それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
思い出すのは本当に少し前の自分、まだ『暖かいもの』を知らなかったあの日の自分、今の彼女にように世界の闇しか知らず、冷たいものしか知らず、そして
「アタシも、手酷く裏切られてたさ……裏切られて、全部、失った」
善意も悪意も知らなかった自分、ただひたすらに『妹達』を救いたいがために縋ったあの手、その人物の悪意ある笑顔に気付けずに縋った結果、彼女は生きる目的だった妹達を全員失った。
妹達を、生きる目的を失った彼女はその後も人の闇に触れながら、時に自分がそういった事をしながらただ惰性に生きていた彼女に新たな火を焚べたのがエルダーブレインと鉄血側のドリーマーだった、彼女らはノアに今のように自在に能力を扱えるように身体を弄くり、そして
「何も知らずに、ただのうのうと生きている君の姉がいる、そう教えられてそいつを、あの能天気バカを殺そうとして……殺せなかった」
「なぜ?」
少女のごもっともな疑問にノアは右手を開いて、懐かしむように目を瞑りあの日を思い出す、いよいよユノを殺すと決めて行動を決めたあの日、あの老婆が差し出してくれたサンドイッチとミルクを
「こんな世界でもあったけぇモノがあるって、教えられてからかな」
純粋な優しさに触れた、次に自分を殺そうとしたのに救おうと手を差し伸べた少女が居た、それらを振り払ってしまったのに死に瀕していたノアに、自分とは全く関わりのない赤の他人である彼女たちはユノの願いだけで救ってくれた。
そこで彼女は理解した、この世界は確かに汚いものやどうしようもない闇がたくさん転がっている、だがそんな中でも
「あったけぇ奴らが居る、こんなアタシにも手を差し伸べて、繋いだら決して離そうとしないお節介焼きがいる……」
ああ、そうだ、自分もまた繋いだ手に生かされ光を、日溜まりを貰った存在だったなと改めて確認する、そして同時に自分は気に食わねぇと言った少女の瞳、だがよく考えれば違う、自分は気に食わなくて話しかけたんだじゃない
放っておけないと思ってしまったから声を掛けたんだと、それを理解すれば思わずため息を吐いてしまう
(どうやら、アタシもあの能天気バカと同類らしい)
「急に溜息吐かれるとちょっと気分悪いです」
「わりぃ、散々バカだのなんだの言ってたやつに自分も大して変わんねぇと気付かされただけだ」
なにそれと言う感じの表情でノアを見つめる少女にどう答えたもんかなぁと思っていると通信機にコールが入り、一言断ってから複合ヘッドギアを生成、通信を繋げる。
「分かったか?」
《うん、今マップを繋げるね、見えるかな?コレがアジトのマップ、それで……》
ヘッドギアのバイザー部分にアジトのマップが表示される、ノアの予想通り思ってよりは大きな建物ではなく、だが人形と思われる青い点が小部屋ごとに幾つもあり、最後には目的のものと思われる赤い点が上階の一部屋に表示される。
「この赤い点がジャマー装置か、一つだけかって待て、テメェどうやってコレを判別した?」
その指摘にユノのウッと言う言葉が返ってくる、それから少しの沈黙の後
《と、とにかく今は作戦が先、で見ての通りジャマーは一番上、なのでアリババとメジェドでこのアジトの電子部分は全て麻痺させます》
「まぁ今は聞かねぇでおく、それでその間にアタシがぶっ壊す、単純で分かりやすいじゃねぇか」
《単独行動だから危険には変わりないけどね~》
オモイカネの言葉に確かに自分は少し慢心してるかもしれないと気を引き締めたノアは少し待っててくれと伝えてから少女に向き合い、真剣な表情で
「ということだ、悪いがここで待っててくれ」
「待っててって、まるで迎えに来るみたいな言い方ですよ」
「たりめぇだ、迎えに来るんだからよ。それとちょい失礼」
迎えに来る、その言葉に驚愕の表情を浮かべようとした少女だったがノアが自分の顔を近づけてきたことに更に驚いていると右耳に何かを付けられた感触がしてから彼女は離れて
