それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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と占い師と猫


ある日の休みの整備士とマスター

カランカラン、いつものようにカフェの扉を開けたのはFMG-9、何か夜遅くまで作業でもしていたのかその顔は若干眠そうであり、実際に眠い。

 

なのでカフェのコーヒーでも飲んで眠気を飛ばすかぁと来たのである、そしてそんな彼女を出迎えたのは

 

「いらっしゃいませ~!お一人ですか?ならカウンター席にどうぞ!」

 

「あ~はいはい、元気ですねPP-90は……ふあぁ~」

 

「随分と眠そうですねFMG、ご注文はその様子だとコーヒーですかね?」

 

「うい、とびっきり濃いの頼みますよP……38?」

 

そこで気付いた、あれここカフェだよなと、なのに先程から聴こえる声も返ってくる声も普段のマスターのスプリングフィールドではなくて、この基地のアイドルユニット『スリーピース』の面々、しかもカウンターに立っているのはこのカフェの制服に身を包んだP38

 

どういうことだと思うFMG-9、しかもP38の姿もそうだがコーヒーを淹れている姿も妙に様になっているところから彼女は今日が初めてではないということが伺える、が

 

「(いや、そうじゃない)マスターは?」

 

「あれ、聞いてませんか?マスターなら今朝からヴァニラさんと出かけましたよ?」

 

「ふぅん、相棒とねぇ……相棒と!!!???」

 

「いや、驚くことでもないですよね?あの二人もうそういう仲なんですし」

 

P38からのド正論な言葉にうぐっと黙るFMG-9、だが待って欲しい、あの告白後でもヘタレズルズルカップルだった二人が自分の情報網に引っ掛かることもなくデートに出掛けるなんてあり得るのかと。

 

いや、ない(失礼)間違いなくあの二人がそんな素振りを見せたというのならば何かしら情報が入るはずだと、だが事実として今日まで二人が出掛けるなんて話を聞いたことはなかった、コレはどういうことなのだろうか。

 

「あの、本当に何も聞いてないのですか?」

 

「ええ、全く」

 

「あれ?でもIDWがFMG-9には自分が話しておくからゆっくりしてくるにゃとか言ってませんでした?」

 

線が繋がった、いや、と言うかだとすればあのクソ猫はどういった方法で自分から隠し通していたのかという新たな疑問が浮かぶがそんな事はどうでも良かった、結局の所FMG-9はIDWに一杯食わされたのである。

 

「あんの、クソ猫ォォォォォォ!!!!」

 

「にゃにゃにゃ、今頃FMG-9が叫んでる頃にゃ」

 

叫ばれている当の本人は、現在グリフィン本部近くにある大きな街に来ていた、そこにはD地区のとはまた違うが複合デパートなるものが存在し、それなりの賑わいを見せている。

 

そんな所に彼女、だけではなく

 

「で、オメェはなんで着いてきたにゃ」

 

「いや、ほら、友人の初めてのデートだ、何か無いように自分たちが警戒するのはありだろ?」

 

物凄くキョドっている声で答えたのはK5、無論服装はいつもの占い師スタイルである、始めはIDWだけの予定だったのだがどこで目ざとく聞きつけたのか彼女も着いてきたのだ。

 

まぁ一応納得しておいてやるにゃとジト目で答えてから、今回の目的である二人に視線を戻す、未だ手を握るのにも緊張する素振りを見せる二人、まぁヴァニラとスプリングフィールドなのだが。

 

「えっと、まずは何見ようか?」

 

「へ?あ、よ、予定通り服屋で大丈夫ですよ?」

 

じゃ、じゃあ行こうかと動き出すのに合わせて尾行組も動く、どうやら今回の目的は服らしい、言うほど困ってたかと思ったがヴァニラではなくてスプリングフィールドのだとすればまぁ納得である。

 

何も人形である彼女たちはいつも着ている服しか着ないのかと言えばそうではない、別に普通にお洒落だってする、あれが一番本人的には動きやすいと言うだけなのだ。

 

「うーん、あの様子だと服屋だけかな?」

 

「他にどこか行くと思えば昼飯くらいにゃ(ズズズ)」

 

「何飲んでるんだい?」

 

「そこで売ってたタピオカミルクティー、割と美味いにゃ、食感が楽しいのがプラスにゃ」

 

彼女的には既に飽き始めている模様、じゃあなんでと思われそうだが最初はおもしろそう、いや絶対に面白くなると来てみたのだが特に大きな進展が無さそうな気がし始めている。

 

いや、本人たち的には進んでいる、それはIDWにも理解できている、が基準が基地の現状唯一の夫婦であるヴァルサー夫婦のデートなのでどうにも面白みがないのだ。無論そんな考えは失礼だとは思っているし女二人ということで面倒に巻き込まれないとも限らないので二人が帰るまでは見守っているつもりだが

 

だがそれはあくまでIDWはという話、K5はと言うと

 

「じ、じれったいねあれ」

 

「あ、漸く理解したかにゃ?」

 

「いや、もうペアルックさっさと買えばいいじゃないか、何恥ずかしがってんだよ買えよ」

 

「落ち着け、キャラが死んでるにゃ」

 

同じ柄のセーター、それは変わるそろそろ暑い時期も終わり寒くなり出すのだから、そして同じ柄というのはつまりそういうことだ、だがあの二人それを手に持って何やら話し続けている。

 

「似合うわよ、え、私?いや、ほらスプリングだから似合うのよ?」

 

「な、何言ってるんですか、ヴァニラさんこそコレが似合います、ええ、私はほらもう少し大人しい感じので……」

 

「いやいやいや、何引っ込んでるのよ、着てみなって」

 

「じゃ、じゃあヴァニラさんも着るなら買います」

 

「え、あ、えっと……」

 

頷いて大人しくレジに通せよ(にゃ)心が一つになった瞬間である、結局その店で長々と熟考という名の踏ん切りが付くまで大体数十分、店員の視線もどこか優しいものに変わった辺りで漸く、本当に漸く

 

「わ、分かった、買うわ、だからスプリングも着るのよ?」

 

「え、ええ、勿論着ます、はい」

 

この間、二人は交代で監視していたがIDWはこのデパートの屋台で売られている飲み物を制覇寸前まで行き、K5は暇つぶしの占いで危うく行列ができてバレそうになったりもしたがその後は特に何かある様子もなく、アクセサリーショップや別の服屋、もしくは食事のために少しオシャレなレストランに入ったりと中々に満喫している二人の様子に

 

「ふぅ、随分とのんびりだにゃぁ」

 

「思ったけどさ、指揮官とクリミナが異常に早すぎたって話無いかな?」

 

「……あ~、そりゃ言えてるかもにゃ」

 

それを踏まえてデート中の二人を見る、ソフトクリームを食べながら歩いてる姿、時にはテレビで見たような食べ比べを勇気出して行ったスプリングフィールドに驚くヴァニラを見て

 

「幸せって、良いもんだにゃ」

 

「そうだね」

 

だがセーターの下りは擁護できねぇにゃ、どこかで買ってきたミルクティーを飲みながらIDWは静かに思うのであった。




因みにP38のコーヒーはスプリングフィールドから合格点を貰えるほどらしい

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