それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
あの少女からの救援の通信、だがそれは途中で途切れてしまいノアが何度も何度も再度繋げてみようとするが
「……クソ、繋がるが出ねぇ!おい、ナデシコ、そっちからアイツの場所探れねぇか!?」
《やってみる!》
直様ユノがアジト内の人形の反応から彼女の位置を割り当てようとするが、ここで問題が発生する、今このアジトではそこらで人形たちが行動を開始しこれがもしこの基地の所属とかだったら分かりやすくなるのだがそうではなく、彼女の指示を受けているとは言えその殆どが味方だという大雑把な反応しか表示されない。
つまり、今のユノとは言えそこからたった一人を見つけるとなると困難となる、ノアが囚われていた場所を見れば良いのではと思われそうなのだが
《居ない……何処に行ったの?》
「あんのバカ、動くなっていっただろうが!」
《なにか動かざる負えない事態が起きたと見るべきだろうね、どうする?》
《何か他に目印になるようなものがあれば……あっ!》
これならと何かを閃いたユノはオモイカネに一旦他の人形達の指揮を任せて意識を更に集中させる、拾うのは現状において彼女しか所持してないと思われるモノ、あの時ノアが付けてあげた唯一の品、そして
《見つけた、移動してる……いや、他にも人形の反応があって連れ去られてる、それにここ隠し通路だ!》
「生き残りが尻尾巻いて逃げようってか、場所をよこせ!」
バイザーに表示されたのは確かにアジトのマップ外の場所、だが確かに幾つかの青い点とその先頭にノアが渡した通信機の反応を示す黄色い点、悠長に追うには距離がある、だがこのまま逃がすわけにも、何よりも迎えに行くと約束した、どうすべきかと思っているとオモイカネが
《一つあるよ、そりゃもう素晴らしいルートがね!》
「なんだ!?」
笑いながら表示されたルート、矢印が記したそれを見てノアが釣られて笑い、ユノがえぇと困惑する、それはいうなれば『最速』で『最短』で『一直線』の道標、ひとしきり笑ってからノアは
「んじゃま、迎えに行こうかね!!」
《行け、ヒーロー!》
《ちょちょちょ!?ぜ、全部隊に通達、今から表示するルートに居る人形たちを退避させて!?》
そんな中、あの少女はノアが襲撃したあの店のオーナーに連れられ数体の人形達とともに隠し通路を歩かされていた、無論人形達は抵抗しようとしたがどうやら予備機とも言える例のジャマーがあったようで全員無力化されている。
少女もあの部屋でじっとしていたのだがオーナーのお気に入りである彼女を連れて行かないわけもなく、咄嗟にノアを呼ぼうと通信を繋げた時に思いっきり殴られその際に通信機は受信はできるが送信ができないという故障をしてしまった。
「クソが、まさかあの女自体が罠とか思うかよ!」
だがこの隠し通路まではバレてなくて助かったぜと笑いながら自身の後ろ、お気に入りと数体の人形を見る、数体の方は少し前に部隊ごと捕らえた人形であり誓約していた部隊長の人形は組織のリーダーに持っていかれたが他は彼が回収できた、あとはコイツラを売り払ってまた再起を図ろうという魂胆だろう。
少女はそれを理解していた、このままでは自分はまた冷たい世界に売られてしまうと、今までであれば別に無関心で別に構わないと思っていた、いや、今でも心の一部はそう思っている、迎えに来ると言ったあの少女は来なかった、来れなかった、だから諦めろと告げてくる。
(いやだ、いやだ、いやだ!)
それは初めての否定だった、このまま冷たい世界に行きたくないという否定、脳裏に浮かぶのはあの少女、勝ち気で、でも自分と同じ瞳をしていながら輝く笑顔で、そして自信に満ちた瞳で迎えに来ると言ってくれた少女。多分、今頃自分を探していてくれてると何故か信じられる彼女に、また会いたいと心が初めて前を向いて
気付けば体が動いていた、狙いは完全に油断している男の右手、それに握られている予備機の小型ジャマー、だが現実は非情であり不意打ちだったそれに男は反応して振り向き少女の右手を逆に掴んで持ち上げる。
「おっと、残念だったなぁ、にしても急に抵抗してくたぁ覚悟できてんだろうな!?」
「くっう、に、逃げて!!!」
だが少女はすぐに思考を切り替える、確かに成功すればとかも考えたがこうなってしまってはどうすることも出来ないと判断したと同時に同じく連れてこられた彼女たちにそう叫んだ、そうすれば部隊員として戦っていた彼女たちは言葉にすぐにとは行かないが反応して走り出したのを確認すれば安心したような顔をして
「テメェ……このクソアマが!!」
「きゃっ!?」
掴まれたまま投げられた少女は地面に叩きつけられる、元々戦術人形でも何でも無い少女が受け身とかを取れるわけもなく背中を強く打ち悶えるが何とか逃げようと動こうとして、真横を銃弾が掠めた
「ヒッ!?」
見れば銃を構えた男の姿、その銃口は自分の頭部に向けられ、この距離ならば外すこともない、少女は目を逸らすことも出来ずに銃口を見つめ、だがこのままでは訪れる自身の死を前にして彼女は諦めなかった、なぜ?
