それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
バラバラバラとヘリのローターの音が響く、P基地に数多く配備されている『ウィンダム』の機内、各自が自身の装備を確認するのを見るに何処かへの出撃らしい。
更に今回は何やら少々大きな作戦なのか、彼女たちが乗るウィンダム以外に、その遙か前方をヤークトフントを乗せたヒポグリフが飛んでいることが確認できる。
《こちらナデシコ、エアレーズング小隊、聴こえてる?》
「こちら部隊長の79式、聴こえてます」
《じゃあ手短に今回の作戦を確認するよ、今向かっているS04地区ポイントC5の街に襲撃中の鉄血の撃退、ですがもう既に戦闘には入っていて、付近の防衛基地も新任のためあまり長くは保たないとのことです》
「薄い所を狙われたって感じかしらね」
部隊員の一人である『JS9』がそう呟けば他の隊員『カラビーナ』『GSh-18』『USAS-12』も同意だとばかりに頷く、彼女らは第11救援部隊の『エアレーズング』ナデシコによる大規模指揮が可能となったS09P基地で初となる11部隊目の彼女らは救援と入っているように主にこういった作戦での出撃を主な任務としている。
因みにエアレーズングは01と言った感じに数字が振られており、彼女らしか居ないというわけではない、そして大体はその基地に任せるのだが今回のように基地が着任したばかりや出来たばかりで戦力が整っていない、もしくは本社に救援が届いた場合のみで出撃が許されるので常に出ずっぱりというわけではない。
「どうであれ、民間人が襲われているというのならば急がねばなりませんわよね」
「その通りや、それにあの基地の前評判も悪いってことでも無さそうやで、折角の善良な指揮官や、殺すにも惜しい」
《こちらヤークトリーダー、あと1分で作戦エリアに着きます、その後は街の方にて火事場泥棒してるのと鉄血の両方を相手しますので、あなた達は防衛にあたっている部隊の援護をお願いできますか?》
「こちらエアレーズングリーダー、了解しました、ナデシコもそれで大丈夫でしょうか?」
《うん、ただ部隊の方は消耗が本当に酷い、ヒポグリフとウィンダムも少しの間協力してあげて》
彼女の言葉で各自了解と答え、作戦が始まるのだがはっきり言えば苦戦する要素がなかったりする、今回の救援依頼だってこの基地の練度、及び人形達の最適化がまだまだ不十分だったからであり、今後戦力が整えば問題ないだろうという数の鉄血しか来なかったのである。
という事でこれからお見せするのは普段基地では色々残念なお嬢様で通っているカラビーナの作戦時の姿、彼女はウィンダムから降りる直前、一体のブルートにその首を狩られる寸前のM3を見つけ、風圧や揺れる機内から彼女はブルートの頭を撃ち抜いてから
「きゅ、救援!?」
「こちらS09P基地、これよりあなた方を援護しますわ、負傷者が居るならば先に下がらせなさい!」
「カラビーナさん、私が前に出ます!!」
ウィンダムから降りるやいなやカラビーナの前に出たのはUSAS-12、出ると同時にシールドを展開し彼女を守護する、その綺麗な、だが堅実な行動に感心するように微笑んでからカラビーナは戦場を見渡し、次の標的を即座に見つけ
「覚悟なさって」
それを遠くで見ていた街の防衛部隊の一人は後にこう語る、ライフルで、しかもボルトアクションのそれでコルトSAAのような早撃ちを見れるとは思わなかったと。
彼女が狙ったのは前方にて殿を務めていたMP40とステンを囲む鉄血兵、人形タイプも機械タイプも見られる中、カラビーナは二人の撤退ルートの構築を先にしようとしつつ、二人に襲いかかっていたリッパー二体の頭を『ほぼ同時に』ぶち抜く、そしてすぐに今度は二人の背後の数体を
「そこの二人!わたくしが血路を開きます、退却なさい!」
「か、感謝します!動けるねステン」
「も、勿論です!」
此処までされれば向こうは彼女らを脅威と判定、狙いをこっちに向け始めるがもう遅い、その頃にはウィンダムとヒポグリフからの掃射、更に言えばカラビーナが行動を起こし射撃したタイミングで動き始めていた残りの三人が
「隙だらけや!」
「この程度なら、私でも余裕ですね」
「弾けろぉぉぉぉぉ!!!」
何やら一人だけ少しテンションが上りすぎてる部隊長が居るが着実に鉄血を蹴散らしていく、無論その間もカラビーナは彼女らの援護、USASも向こうが取りこぼし、または別方面からカラビーナを殺さんと向かってくる鉄血に持ち前の機動力で躍り出て無慈悲に散弾を浴びせていく
「読みどおりです、あまりに単調すぎる攻撃はいけませんよ」
こうして町の外の鉄血は撃退される、因みに街の内部にて作戦行動していたヤークトフントも特に滞りなく任務を済ませていた、特にイングラムとKS-23はそれはもうテンションバク上がりに街中を動き回り、終いにはエアレーズングの作戦エリアにも協力して撃退に加わるほどだった。
割りと過剰戦力だったのではという防衛戦から数十分後、ハイエンドモデルは確認できず暫くすれば向こうから撤退を開始、少しすれば先程までの戦闘が嘘だったのではと言うほどに静かになった戦場で79式が
「……こちらエアレーズング、目視できる範囲には鉄血は居ません、そちらから確認できますか?」
《ナデシコからも確認できません、どうやら本当に撤退してるだけみたい……うん、向こうの基地とも連絡が取れて一応の増援を送るみたいだからエアレーズング、ヤークトフントは撤収しちゃって大丈夫かな》
「でしたら、代わりの部隊が来るまではわたくし達が防衛につていましょうか?もしかしたら撤収したらそれを目印に攻め直してきても可笑しくありませんし」
《それもそうか、じゃあそうしようか……こちらS09P基地、それで良いでしょうか?ええ、はい……》
ユノが相手の指揮官とやり取りを始めたタイミングでふぅと息を吐くカラビーナ、だがその眼は未だ戦場を見つめ、警戒をしているようにも、だが何処と無く寂しい目をして何かを思い出しているようにも見えた。
その真意はお礼を言おうと来ていたのだが彼女の空気に飲まれ動けない彼女に救われたMP40とステンにもそしてエアレーズングの面々にも分からない、分かるとすればきっと指揮官であるユノと……
(土煙が、眼に入りましたわ、痛い……)
彼女だけである。
カッコいいカラビーナちゃんは出てきませんでした(満足げ)
ちょっと戦闘というか作戦行動中でもと思ったけど上手く書けないと言うね、悲しいねバナージ