それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
タン!タン!タン!と規則的な銃声が響く射撃訓練所、殆どの人形達は調子の確認だけに使うので訓練という意味で使うというのはおおよそ決まって
「どぉよ!」
愛銃であるシルバーの【ワルサーPPK】を手にドヤ顔を晒しているユノくらいだろう、護身術と並行して暇さえ見つければ誰かしらに見てもらいながら射撃訓練を行う彼女の今日の付添相手は毎度おなじみクリミナとどういう訳か連れてこられたノア、それとほぼほぼ毎日セットで行動しているクフェアの3人である。
もはや見慣れた精度の射撃にクリミナは調子がいいですわねと言葉をかけるのだがクフェアとしては彼女がここまで射撃も名手だったのかと驚きの表情を隠さず、ノアは今の射撃を見てふむと珍しく悩む素振りを見せてから
「オメェ、それアシスト頼りで撃ってんのか?」
「ふえ、あぁ、うん、撃つって意識すると自然と機能するからそれで」
「……もう一度撃ってみろ、クレー射撃でいいよな」
突然の提案に一先ず頷いて準備をしてから大丈夫だという合図を送る、それを確認したノアはユノに悟られないようにワザとタイミングをずらしてクレーを射出、完全に不意をついたそれ、いくらアシスト込みだとしても外すとクフェアもクリミナも思ったのだがノアだけは違った、そして
二発の発砲音、見れば射出されたクレーは見事に撃ち抜かれている光景、先程の二人は驚いた声を上げるがノアは予想通りだとばかりに溜息をついてから
「今、どんな感じになった」
「どんなって、いつも通り、あ、でもちょっとだけクレーの軌道が読めた気がするかな」
あの時、ユノの視点だとタイミングがずらされて射出されたクレーの動きが『視えた』らしい、なのでそう伝えるとノアはやっぱりかと納得した感じに呟いてから、今の会話に疑問符がそろそろ溢れるのではないかという二人も集めて軽く説明を始める。
「まぁ、アタシも深くは分からねぇし覚えてねぇから簡単にだがな、コイツ射撃アシストと併用して超高速演算からの未来予測してやがる」
「……は?」
「え?」
「へぇ」
二人の何言ってんだとう声に重なるように感心するような声、だがノアはその声の中に心当たりがありますという感じのものが混ざってることを聞き逃さなかった。だがまだ断言するには反応と証拠が足りねぇともう少し続け用とした所でクリミナから
「そ、それって今のユノに負担は凄い掛かっているのではないのでしょうか」
「まぁ、話通り【6割】の同調なら頭痛とかしても可笑しくはねぇな、でどうなんだよ能天気バカ」
「うーん、特には何もないね」
「え、何もないってことはですよ?もしかして今の指揮官って……」
あ、そんな声が誰から漏れたかなんて聞くまでもないだろう、どうやら彼女はこうなっていることを自覚しておいたこの指揮官はまた
「オメェ、同調、ここじゃあ侵食って呼んでんだっけか、ともかく進んでるの黙ってやがるな?」
「なんでそんな重大なことを黙っていますの!?」
悲壮にも似た声でクリミナに問い詰められればいよいよどうしようもなくなるユノ、だが実を言えば彼女も好きで進めたというわけではなかったりする、事の始まりはナデシコの運用を開始してオモイカネのサポートが始まりエルダーブレインの襲撃から数日経ったある日のこと。
その日も何時も通りにナデシコでの業務を行っていたのだがふと自分が捌ける情報の量が増えたなと感じたことが始まりだった、その時は慣れてきたからかなとか思ってオモイカネにもアーキテクトにも話さなかったのだが翌日、とある鉄血の反応を見てる時に先程の射撃と同じような現象が起きたのだ。
「(ん、んん!?)オモイカネ、このS02のエリアF2の鉄血が街に進行を……あれ?」
「ど、どうしたのさ指揮官、確かに鉄血は居るけど動きは見せてないよ?」
「で、でも確かに、あれ?」
だがその数十秒後、彼女が見たとおりに鉄血が動き出し二人は驚愕することになる、此処まで来たら流石に相談をしないわけには行かないと副官たちに話してPPSh-41が緊急で脳をCTスキャンを掛け、現象の原因が判明した。
彼女の脳の侵食が、機能を止めていたにもかかわらずそれが進んでいたのだ、最後に診た時の6割から9割にまで、もう脳の殆どが電脳と同調しておりだからこそ情報を捌ける量が急に増えたり今回のような超高速演算からの未来予測の真似事が出来るようになった、と言うことを説明すれば
「でも、機能を止めてたのに何で進んだのですか?」
「アーちゃんが言うにはナデシコと繋がるようになったからじゃないかって、あの空間で仕事をするようになってあれこれ情報を捌かなくちゃいけなくなったから機能の停止を無意識に解除しちゃってたんじゃないかって」
「ですが、あれは進んだら危険なはずでは?」
「それはねぇな、アタシが完全同調してるがこうして生きてるってのが何よりの証拠になる」
そこで初めて知ることになるのはノアにも同じものが入れられているということ、ユノとは違い義眼という形ではないので一概に同じとは言えないがそれでも進んだことによってユノの命が危険に晒されるということはないとアーキテクトは話していた。
無論、そこで止めることも出来たはずだとクリミナは思ったのだが、同時にユノが何を考えているかも理解してしまった
「もしかして、ナデシコを稼働させる理由になった本社の声、ですか?」
「まぁ、うん、そう言われたってことはさ、どうであれそう思われてるってことだから、此処で止めちゃったらまた何か言われてこの基地が無くなるかもって考えたらコレくらい良いかなって」
ある意味彼女らしい、だが未だ矯正することが出来ていないその精神にクリミナはユノを真正面から抱きしめることしか出来なかった、正直いきなりそういう空気にされると困るのが
「あ~、流石に分かるぞ、アタシらは席を外したほうが良いなコレ?」
「そうだね、でも指揮官、そうやって無理しても悲しみが増えちゃうだけですからね……」
そう言い二人が出ていこうとするのだがそこで正気に戻ったクリミナが急いで離れ、いえ!?コレはですね!?と久しぶりに現れた慌てた様子の彼女に思わず笑い出す3人
一頻り笑ってから、とりあえずこの事はもうどうしようもないのでと一区切りをつけてから改めて射撃訓練を行うのだが
「あぁ、そうだ一つ言っておくがな、アシストがそこまで働くってことはオメェ、基礎の構え方すらロクに出来てねぇってことだからな?」
その日一番凹んだとユノは後に語ることになる。
はい(はい)まぁほら、ナデシコとか言うもん動かしてたらそうなるんじゃないかなってことですよはい。
コレ活かされるのかって?まぁ、多分?