それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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副官とVectorは同じタバコを吸っている。


夜の語り

スゥ、ハァという呼吸とともに上がる一筋の紫煙、時刻にして夜、しかも深夜と言った時間に彼女、Vectorは居た。

 

しかも手には珍しくタバコ、その銘柄は副官がよく吸っている子供の小遣いでも買えるという代物、味も値段相応であり、副官曰くクソ不味いそれを表情を変えることなくただボウっと吸っている。

 

「……」

 

不味いわね、それだけを思いながら何かを考えるわけでもただ吸う、そんな空気の中、現れたのは彼女と同じ技術から生み出された人形であるウィンチェスター、だが向こうはVectorが居るとは思っていなかったようで少し驚いた顔をしてから、彼女の隣まで向かい

 

「珍しいわね、貴女が吸ってるなんて、暗殺者は匂いを気にしてるものだと思ったけど?」

 

「廃業してどのくらい経ってると思ってるの、それに……私だって吸いたくなる時はあるわ」

 

へぇと感心したように柵に体重をかけるウィンチェスター、どういう訳か同型の先輩は何かを黄昏れているらしいがその理由が今一見当がつかない、此処最近の仕事をミスをしたとか言う話も聞いてないのでなおさら不明で、こういう時にこそ思考を読み解けばと言う場面なのだが

 

(この人のって読み解きにくいのよね……)

 

どういう訳かVectorの思考はわざとそうしていると思うのだが読み難い、一つ一つの単語は読み解けたとしてもそれだけでは意味がない文字列となっており、思考を読み解くには更にそこから解読しなければならないと言う二重ロックとも言える構成になっている。

 

更にそこで時間を掛けてしまえば……

 

「人の思考を読もうとしないでもらえるかしら?」

 

「あーあ、失敗しちゃった。だったらなんで今日は黄昏れてるのか教えてくれないかしら?」

 

「……私達は鉄血の部品及びコアの一部を使っている、それは知ってるわよね」

 

それは勿論だと頷く、彼女とVectorはその体に鉄血の技術及び部品とコアの一部を使用しており結果として鉄血とIOPの人形の思考が常に頭を流れてくるようになっており、それを読み解くことによって相手が何を考えているか、どう動こうとしているのかを知ることが出来る、なので彼女らはそれを利用して戦闘では優位に立つことが出来る。

 

二人にとってはこんなことは常識中の常識であり、今になってなぜそれを聞いてきたのかと聞き返してみる。

 

「その使われているハイエンドモデルの部品がちょっとね……貴女は指揮官がエルダーブレインに電脳内で襲撃されたのは知ってるわね?」

 

「勿論、まさか親玉が動き出すなんて思わなかったわ。それが?」

 

「……そうね、貴女には話していいか、私に使われているハイエンドモデル、身体の方は『エージェント』なんだけど、問題はコア、こっちに使われてるのが……『エルダーブレイン』」

 

「嘘でしょ……!?」

 

それはあまりに衝撃的な事実だった、目を見開き隣のまた新たにタバコに火をつけ始めたVectorを見れば、向こうはそんな視線を気にする素振りも見せずにゆっくりと煙を吐いてから、自分の右手を見つめる。

 

今言ったように彼女のコアにはエルダーブレインの一部が混ぜられている、胡蝶事件の前だからこそ出来たことでありそうすることによって全ての鉄血の思考も読み解くことが出来ている、が今回はそれがとある問題を引き起こした。

 

「アイツが指揮官の首を掴んだ時、その感触が伝わったのよ」

 

思わず震えた、その時の自分は何も掴んでいないというのに彼女の首を締める感触が嫌でも伝わってくるのだから、そして次に来たのはエルダーブレイン本人の思考、ただ己の計画の障害となる彼女を殺す、純粋たる殺意。

 

「こっちからはどうすることも出来ずに、ただ自分が指揮官を絞め殺しているんじゃないかっていう感触だけがひたすらに伝わる、正直言って狂うかと思ったわよ」

 

「そうね、自分だったら間違いなく耐えられずに右手をぶっ壊してたかもしれないわ」

 

「あぁ、その方法があったか……」

 

それは盲点だったとばかりに呟くVector、その時彼女が行ったのは、こうして感触が伝わってくるのならば読み解けば向こうを少しだけ操れるのではないか、そう考えた彼女は思考を読み解こうと潜ってしまった。

 

結果は彼女は返り討ちにあった、無論メンタルモデルがやられたわけでも倒れた訳でもない、エルダーブレインの思考にほんの少しも触れることも出来ずにただ普通に弾かれたと言うだけ。

 

「あれは想定外だったわね、まさか欠片も触れられないなんてことになるなんてって、そうして更に強くなる感触に駄目かと思った、だけど」

 

「オモイカネだったかしらね、あの娘に救われた……あれ、その時撃って開放したって言われたけど」

 

「凄く痛かったわ、ええ」

 

痛覚までシンクロしてるって相当不味いのでは?とウィンチェスターは思うも今のところ何も異変はないので今はもう切り離している、もしくはその時だけ何らかの影響で繋がってしまったのだろうと結論付けて一人納得、の筈だったがなぜかVectorがジト目で彼女を見て

 

「何勝手に結論づけて納得してるのよ、でもまぁそう考えるのが普通かしら」

 

「人には思考を読むなって言っておきながら自分は読みなんて先輩はちょっと横暴すぎないかしら?」

 

「読まれる方が悪いわ」

 

ククッと笑いタバコを吸うVectorにウィンチェスターははぁと深い溜め息を付いてから、夜の気持ちのいい風を浴びる、元はと言えばコレが目的だったわねと苦笑して

 

「はぁ、なんでこんな難しい話してるのかしらね」

 

「そうね、私もただタバコを吸って黄昏れに来ただけなのに色々語っちゃったわ」

 

「タバコねぇ、一本貰えるかしら?」

 

吸うの貴女、そんな顔をしながらVectorは一本箱から取り出して渡してから、そっとライターで火を着けてあげる。そこまでやってもらえるとは思ってなかったウィンチェスターは少しだけ気分を良くしながらそのタバコを吸って……

 

「ゲホッ!?ゴホッゴホッ!!な、何このタバコ!?」

 

「そこの街で子供のお小遣いで買える値段のタバコよ、味はお察し」

 

「良く、吸えるわねそれ……うぅ、まだ味が残ってるんだけど」

 

余程酷い味なのかいつもの表情を崩しに崩して文句を言うウィンチェスターが面白かったのか笑いながらまた新しいのに火を点けるVectorは最後に一言

 

「因みに、このタバコは禁煙したい人が吸うらしいわよ」

 

「で、貴女は出来てるのかしらね?」

 

「見ての通りよ、出来たのはあの子の母親だけ、子供を持つと意識が変わるらしいわ」

 

ハァと紫煙を口から吐き出す、最初のときよりも柔らかくなった空気の中、その後も二人は夜明け近くまで会話を楽しんだとさ。




なんでVectorにまた設定増やしたんですか?(無計画)(思い付き)

因みにエルダーブレインを使ってはいるけどエルダーブレインの思考は読み解けない模様。
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