それは突如、響いた爆砕音が全ての答えだろう、確かにノアから渡された通信機は送信できなくなっている、だが受信は先程も言ったが可能、なのでノアの何度も叫ぶ声を目印に少女は動いていたのだ、そして
「んだこのおっ!?」
「だらっしゃぁぁぁぁあああああ!!!!」
戸惑う男の真横の壁からノアが少女らしからぬ雄叫びとともにM20の砲身を男にぶつけながら現れ、そのまま少女の前に立つ、その背中は今までの何よりも大きく、そして安心できるものだった。
「よう、迎えに来たぞ」
「遅い、ですよ」
それはワリぃなと笑い、彼女は少し待ってろと言ってから男の方に歩き出す、向こうは漸くダメージから立ち直るもスラスター込みでM20をぶつけられたとなればろくに動けるわけもなく、向かってくるノアから逃げれることも出来ずに先ず足を踏み砕かれ、そのままデザートイーグルの銃口が彼を迎える。
「ま、待て!?頼む、命だけは見逃してくれ、俺に出来ることなら何だってやるから……!!」
「この期に及んで命乞いたぁ、オメェある意味大物だわ……まぁ、何だってやるって言ったよな?」
「ああ、そうだ、だから」
「じゃあちょっと地獄の底で閻魔様に土下座してきてくれよ」
彼の最後を語る必要もないだろう、こうしてノアの初めてとも言える最規模作戦は終わりを告げ、今は後処理と撤退準備中、周りの人形達が本社か、本来の基地へと帰る手筈を進めている中、ノアは少女の側に居た、と言うよりも
「……ありがとうございます」
「あ?ああ、別に、それに言っただろ、迎えに行くって」
「そうやって約束して、ちゃんと果たされたのは今日が初めてです」
彼女はノアから離れようとしなかった、というのが正しいだろう、今現状で心から信頼を寄せているのは彼女しか居ないのだから当然といえば当然なのだが。
その間にユノはあの少女が何処の所属なのか等をヘリアンに聞いてみるがどうやら製造元からして真っ当ではなかったようで、このままでは一旦IOPに送り返されてしまうらしい、という事でノアにそれを話した所
「じゃあ簡単だ、アタシの所に来い」
「え?」
《うんうん、それが良いよね、勿論歓迎するよ~》
「てことだ、ああ、安心しろ、この能天気バカはそこらの人間よりも信頼度は高いからよ」
そこは能天気バカって紹介するところじゃないよねとユノが呟こうとするがオモイカネが今良いところだから少し静かにしてようね~と通信が一時的に切られ、そのやり取りに何やってんだアイツラと思いつつ未だ呆けている少女に
「あれか、まだ怖いか?」
「……はい、いや、さっきのやり取りで多分大丈夫だろうとは思ったのですが、それでも」
「だろうな、そんなに簡単に考えとか変えられるわきゃねぇよ、アタシだって偶にコレが夢なんじゃねぇかって思うし」
そこまで言ってからノアは少し考え込む、どうにかしてもう少しだけこの少女を安心させることは出来ないだろうかと、だが自分はそんなに口が上手い方ではない、それを理解してるのでならばいっそと取った選択、それがこの二人の今後を決めた。
「なら、アタシを信じろ、オメェが不安になるってんなら側に居続けてやる、少なくてもアタシはオメェを絶対に裏切らねぇし、能天気バカの言葉だが繋いだ手を離すこともしねぇ、これでどうだ?」
真っ直ぐな言葉だった、しかもその時のノアの顔は少女らしくだが何処と無く男勝りな笑顔でそう告げた、後にそれを遠巻きに見ていたヤークトのヤベーやつのイングラムが語った、ここまでの経緯とかを考えればあれはトドメだと。
少なくとも、少女にはそう響いたのは確かだろう、証拠として少女は顔を赤くしてその言葉に頷くだけの返事を返すことしか出来なかった、まぁ詰まるところ少女はめでたくノアという少女に惚れたということである。
そんなこんながありながら少女はP基地へと迎えられ、かくして鳥カゴに囚われていた小鳥は、空を得た。
残業続きで疲労困憊だけど書けるだろうとか思ったらこの無駄な長さだよおい。
あ、Sessionは終わったけど多分数話はまだ少女関連だよ、ほら名前とかその後とか色々あるし?