それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
その日、基地に、もっと言えばスペクトラに衝撃と胃の痛みが襲った。覚えているだろうか、過去に一度ユノの口から出た言葉を、そう、その時もこんな風に食堂だったなと彼女【スペクトラ】は遠い目をする。
「思ったんだよね、今の私ってもしかしたら皆の服装って似合うんじゃないかなって」
本気で頭痛がし始めた、一応で周りに視線を送るも既に見放された感満載の空気、ついさっきまで楽しい楽しい昼食をしてたとは思えない状況にスペクトラは割りかし本気でどうしようと思い始める。
こういうスイッチが入った彼女を止めるのは至難の業である、と言うのは長くこの基地で過ごしてきて学んだこと、その時にも話したと思うがスペクトラという人形は言いくるめが得意な少女ではなく、前の時もどうにかしようとして失敗している。
「と言いますか、急にどうしたんですか?」
「え、いや、前にこんな事話してすっかり忘れてたなぁって」
(ずっと忘れててほしかったなぁ)
因みに前と言っても最近ではない、なので寧ろよく思い出したなという感情のほうが強かったりもする、がともかくこの指揮官のまた突拍子もない思い付きをどうしようかと考える、でもあの時自分で少しやらしてみても良いのでは的なことを発言しているので、うーんと悩んでしまう。
悩んでから気づく、何で私が悩まなきゃいけないんだと、こういうのは本人がやりたいと思ったのならば別段無理に止める必要もないのではと。もっと言えば自分がどうこう伝えて止めれる可能性は低い、だがもっと止めてくれそうな人物が居たじゃないかと。
「別段、私は止めませんけど、クリミナとかは止めないんですか?」
「あ、あ~、どうだろ……」
我ながら妙案な切り口だとユノにばれないように頷くスペクトラ、副官とかでも良かったのだろうが旦那という存在であるクリミナを出せばもっと確実だと踏んでそれが的中し、今ユノは少し悩み始める。
コレにて、彼女の平穏は維持され、スペクトラは今日もスリーピースが管理している農業エリアにて土いじりに精を出すのであった……となればどれほど良かったかなぁと今彼女は若干死んだ眼でその場に居た。
「思ったよりも似合いますわね」
「えへへ、お揃い~」
ここはエルフェルトが何時作ったかも定かではない衣装室、しかも割りかし広い。そこにて今スペクトラの目の前では今はクリミナと同じ衣装を来てどうかなとくるっと一回転しているユノとそれを見ながら称賛するクリミナ、それと
「お母さん、次私の服着てみて!」
「あ、ずるい私のが先」
「あ、あの、私のとか……」
娘組がニコニコ笑顔のエルフェルトから受け取った自身と同じでユノにサイズを合わせた服を片手に来てくれとせがんでいる光景。何で私此処に居るの、そんな疑問が胸の内を占める、いや私必要なくないと思ってしまうのは当然といえば当然だろう。
しかし現実はどういう訳か彼女はユノに誘われて此処に居る、ふむ、よく分からんと思考が投げやりになるのも無理ないだろう。
「じゃーん!」
「ブフッ!?」
思考を深くその疑問に潜らせているとコレまた自信アリ気な掛け声が聞こえ思わずそっちを見れば衝撃的すぎて吹き出した、そこに居たのはまさかの自身の服装姿のユノ、では此処で確認しよう、スペクトラの衣装というのは今自室でたれパンダになっているMicro Uziとそんなに大きな差がない、つまりビキニにミニ・スカート、それが彼女の作戦時の基本的な衣装である。
その格好を目の前の指揮官はしているのだ、しかもなまじ身長も胸も育っているお陰ではっきり言えば似合っていると言えなくはない、ただやはり此処まで露出すると
「(ナノマシンで処置しても傷跡は消えないのか……それよりも)確かに私の格好に憧れるとか言ってましたが本当にするとは……」
「えへへ~、凄いねコレ、動きやすいよ」
「いや、まぁそれはそうでしょうよ」
なんか本人は気にしてないのに自分が気にしても仕方ないなと鳴り冷静にツッコミを入れてしまうスペクトラ、と言うよりも旦那とかは止めないのかとそっちを見れば嫌に真剣な眼差しでユノを見つめるクリミナ、因みに娘組は普段絶対に見られないユノの姿にコレはコレでお母さんありではという評価を下している、多分この流れだと次はシャフトの服装だろう。
まぁそれは置いておこうとスペクトラ、真剣な眼差しのクリミナに
「どうしたのよ、あ~、やっぱり自分の最愛の人が軽率に肌を露出させる服装はよろしくないって感じ?」
「……スペクトラ、あ、いえ、この場合エルフェルトですか、この衣装、幾らでお譲りになってくださいます?」
「欲しいのならお譲りしますよ?」
「いえ、対価はしっかりと、それは仲間内でも適応されますわ、では後でこの事は話し合いましょうか」
あ、平常運転だこの旦那と気づくまでに時間は要らなかった、同時に何のためにそんな事言ったのかと理解も出来てしまい自分のではないとは言え自分の衣装がもしかしたらそう使われるのかなぁと思うとちょっと微妙な表情になるスペクトラ。
(まぁでも、別に気にはしないんですけどね)
「どうどうスペクトラちゃん、似合ってないコレ?」
「お母さん、そんな激しく動いたらずれる!!」
私のそれはそこまで軟じゃないからと思わず言ってしまう、実際この姿で戦闘してるのだからズレるわけ無いだろうと。だが此処まで来てしまうと自分やこの場のメンバーだけというのは味気がない、そう考えたスペクトラは開き直ることにした。
徐に衣装棚に近づき、一つ取り出す、それは
「ほら、FALとかどう?コレも似合うんじゃない?」
「おぉ、コレもなんかあれだよね、大人っぽいやつだよね!」
「でもこれ透けてるよ?」
「あ、本当だ透けてる!」
後日、本人の服も透けてるのかと確認してきたルピナスたちに何で透けてるのそれと真顔で聞かれて何でしょうねと若干死んだ眼になってるFALが居たとか居ないとか。
こうして結果だけを言えばこの人形の衣装を着たいと言うユノの願いは叶い、後は大方の予想通りクリミナが何着かお金を払って衣装を買って部屋に持ち込んでたのでまぁそういうことだろうとスペクトラは思いつつ、触れないでおくことにした。
最後に余談だが、この小さなファッションショーだが何処で聞きつけたかクフェアがノアとともに現れてノアに色々着せていた、その中で一番気に入ってたのは
「赤ってのが良いよな、うん」
「ノアは本当に赤色が好きですね」
PM-06の服だったらしい、後日この服で任務とかに出ているのも確認されて彼女の服装がハンターのとPM-06のとで増えた瞬間である。
でもあれよな、ノアちゃんにPM-06の衣装とかぜってぇ胸締まんねぇからなあれ