それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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きっと、沢山ある


一人称だよ!


笑顔の種類、幸せの種類

笑顔、そう、私は笑顔が好きだ。始めは指揮官のあの【へにょ】として笑顔、製造されて間もない私の見てもらいたいという脅迫概念を溶かしてくれたあの優しくも可愛らしいと思える【へにょ】という笑顔。

 

あの日から9A-91(わたし)は少しずつ変わっていくのが分かった、これはヴァニラさん曰くメンタルモデルがこの基地の環境によって良い方向へと進化しているということなのだが私としてはそうではなく、何と言えば良いのか、そう

 

生まれ変われた、そんな感じ、様々な基地に居る9A-91ではなくこのP基地の9A-91(わたし)に、まぁでも今はコレは特に関係しないので置いておこうと思う。

 

ともかく私はこの基地で指揮官たちと過ごしていく内にみんなの笑顔と言うものが好きになった、いや、好きになったというのは少しだけ違うかもしれない、笑顔を観察するようになった、というべきなのかな。笑顔にも結構な種類があり、そして笑顔になる理由も人それぞれだということが分かってきた。

 

指揮官一人を取っても、幸せを感じた時は【へにょ】として感じだけど、食事をしている時は【ぐにょ】と言った感じ、ルピナス達と遊んでいる時は【ピカピカ】していて、伴侶のクリミナとともに何気ない雑談をしている時は、うーん、【キラキラ】?は少し違うかも、むぅ、コレは中々に難しいです。

 

「うーん……」

 

「あら、9A、何を悩んでいるのかしら?」

 

廊下を歩きながらうんうんと唸っていると前からそう声を掛けられ見ればもう見慣れたナース服のSOCOMさんが私を不思議そうな表情で見つめていました、もしかしたら彼女ならこの疑問に答えてくれるかもしれない、そう思い立った私は早速、今考えていた疑問を話してみれば、向こうもそうね~と悩む素振りを見せてから

 

「仄かな光、強く輝くと言うわけじゃなくて、かと言ってひだまりのような感じでもない、月の光って感じでどうかしら」

 

「月の光、ホワホワ?」

 

「え、ホワホワ?何がかしら?」

 

はっ、つい口に出してしまってたみたいだ、自分は何かを相手の印象を付ける時にどういう訳か擬音が着けたくなる衝動に駆られる、他の9A-91からそういう話は聞かないので多分この基地の私独自のマインドマップの所為だとは思うのだが正直他人に知られるのは恥ずかしい

 

なのでどうにかして誤魔化そうかと思考をフルで働かせているとSOCOMの通信機から着信音が響き、少し失礼するわねとその場で出る。

 

「SOCOMよってペーシャじゃないどうしたの?……え!もうそんな時期だったわね、ええ、うん、了解よ、リベロールにも伝えておくわ、ええ、じゃあすぐに向かうわね」

 

どうやらペーシャ医務長からの通信だったようで何が合ったのかと彼女が聞けば急に驚いた声を上げそれから納得して何かをとんとんと決めていき通信を切る、そのタイミングで近くで聞いてたので気になったので

 

「ペーシャ医務長と言うことはD地区ですか?」

 

「ええ、どうやら417ちゃんとヴィオラちゃんの二人が臨月に入っていつ生まれても可笑しくない状況になったらしいわ。更に言えば向こうの416ちゃんたちもそろそろかもしれないから私も応援に出ることになったってわけ、忙しくなるわね」

 

忙しくなるわね、言葉ではそう告げているのだがSOCOMのその時の顔は何処と無く嬉しそうだった、その証拠に顔は【サラサラ】って感じに爽やかな、だけど間違いなく嬉しいっていう感じの笑顔であり、それが思わず不思議で聞いてしまったのだがSOCOMはこんな質問にも真剣に、だが笑顔は崩さないで

 

「そうねぇ、確かに忙しくなるわ、赤ん坊がちゃんと生まれるか、母体に異常が出てしまわないか、それ以上に何かしらのイレギュラーが起きてしまわないかなんて不安もある」

 

「でも、そんな素振りは見えないですよ?」

 

「そりゃそうよ、医者がそんな顔したら患者が、これからお母さんになる二人が不安になってしまうもの、それにもっと言えばね、新たな生命が生まれるその瞬間に立ち会えることが不安をかき消すくらいに嬉しいの」

 

曰く、医療に携わることが多くなったからなのか、患者さんに感謝されたり、命を救えたり、今回みたいに出産に立ち会いそして母子ともに無事に出会える瞬間を見ると【くしゃ】っていう感じの笑顔になれるらしい。無論それはペーシャ医務長も同じなようで、だが彼女はその表情を上手く隠してしまうらしい、勿体ないわよねとも言っていた。

 

【くしゃ】なんだから初めて聞いた笑顔だが意味は何となしに伝わる、コレは多分指揮官の幸せを感じた時の【へにょ】と同じなんだと思った、思って理解した。

 

(幸せ、なんだ。きっと二人にとっての幸せっていうのがそういう場面、なるほど勉強になります)

 

「さぁてと、直ぐに準備をして出なきゃね、それじゃあね9A、私は行ってくるわ」

 

「あ、はい、お気をつけて、あと疑問に答えてくれてありがとうございます」

 

「それくらいお安いご用よ、ああ、グリズリー?ごめん突然なんだけど貴女のバラクーダに頼みがあるの、ええ、飛ばして頂戴」

 

私の言葉に微笑み答えてからSOCOMは歩き出してグリズリーに連絡を取り始めた、確か彼女はドライブするのが好きらしい、その時の表情は幸せを感じた時の笑顔なのだろうか?

 

こう考えてみると幸せを感じるのは人それぞれで、その瞬間というものを私はあまり知らない、分かるとすれば今しがた教えてくれたSOCOMとペーシャ医務長、そして指揮官だ、ふむ、これはまた新しい観察が増えた、そう思った時ふと自分の顔を触れて

 

(笑ってる?)

 

今の思考の何処に笑うところがあったのだろうか、少々自分が心配になって考えてみればすぐに答えに辿り着いた、何を悩んでいるんだと、今さっき自分が出した答えがそのまま今の自分が笑った理由になるのではないかと。

 

どうやら私は、何か新たな発見に幸せを感じるらしい、そこでまた一つ自分は発見した、確かに今もそれで幸せを感じて笑顔になった、だけど別の時も同じ様に笑顔になる時がある、それは……

 

「あ、9Aちゃん!どうしたの廊下の中心で立ってるけど?」

 

「指揮官、いえ、特に何も……ふふっ」

 

「ん?どったの急に笑い出して、あ、もしかして寝癖ついてる?」

 

「大丈夫ですよ、ただ、今日も指揮官は幸せそうに笑うなって思っただけです」

 

【へにょ】とした笑顔を浮かべている指揮官を見つめる時、どうやら幸せを感じる瞬間というものは一つではなく複数らしい、そのことにも気付けた一日だった。




まるで新人みたいな動きしてるけど9Aちゃんってかなり古参なのよね、なのになんで新たな発見とかこういうムーブし始めたの君?

私事ですがタイプライター風のキーボード買ったのですがコレすっげー捗りますね!

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