それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
翌日、本日は休日なり、ということで朝から賑わいを見せるカフェに彼女らは居た。
「ノアちゃんとクフェアちゃん、仲直り出来たかな」
「昨夜、物凄い言い争いが聴こえたとは聞きましたが……」
「ふむ、朝食時に食堂では見ておらのか?」
「見てない……」
ヴァルター夫婦と副官がそれぞれ件の二人がその後どうなったかと気になってる様子でお茶をしていた。特にユノはかなり気にしており、クリミナからその事を伝えられるとソワソワとカフェの入口を見つめたり、何度か通信機を手に持って少し考えてから戻したりと落ち着きがなくなりつつあった。
数分後、カランカランと何回目かは分からないドアが開く音にユノ達が視線を向ければそこに居た人物に思わず立ち上がり
「ノアちゃん!それにクフェアちゃんも、ほら、こっちこっち!!」
「あああ、ったく叫ぶな能天気バカ!!」
「ノアもですよ、今向かいますね」
見れば昨日の険悪な雰囲気が嘘みたいな感じに語り合いながら向かってくる二人に心から安堵の息を吐くユノ、いや、コレに関してはクリミナも事情を聞いててその言い争いも実は聞いていた副官も同じであった。
対して、二人もこの空気を感じ取れば申し訳ないという感じになってしまう、今朝になりノアも起きてからなのだが翌々考えたらあの言い争いはとんでもない近所迷惑だったのではないかと思い始めているので尚の事、気が重かったりする。
「えと、その、ご心配おかけしました……」
「……悪かった」
なので二人がまず始めにしたのは謝罪、コレは二人で決めたことであり、特にユノにはクフェアが相談したこともありかなり心配にしてしまっているだろうと考えてのこと。こうして会ってみれば分かったことだがやはり気にかけていたらしいと思えばノアも流石に罪悪感というものを感じるので頭を下げる。
「ううん、私は大丈夫だよ。二人も、もう大丈夫そうだね」
「はい、お蔭で仲直りできました」
ね、クフェアがノアに振れば彼女は昨日の事を思い出して思わず顔を軽く赤くしながら、それを隠すようにそっぽを向いて頬を指で掻きながら。
「ま、まぁ、な、あぁもう大丈夫だ、うん」
彼女の反応にふむ?と思ったのはクリミナと副官、そう言えばこの二人が言い争っているのは聞いたがその後、二人は部屋に入って行ったとも聞いていた、まぁこれは正確にはクフェアが踏み込んだの間違いなのだが第三者から見たらそう見えてしまうものである。
そして、今二人一緒に来た、これもいつもの事なのでそこまで気にかけない事柄なのだが今回はノアのその反応でもしやと二人は直感した、クリミナは自分が過去に同じような事があったという経験談から、副官は持ち前の直感と伊達に長く生きていないのでその手の話はよく聞いているという所から。
「……な、なんだよ、ばあちゃんもクリミナもアタシの顔見て」
「いえ、仲直りができたようで何よりですわと思っただけですわ」
「うむうむ、ただまぁお主らが朝食に出てこなかった理由が分かったと言うだけじゃ」
少し流れる沈黙、クリミナの刺さるようなジト目、それを受けながらも呵々と笑いながらコーヒーを飲む副官、よく理解できずに小首を傾げるユノ、やっぱりこの人には気づかれてますよねと言う困った感じの笑顔を浮かべるクフェア、そして最後に軽く赤かった顔を目一杯赤くしてワナワナと振るえ始めるノア。
「ど、どったのこの空気」
「さて、どうしたんじゃろうな、マスター、モーニングセットを6人前、ああ、勿論一つはクフェア、後はノアにじゃぞ」
「副官、貴女、結構と言いますか、かなり人が悪くありませんこと?」
「あ、あはは、ノア、とりあえず座りませんか?」
「わ、わわわ、わ、わかったってな、なにがが、だよよ」
お、なんじゃこの場でぶっちゃけてほしいのか?と貴女そんな人でしたっけとクリミナがボヤくくらいにいい笑顔で副官が聞けば、押し黙ってクフェアの隣に座り出されたお冷を一気飲みする、その御蔭なのか顔は幾分、戻って冷静にもなったのか副官をギロッと睨むも心地よい風じゃなと言う感じの彼女にはぁと溜息をつき
「ったく、なんで朝からこんなに疲れなきゃいけねぇんだっての」
「ノアが朝きちんと起きれば良かったことですよ」
「あ、そうそう、ノアちゃんが寝坊なんて珍しいよね、朝食時には絶対に起きてくるの……か、顔が怖いですノアちゃん」
「その事には今後一切触れるなよ能天気バカが……!!」
あれ、ものっそい怒られてるんだけど私とクリミナに助けを求める視線を送れば、まぁそのと困った感じに視線を泳がしてから、彼女が出した答えは
「あぁ、えっと、いつぞやのあたくし達みたいなものですわ、ええ」
「いつぞやの?うーん、どの?」
「え、あっと、バレンタイン翌日、でしょうか」
バレンタイン翌日、割りかしポンッと物事を忘れやすい彼女でもそれだけは忘れようがない、互いに夫婦になろうと指輪をプレゼントして、相部屋になって、それで……
「二人結婚するの!!??」
「けけ、けけけ、結婚だぁ!?テメェ、何言ってやがるんだおい!?」
「ノアと結婚……ふふっ」
驚愕ですと言わんばかりの表情で叫ぶユノに驚くべき速度で叫び返したノア、一方で結婚という単語に何を想像しているのか穏やかな笑みでトリップするクフェアというカフェに居るというのに中々にカオスな状況になったことにクリミナはまぁ、良いのではと若干投げやりになり、副官はと言うとモーニングセットを運んできたスプリングフィールドに
「して、お主らはその辺りどうなのじゃ?」
「へ!?え、あ、ほら、私達はその、もうちょっとのんびりとですね?」
「何じゃつまらん、そこの二人みたいにガッと進まんか、ガッと」
「副官はアレですよね、他人の色恋沙汰になると本当に人が変わりますよね?」
指摘されるも当の本人は若いのが青春しようとしてるなら背中を押そうとしてるだけじゃと答える、因みに酒の肴にもする辺り割りかし性格は悪い。
「ったく、何で結婚とかになるってんだ、ちょ、ちょっとあっただけだ」
「えぇ、だってバレンタイン翌日ってそうだったもん……あ、でももしかして?」
「はい、ノアの事は私が支えようって、なのでこれからよろしくお願いしますね『お義姉さん』」
お義姉さん、その一言を聞いたユノの眼が一気に輝きを灯したというのは言うまでもないだろう、そのあまりにチョロさにクリミナと副官も流石に苦笑いを浮かべてるのも無理はないだろう。
「うん、ノアちゃんをお願いね、クフェアちゃん!!」
そんなんだから能天気バカなんだぞ、ノアは思わずそう言おうと思ったがクフェアが笑顔なのを見て水を指すわけにもいかねぇかとモーニングセットを食べ始める、最後にだが新たなカップル誕生という話は無事にFMG-9達情報部にすっぱ抜かれ、情報部は壮絶な鬼ごっこを繰り広げることになる。
もっと言えば、多分カフェの近くにも居なかったはずのエルフェルトが扉を開け放ち
「結婚って言いましたか!!!???」
「いい加減お静かにお願いしますね?」
流石に怒られたのであった。
式の予定はまだ)無いです。
こっからクフェアちゃんのマインドマップが一気に変容が始まるかもしれない。