それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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クフェアちゃんのなんてこと無い一日


母性と恋慕と少しの独占欲

慎重に小さなスプーンに粉状の餌を掬い、そっと水面に広げるように落とせば色鮮やかな魚達がそれを食べようと群がる。

 

今日もみんな元気そうですねとその様子を見ながら満足気に頷く少女は『クフェア』そしてここはアーキテクトが準備していたあのアクアリウムの部屋であり、つい最近D地区のドリーマーから送られてきた熱帯魚たちが十二分の大きさの水槽で各々が生き生きと泳ぐ姿と雰囲気に合うように調整された環境音が合わさりリラックスしたいや、少し気持ちを落ち着けたいという者たちに好評の空間である。

 

そして、勿論なのだがまだ数が少ないというもの手伝い、ユノ独特のネーミングを付けられている、例えば今クフェアが見つめているカクレクマノミ

 

「お前は今日も元気が有り余ってる感じがするね【プチトマト】」

 

似てるよね!名付けた時の輝かしい笑顔のユノを思い出すもカクレクマノミの色合いから見てトマトじゃないと思うのですがと言いたかったクフェア、だがその時の彼女にそんな勇気があるわけもなく、隣で聞いていたノアが無いだろその名前はとツッコムも彼女を止めれるわけでもなくこの名前が付けられた。

 

他にも名付けられた個体は存在する、他のカクレクマノミにも【オレンジ】ナンヨウハギには【ブルーベリー】や【グレープ】多分、その時はフルーツな気分だったのだろうと勝手に解釈する程に果実の名前が多かったなと思い出せばフフッと笑ってしまう。

 

こうして彼女はアクアリウムでの餌やりと鑑賞を終えれば部屋を出て次の目的地に向かう、今日はそんな彼女、ノアという陽の光によって日だまりに来れた少女のお話

 

「あ、クフェアじゃない、おはよう」

 

目的地に向かう途中、声を掛けられ振り向けばそこにはキャリコの姿、どうやら今日は出撃なしの非番警備らしい、クフェアとは彼女がここに来てからキャリコから話しかけてから交流が始まった少女であり、今ではこうして挨拶をして時にはお茶会などもするくらいの仲になっている。

 

「おはようございます、キャリコさん」

 

「もう、さん付けはいらないってば、まぁクフェアらしいけどさ」

 

「あはは、つい癖で……」

 

「ま、長らくそれで暮らしてたんだから仕方ないか」

 

これから慣れていけばいいわよという感じにキャリコは笑顔で伝える、このように何かとキャリコはクフェアを気にかけるのだがその理由としては、彼女曰く何となしに放ってはおけないということらしい。

 

クフェアもそんな彼女の気遣いには感謝していたりする、お蔭で基地にも少し早く馴染めたり、ノア以外にもこうして話せる相手ができたからだ、例えばキャリコと別れたあと更に歩を進め目的地に付けばそこに居る二人

 

「おはようございます、シャフトちゃん、ネゲブさん」

 

「おはよう、今日もよろしくね」

 

「おはようございます、クフェアさん」

 

この基地の家事担当、ネゲブとシャフトである、戦術人形としてこの基地に来れた彼女だが作戦に出ることはないのでと始めたのが二人の手伝い、因みに紹介してのは件のキャリコだったりする、ではノアはと言うと

 

『え、あ~、まぁお前は今まで不当に扱われてたんだ、別段気にして働くこたぁ無いんじゃねぇのか?』

 

ありがたいが流石にそれはどうなのでしょうかとなるのがクフェアなので今こうして何らかの形で働いているというのが落ち着くらしい、なので二人の手伝い以外にも今日も今日とてこの大きい基地を縦横無尽に掃除に動き、時に洗濯、時にゴミ出し、時にペットたちのお世話と、シャフトと似た感じの生活をしている。

 

お蔭でキャリコに次いでシャフトとも仲良くなれている、聞けば向こうも自分と似た環境で過ごしていたということもあり意気投合、その手の話には触れないで本当に何でもない雑談を、小休憩とかにするのがまた楽しみの一つとなっている。

 

「あの、クフェアさん」

 

そんないつもの雑談の時間、急にシャフトが遠慮気味に彼女を呼ぶのでどうしたのかと聞き返せば、少しだけ迷った感じに視線を動かしてから

 

「クフェアさんにとって、ノアさんってどんな人なのですか?」

 

始めはこの娘にしては妙に攻めた質問ですねと驚くクフェアだったが、ふとシャフトは未だにノアの纏う雰囲気が怖いらしいということを聞いたのを思い出して、あぁと理解した、どうやらノアという人物をもう少し理解して歩み寄りたいのかもしれないと。

 

「そうですね、確かに少し怖いかなってところもあります、でもノアは凄くいい人ですよ」

 

「うん、私が困ってたりすると声を掛けてくれます……ただ、私が怖がっちゃいますけど」

 

「ノアは言葉が少し乱暴ですからね、そこは少し治したほうが良いかなって思わなくはないです」

 

因みに言うと矯正はできない、もはや自分という部分にまであの話し方になっているので今更治せと言われてもというのがノアの本音だったりする、しかしこのままではなぁと思ったクフェアは自分しか知らないと思う事を彼女に伝えることにした。

 

「ノアはですね、意外と寂しがり屋、なんですよ」

 

「え?そう、なのですか?」

 

「うん、それに少し怖がりもあります、あ、私がそう言ってたって言うのは秘密ですよシャフト」

 

悪戯気味に口元に指を当ててウィンクをするクフェアに、私もこんな風に明るくなりたいなぁと思いながら頷くシャフト。

 

そう、ある日彼女は知った、ノアという少女が実は物凄く繊細で、脆い存在だということを、この基地に来て何度目かの夜、昔を思い出して一人で寝たくなかったあの日、縋る思いでノアの部屋に向かえば彼女は迷うことなく

 

「なら一緒に寝るか、別に一人増えた所で狭くなるベッドじゃねぇし」

 

「あり、がとうございます」

 

気にすんなと笑いながら部屋に入れてくれた彼女、その時は頼りになる存在で、そんな彼女に縋るしか出来ない自分に卑屈になりかけた、でも共にベッドに入り先にノアが寝てしまってからそれは起きた。

 

少し寝返りを打とうかなと動こうとした時、ノアの手がギュッと自分の寝間着の裾を強く握り、それから

 

「……いか、ないで。一人に、しないでくれ……」

 

無論、寝言であるそれ、だけどその時のノアは確かに泣いていた。自分とは違い夢を見てしまう彼女はその夢の中で何を見てしまっているのか瞑った瞳からは涙が一筋だけ流れ始める。

 

この時にクフェアは知り、そして思った。

 

「(この人は、ずっとこの気持と向き合い続けてるのですね)安心してください、私は、貴女の手を離しませんよ」

 

クフェアが優しくそう告げた時、ノアの表情が少しだけ笑顔になった気がした。そんな事を思い出しながらクフェアはシャフトと別れ基地の外にて彼女の帰りを待ち、数分としない頃に、聞き慣れたスラスターの音が聴こえ見上げれば

 

「おかえり、ノア!」

 

「ん?ああ、ただいまってまたオメェは外で待ってたのかよ、あぶねぇって何度も言ってるだろ?」

 

言われてる、だけどコレばかりはクフェアは譲れない、だって

 

(一番初めに、貴女を迎えてあげたいですから)

 

これが恋だと気づくまで時間は要らなかった。




もう少しこう新妻感出したかった(まだ気が早い)

次回
この基地のうさぎの意外な特技が炸裂する!!

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