシムスちゃんでいいかな?」
「いきなり愛称なんて攻めてくるわね、まぁ良いわよ……じゃあ案内頼める?」
「お主なぁ……」
「良いよおばあちゃん、じゃまずはカフェかな?」
呆れ気味にC-SMを静止しようとした副官をまぁまぁと止めてからカフェへと案内する、これにはC-SMも気が利くじゃないと喜んだ様子でそれを見てウンウンと笑顔で頷き、その日はカフェにてクリミナたちと会話、その態度に少々摩擦が生まれかけるがユノが気にして無いと風にしていればとりあえずは収まり一日が終わる。
ユノとしては恐らくは今までと同じタイプだろうと思っていた、のだが数日過ごしているとなにか違うのではと思い始める、と云うのも
「あ、指揮官、今日もジョギング?付き合うよ」
「う、うん、ありがと」
「別に、貴女誰かいないと限界までやるんでしょ、部下が倒れたなんて洒落にならないから」
と、ジョギングから始める朝の彼女の運動に付き合ったり、また別の日ではただ雑談をしに来たり、また別の日ではと、何かと用事を付けてはユノに接してくるのだ。
こうなると当初の考えから外れ始め、どういうことなんだろうと考え始める、コレではまるで只々構って欲しい感じの少女じゃないかと、思ったところでこれかなとなる。
C-SMという戦術人形はああいう態度を取るが根は寂しがり屋なのでは?という仮設である、なのでそれを確認しようということで彼女たちは今、いつもの街に来ていた。
「指揮官から誘って来るなんて良いことねウンウン」
「そう言えば街を案内してなかったなって思ってね、楽しんでくれると言いけど」
「あ、姉御!?姉御じゃございませんか!?」
へ?と振り向けば花屋の店員をしていた男性がC-SMを見てそんなふうに驚く、ユノは勿論驚きながらC-SMを見つめるが、当の本人は
「……おい、私が外に出てて誰かと一緒の時はそう呼ぶなって耳にタコが出来るほど言い聞かせてたよなぁ?」
「し、シムスちゃん?」
声の質が普段のそれではなかった、まるでチンピラ、いやそれよりももっと上、マフィアとかそんな感じのドスの利いた声に流石に怯むユノ。
無論、ただ聞いてただけで怯むをそれを直接受けた男は冷や汗をダラダラ流し
「も、申し訳ございません!!」
「謝って済むならケジメなんて要らねぇよなぁ?ああ!?」
「しし、シムスちゃん、落ち着いてなんか色々マズイからまずは落ち着いて!?」
彼女の言葉であ、やべっと言った感じにユノを見つめるC-SM、それから少しして大きくため息を一つついてから
「あ~、えっと、まぁその、良いからとりあえずお前は下がれ、まだ店番中だろ」
「へ、へい!」
「とりあえず……そこのカフェで話すよ」
という訳でカフェに来た二人は注文をして、それを待つ間にC-SMが自身について語り始める、自分は元々別の基地の所属であったということ、その時にこうして街に出てはチンピラたちを張り倒して『手下』或いは『手駒』として増やしてきてたこと、それがバレて前の基地から追い出された後も街で活動してたこと、結果としてグリフィンに強制送還されてのだが
「ウチのグループってさ、目立たないようにしろって私が言い聞かせたのもあってどいつもこいつも色々出来るようになって街中に溶け込めるようになってるの」
「さっきの花屋さんも?」
「そう、花屋だけじゃない、おもちゃ屋だったり屋台だったり、中には修理屋もしてる奴も居る、ともかく街に溶け込み活動する、それが私のグループのルール」
そして、どうにも彼女は慕われているようでこうして別地区の所属となった今も追ってきたのでならばとこの街の暗部と話をつけて治安維持のために活動しているらしい。
別に隠すことなかったのにと彼女は思っていたのだが、後日クリミナと街に出てるときにどうしてC-SMは彼らの存在を隠していたのかはっきり分かった。
「あ、もしかして姉御の指揮官さまでしょうか?」
「誰ですの?」
「大丈夫だよクリミナ、シムスちゃんのグループの人ですよね?」
見ればあの日に声を掛けてきた花屋の男性、だがただ挨拶をしに来たというわけでは無さそうだと思っていれば
「あの、姉御……そっちで上手くやれてますでしょうか?」
「やれてるよね、私を部下って呼ぶから少しだけ摩擦があったけど今じゃもう誰も気にしないし、楽しく話してる所も見るよ」
「まぁ、ユノを部下と呼んだ時は少々ムッとはしましたけどね」
それを伝えると、男性はあ~と頭を掻いてから、実はですねと物凄い小声でC-SMの『部下』呼びについての真相を語り始めた、曰くあれは
「姉御がそう呼ぶ相手は何も下に見ているというわけではないんですよ、何と言うべきでしょうかね、部下と呼ぶ相手は姉御が絶対に守り通す、そういう相手にだけ呼ぶ言葉なのですよ」
「え、ではユノを信頼される云々は」
「あれはまぁ挨拶みたいなもんですよ、姉御結構恥ずかしがり屋もあるので……「随分とお喋りな口だなぁ?ええ?」あ、姉御、いつの間にいらしてたんですか?」
絶対零度の声が男を襲った、油の切れたロボットのような動きで振り向けばそこには青筋を浮かべキレていますと分かる顔のC-SMの姿
「お前、誰がベラベラ喋っていいって言ったよ、ああ?」
「い、いやその、これは姉御が誤解されないようにですね!?」
「なら最後の情報はいらねぇよなぁ!?」
街中だからか、それともユノがそこに居るからか暴力的なことはしないが威圧増々で男性を怒るC-SM、だがそれが何と言うかユノには
「照れ隠し、かな?」
「かもしれませんわね、こう見ると可愛らしい子供みたいですわね」
後日、無慈悲にコレが知れ渡りMDRとFMG-9とG17を追い回すC-SMを目撃されたとか何とか。
なんか、C-SMちゃんはこんなキャラ良いのではという電波を拾ったんですよはい。