それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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中秋の名月(遅刻)だから月見だよ!


お月見の夜に

本日は夜に屋上に集まってください、そんな張り紙が掲示板にデカデカと貼られていた今日の基地、しかもそれは明らかに一〇〇式が書いただろうという墨文字であり、そこから考えられたのは

 

「ニホンの、何かのイベントかな?」

 

「かもしれぬな、いや、間違いなくそうじゃろうて」

 

副官がそう言い直したのは、此処に来る前に食堂でそう言えば日本組が何かを準備してたなということを思い出したから、ちらと見えた時は蕎麦を打っていたらしい。

 

しかしだと思う副官、事あることに日本文化として様々な催し物を開く彼女ら、だが今回は最後に開いてから更に人数が増えたことで用意する量も比例して増えているはず、材料費などは洒落にはもうならない額だろうにと。

 

(いや、スチェッキンを利用すればかなり安く抑えられはするか?)

 

数瞬だけ様々な可能性を思案するがいやいや、楽しい祭り事を前に何小難しいことを考えているのじゃと頭を振ってその思考を追い出してから隣で何やるんだろうと見て分かるほどに目を輝かせているユノに

 

「楽しみにするのは良いが、仕事が終わらなければ行けぬからな?」

 

「も、勿論分かってるよ、さぁて張り切って終わらそうか!」

 

と彼女らが去った後、空中哨戒の任務に出撃前だったノアと見送りについて来ていたクフェアもこの掲示板の前に現れ、デカデカと貼られてたそれを読んでから

 

「夜に何やるってんだ?」

 

「何でしょうかね、屋上ということは外でなにか?」

 

「外だったら中庭とか、あんだろうが……まぁいいや、夜になれば分かんだろ、丁度明日は休日だしちゃっちゃと任務終わらせて帰ってくるか」

 

「うん、気をつけてね、ノア」

 

穏やかな微笑みを浮かべてユノから教えてもらったサンドイッチを手渡すクフェア、最初こそは要らねぇよとか態々朝無理に起きる必要ねぇだろうなどと言いつつも渋々受け取ってたノアも最近ではお礼を言ってから受け取るようになったなんとも初々しい光景

 

コレを偶々目撃したFive-sevenさん曰く『あれでくっついてもなければまだそういう感情とか無いの?嘘でしょ?』と証言してた模様、まぁ彼女のことは置いておこう、と掲示板前ではそんな光景が多々見られる中、仕事場にてカタカタと働いているヴァニラとFMG-9、それと今日も元気にあれこれ設計図に起こしては却下を食らうアーキテクトの3人。

 

「そう言えば、今日はニホンであった【中秋の名月】らしいですよ、だからなのか一〇〇式達がその準備に動いてました」

 

「あ~、聞いたことあるかも、月を眺めながら食事するんだっけ?」

 

「え、なにそれ、つまりお外で夕食を食べるってこと?」

 

「まぁ概ねそうなのでは?月を眺め、お酒を飲んだりするらしいとも、ただ一〇〇式達が食堂で準備してたので何かしらの料理も出るのでは、じゃなくて相棒はマスターときちんと出て下さいね~」

 

「言われなくても行くわよ、私がヘタレるとでも思ったの?」

 

ええ、かなりと彼女を見ないで呟くFMG-9に口角を引くつかせるヴァニラ、そんなやり取りなんてどうでもいいアーキテクトはゲーちゃん誘って夜行ってみよとユノと同じ感じに楽しみにする、そんな各々が何やるんだろくらいの感じで時間になり屋上に集まり、一〇〇式から説明があれば、やはり月見をやろうということで今回はスプリングフィールド達にも協力してもらい月見に関連する料理やお酒が用意されていた。

 

となれば、一部の者達は食らいつきが早かったがその中でユノは

 

「……なんだろう、ちょっと新鮮かな」

 

「そうですわね、この時間帯にこうして夜空の月を眺めるというのはあまりしませんから、少し違って見えますわね」

 

凄くいい雰囲気で会話をしているがそこはユノというあらゆる意味でぶれない少女、そう言いつつもモグモグと貰った団子を食べながら月を眺め、妻のそんな様子にクリミナは優しく微笑み、自身も団子を一つ。

 

因みに娘達はと言うと副官とG36の側に居た、ユノとクリミナの側じゃなくて良いのかと聞けば

 

「こういう時は二人の時間にしてあげるのが大事だってカリンが言ってたわ!」

 

「それに、お母さんとお父さんは少ししたら多分こっちに来ます」

 

「来るね」

 

「まぁ、そうじゃな……して、この蕎麦美味いの」

 

「えぇ、腕によりをかけて打ってみましたからね」

 

え?メイドの言葉に四人が同じ反応をする、賑わいを見せ始める屋上、また別の場所ではノアとクフェアの二人がノアはその手にお酒が入ったコップを、クフェアはコップにはお酒が入っているのだが更に側には64式自が奮発して用意したという日本酒の瓶を置いて何時でも注げるような形にして月を眺めていた。

 

二人にとってはこの時間帯にこうして外に出るというのも稀であり、ましてや月を、夜空を眺めるということなんて本当に初めてな二人、特にクフェアにとっては何時もであれば怖いという感情しか産まない夜の暗闇の空、だが今日は

 

「綺麗、です」

 

「……ああ、夜って、月ってこんなに明るかったんだな」

 

「大きくて、でも安心できる光、ですね」

 

何時もであればそんなことよりも食事だお酒だとなりそうなノアも今日だけはあまり食べず、呑まずに、夜空に浮かぶ満月の月を眺める。それは隣のクフェアも同じで、この日初めて月という存在に目を奪われ、だが途中でチラッとおぉという感嘆な声を上げ子供のように目を輝かせるノアを見つめ

 

「本当に、綺麗ですね」

 

「綺麗、そっか、こういうのも綺麗って言うんだな……あぁ、綺麗な月だ」

 

二人はその日、一〇〇式が気を利かせて月見そばを持ってくるまで団子も、お酒も呑まずにただひたすらと月を眺め続けていた。だが月に目を奪われていたのは彼女らだけではない、また別の所で静かに飲んでいた二人、ヴァニラとスプリングフィールドもそうだった。

 

「なんていうかさ、こうしてのんびりとまじまじ眺めるのって久しぶりだけど、月ってこんなに安心できる物だったのね」

 

「そうですね、見てて落ち着きます」

 

夜が、または月という存在がそうさせているのか気付けばスプリングフィールドはヴァニラの肩に頭を預けていた、だがヴァニラも慌てる様子もなくそんな彼女を見つめてから、あ~と何かを思い出したと言う表情をしてから

 

「……『月が綺麗ですね』」

 

「っ!?もう、でも本当にそうですね、このまま『死んでもいいですね』」

 

「自分で言って何だけどさ、その返しって今の御時世だとあれよね」

 

「ヴァニラさん、雰囲気ってもの知ってます?」

 

締まんねぇなぁ、FMG-9は誰にも聴こえないように呟いてから首にかけていたカメラで彼女らを撮る、この日の月見は大盛況であり、後に掲示板に記事として貼られたらしい。




メイド、蕎麦打ちを始める。

一日遅れでサーセン、忘れてたんや……

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