それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
此処は基地の幾つかある休憩室の一つ、夏仕様ということで居るだけで涼しくなるような装飾などがされたその部屋でぐっと伸びをする小さなシルエット。
「んっ~、ふぅ、此処まで事前準備で動いたのはあやつの結婚式以来じゃなぁ」
我らが副官、ナガンM1895である、指揮官にはもう悟られてはいるが未だ内容は伏せている小さなお祭り事が遂に今日に迫りその最終チェックと準備で半日以上を費やし今やっと休憩を取りに来たのだ。
休憩とは言っているが手には大きめなタブレットとポケットには何時でも出れるようにとワイヤレスヘッドセットと接続された端末を忍び込ませており、いつでも不測の事態や問題が起きた時に対応できるようにはしている。
「しかし、そうか……この基地が始まり、もうこんなに経っておったか。この短い期間に濃すぎじゃろうて」
懐かしむように呟く副官、彼女の言葉通りこの基地が始まりそして今日に至るまで様々なことがあった、楽しいことも、笑えることも、辛いことも、思わず聞かなければよかったという現実もあった。
だが今に思えば、どれも欠けていてはきっとこの基地は、そしてユノは存在しなかっただろう、そう言えるほど貴重な経験とも言えることを体験し続けた、そしてそれはユノにだけではない、この基地全体もお陰で成長した、更に言えば
「わしも、まだまだ教わることが多いと実感させられたのじゃ」
小さく息を吐いて麦茶を一口飲んで、わしもまだまだヒヨッコじゃったかと笑いながら呟いた所で休憩室の扉が開かれ、入ってきたのは思えば人形を除けば一番最初の人間の職員であるカリーナ、そしてこの基地初めての情報部のFMG-9とユノを追って執念とも言える催促でこの基地に来たユノのメイドであるG36、何とも珍しい組み合わせで来た三人に副官は立ち上がり麦茶を淹れながら
「どうした、珍しい組み合わせに驚いたぞ」
「さっきまで私達で色々準備してましたからねって副官、わざわざ淹れなくても私が淹れましたのに」
「いえ、その手の仕事は私のでございます」
「良いから座れ、休憩室に来たのに仕事してどうするののじゃ」
因みにFMG-9はそそくさと座り麦茶を受け取っていたりする、という事で二人も座り麦茶を受け取ってから副官も先程の場所に座る。
「して、準備の方はどうじゃ?」
「バッチリですわ、今すぐにでも問題ありませんわ」
「いや、流石に今すぐは、それにノアもまだ哨戒から帰ってきてませんし」
「お嬢様も、まだ仕事が少し残っているようでしたので、時間通りがベストですよ」
それを聞いて満足気に頷く副官、元より彼女らならば問題なく終わらせるだろうと信じてはいたがそれでも言葉で聞くのは安心するというものである。
なのでそれからの会話はなんてことのない雑談、しかしこのメンバーで雑談と言っても確かに普通のものも含まれるが中には
「そう言えば、向こうの情報部から来たのですがD08地区に新たに施設を作るらしいですよ」
「施設をじゃと?あ、いや、そうか、あそこの基地は確か」
「身重な方々が増えてますわね、この間ペーシャがまたペンを折ってたので恐らく新たに妊娠が発覚した人形が現れたかと」
「あの、それってまた微妙な顔したペーシャさんがペンを買いに来るのですかね?」
因みに今回の報告で向こうの医務長たるカラビーナが妊娠したと聞いて二本折った模様、そんな他の基地の話も含まれた所で副官は先程の思い出話を切り出してきた
「しかし、この短い期間にこの基地が此処まで立派に、そして賑やかになるとは思わんかったな」
「まぁ、始まった当時は私と副官、それとFMG-9とIDW、当時はまだPPKだったクリミナと本当に少ない人数でしたわね」
「いやぁ、とんでもねぇハズレ基地に配属されたなコレって失礼ながら思っちゃいましたよね、まぁその後に指揮官の過去を偶々情報で見ちゃって何が何でもこの基地と指揮官は守らないとなってなったんですけど」
そしてこの基地が先ず行ったのは戦力の増強、当時はまだ今ほどではなかったがそれでも強力な眼の能力を活かした指揮で任務をこなし、作戦エリアで放棄または帰るべき司令部を失った人形たちを集めて回った。
時には本社から問題がある人形も回されたがユノは彼女らにもキチンと向き合い、結果として本社が驚く程の人形とのコミュニケーション能力を開花、この基地が気づけば重要施設のような扱いが始まった。ユノには黙って暗部が生まれたり、スチェッキン達が各種方面にいざというときの備えのために繋がりを作り始めたのもこの辺りである。
戦闘方面ではCUBE作戦のような大きな作戦にも参加した、ウサギ狩り作戦の際にはこの基地では始めて
「指揮官さまが倒れた時は本当に駄目かと思いましたわ……」
「あったのう、その下手人であるイントゥルーダー、この基地が一番追い込まれたハイエンドモデルじゃな……わしも危うく殺られかけた」
「ボスも副官もやられ、あの時ほど肝が冷えた時期はありませんでしたよ」
「ですがもっと驚いたのはイントゥルーダーにお嬢様のお母様、レイラ様の脳が使われていたことですね」
だが彼女たちはそれを乗り越えた、その後も様々な困難や真実が判明がこの基地を、ユノ達を襲ったがどれも全員で乗り越え、繋がりも増えていき
「お蔭で指揮官は、ユノは普通を得た、姉妹を得た、娘を、伴侶を得た……幸せを、色鮮やかな思い出を得続けておる」
「そしてこれからもボスには、いや、今度からはノアにもですかね、あれ、G36的には彼女は?」
「え、お嬢様ですけど?何を言っているのですか、お嬢様の双子の妹様、ならば彼女も私にとってはお嬢様には違いありません」
「流石メイド、即答ですわ、勿論妹ですよ私はええ、お姉ちゃんって呼んでくれないかなぁ」
真顔で即答し何故か語りだしたG36とニコニコ笑顔で今度抱きしめたいなぁとか言い出すカリーナに副官とFMG-9は引き笑いをしながら麦茶を飲む、とても冷えていた筈のそれは気づけばぬるくなっていた……そして、その日の夕方、ユノとノアは食堂に呼ばれ向かっていた。
「夕食には、少し早いよね?」
「アタシは腹減ってるから良いんだけどよ、何だって他の奴らの気配が感じられねぇんだ?」
「うーん、まぁ食堂行けば分かるんじゃないかなっとと、じゃあ入ろうか」
「いやいや、なんで扉閉まってんだよいつも開いてる、っておい少しは警戒を持てよ底無し能天気バカ!?」
彼女の静止虚しくユノが何故か閉まっている食堂の扉を開けて薄暗い室内に入った瞬間
パーン!!!
という複数回の乾いた炸裂音が二人を迎えた
次回、一周年記念!!
てかG36もいよいよやべーやつの片鱗見せ始めたな?