「よし、今着けたのは通信機だ、何かあったらイチイバルで呼んでくれ。一応は髪に隠れてっから簡単にはバレねぇだろ、それとほい、簡単なマントだが羽織っとけ」
そんな感じに言いたいことだけを言ってからノアは立ち上がりサプレッサーを装着したSOCOMを生成、スタンバイに入る前に最後に改めて少女を見て
「多分、オメェはアタシ以上に世界の闇に触れてたと思う、だがな、オメェの知らないひだまりは、掌は確かにあるんだ、それを後で教えてやるよ、だからここで待ってろ」
「……そんなキレイな言葉を今更信じろっていうのですか?」
「ああ、信じろ、だから先ずはちゃんと向かいに来てやる……こちらイチイバル、スタンバイOKだ」
少女はその時に初めて目の前のノアから何かを感じた、自分と同じだと思っていたはずの少女からの言葉にもうやめようと思っていた感情が溢れてきた、だからだろう、本当に小さな声で呟いてしまった
「本当に、信じていいの?」
相手に聞こえたかなんてどうでも良かった呟きと同時にアジト内全ての電源とセキュリティが落とされ唯でさえ暗かった部屋が何も見えないほどに暗くなったがその寸前に少女は確かに見た、ノアが自信に満ちた瞳で自分を見て頷いたことを。
少女の弱々しくも初めて吐いた本心からの言葉に頷いたノアは合図と同時に扉を蹴り破り、出ると同時に暗視モードを起動して一人を射殺して前進、続けざまに異変を感じたのかこちらに来ていた男に飛び込み、太ももで顔を挟んだまま思いっきり首を捻り殺す。
はっきり言えば何ともあっけないという感じにノアはアジトを突き進む、時より聴こえる女性の声についつい足が止まりそうになるが先ずはジャマーが優先だと言い聞かせてヘッドギアのバイザーが示す場所へと敵を排除しながら突き進み
「イチイバルだ、目的の部屋前、中に誰か居るか分かるか?」
《この部屋だけは独立しててカメラもないみたいでアリババ達も確認できないって……もしかしたら待ち伏せされてるかも、せめて私が人間も検知できれば》
いや、何恐ろしいこと言ってんだ能天気バカとツッコミを入れてからとりあえず扉に耳を近づけるが防音がしっかりされているのか全く聴こえない、だがこのままでは埒が明かねぇしとノアは考えてから
「ぶち破って速攻で制圧する」
《ねぇ、お宅の妹がメチャクチャなこと言い出してるんだけど?》
《イチイバル!?少しは危機感とか持って!?待ち伏せとかされとかされてるかもって私言わなかった!?》
「うるせぇな、此処にジャマーがあるんならどっちにしろ突入しかねぇんだよ、いくぞ!!」
え、ちょ!?そんなユノの悲鳴はスルーして扉を蹴破り中に入ったノアが先ず見たのは大男が女性【M1ガーランド】を今正に犯そうとしている場面、しかもガーランドの左薬指を見たノアは舌打ちをしながら即座にゴム弾装填のウィンチェスターを生成、一発、二発、三発と打ち込んで気絶させたのを確認してから、続けて部屋の奥に鎮座していたジャマーに向かってウィンチェスターを分解してからNTW-20を生成と同時に連射、装置がスパークし煙を吹いたのを確認してから
「……ターゲット沈黙、ついでに組織のトップも眠らせたぞ」
《こちらアリババ、確認できました、どうやらアジト内で人形達の反撃が始まってますね》
ウワァ元気なこってと思いもよらなかった報告に苦笑いを浮かべるが直ぐ側のガーランドも同じように部屋から身を隠すものを取り出して動こうとしてるのを見てタフすぎんだろオメェらと顔を引き攣らせる。
《じゃあ彼女たちを一時的にナデシコの指揮下へ、イチイバルは……》
《イチイバル!たすけっ》
「おい、何があった!?」
少女の悲鳴とともに途切れた通信、ノアと少女、この二人の出会いの物語はいよいよ終わりへと加速していく。
ノアちゃんちょっと脳筋すぎひん?
あ、多分恐らくきっと明日で終わりますはい。