それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
ふぅと、ヴァニラは一つ息を吐く、よもやこんな展開になるとは思ってなかったと。ここは普段行く街……ではなく、いつぞや二人がデートに使った本部近くの複合デパート、そこにヴァニラは男装姿で居た。
勿論、すぐ隣には穏やかながら楽しんでますという笑顔のスプリングフィールドの姿もある、何がどうしてこうなったか、それはカフェの場面まで戻ることになる。その日はカフェもBARも変わりが担当するということになり一日がフリーとなったスプリングフィールドではあるがこうも手持ち無沙汰と言うのは久しぶりであり、ついでに言えば彼女は何かをしていないと若干落ち着かないという人形でもある、まぁ要は
「な、なにか手伝えることありませんか?」
「うーん、と言っても今日は本当にゆっくりしてもらいたいんですよね、正直言ってカフェとBARを始めてから休日で何もしないで休んでるって所見たことないですし」
「それは、そうなのですが……」
落ち着かないのだ、もはや自分の城とも言えるカフェで何もしないでコーヒーなどを飲んでいるということに、だったら基地の他の場所にでもと思って行動するのだが結局はココに戻ってきてしまう辺りそろそろ危ないかもしれないとまことしやか囁かれることになるが今は置いておこう。
このままでは逆に休めないという事態になる、誰もがそう判断するまでに時間は必要なかった、だがどうするかという具体的な提案が浮かばないでいるとヴァニラが彼女に近づき。
「なら、二人で、その、出掛けてみる?」
「なっ!?」
「にゃっ!?」
おいこらそこに猫耳コンビとジト目を一度送ってから、スプリングフィールドの方を見れば目を点にしてヴァニラを見つめていた、どうやら若干思考が追いついていないようだ。数十秒ほど思考が停止してから復帰したスプリングフィールドはココ最近で漸く慣れてきたのか顔を極端に赤くするということはなく、ただそれでも頬を赤く染めて、それを隠すように両手を当てて顔を何度も左右にオドオドという感じに振ってから
「あ、あの」
「ん、何かしら?」
どうやら何かを決めたらしい彼女、だが何処か遠慮気味に伝えてきた言葉、それが冒頭の男装姿のヴァニラに繋がる。
「まっさか、男装姿の私と出掛けたい、なんてスプリングから言ってくるなんて思わなかったよ」
「え、あ、もしかして嫌、でしたか?」
「嫌だったら提案された時点で断ってるよ、ただ貴女が言ってきたから驚いてるだけ、でもどうして?」
因みにだが燕尾服ではない、今の彼女の姿は男装ではあるのだが男とも、女とも取れる中性的な姿であり、傍から見てもはてさてどっちだろうかとなる人が大概である。まぁそんな余談は置いておきヴァニラに疑問を投げかけられたスプリングフィールドは、そのですねと前置きをしてから。
「少し違う貴女とも、こうして出掛けてみたくなったから……も、勿論、男装して無くてもヴァニラさんは素敵ですし、好きですよ!?」
「スプリング、貴女それを狙ってやってないとすれば魔性の女よ……」
へ?とキョトンした表情を晒す彼女にヴァニラはああもう可愛いなと微笑んでから、すぐ近くのお店でアイスを買ってくるがどうすると聞けばここで待ってますよと言われヴァニラはその場を離れる、スプリングフィールドとしては別にそのままついて行っても良かったのだが今しがたの会話で見事に自爆して今彼女の隣で歩いていたらまた顔を真っ赤にしてしまいそうな気がしたからだ。
だが同時にそんな彼女の隣に自分が居れている、そのことが嬉しかった、K5には申し訳ないとは思うがあの時発破をかけてくれて本当に感謝すらしている、と思っているとふと影が彼女に近寄り……
アイスを二人分買って、戻ってきたヴァニラが見たのは男に言い寄られるスプリングフィールド、どうやらナンパらしい。ああ、やだやだと思いながら少々駆け足でその場に向かってから
「ごめん、ちょっと並んでてね」
「いえ、大丈夫です」
「あ?んだよテメェ、今この姉ちゃんは俺達と話してんだ、引っ込んでな」
「あんたこそ引っ込んでな、悪いけどこの娘は私のだよ」
演技か、はたまた本気で怒ってるので見せて付けるためかヴァニラはスプリングフィールドに片方のアイスを渡してからギュッと肩を抱き寄せて男を睨む、男装しているということもあってその睨みはそれなりに威圧を持っているのだが男はなけなしのプライドかは知らないが
「はは、おい姉ちゃん、そんな優男なんかよりも俺との方が楽しめるぜ?」
ピキッ、隣の彼女からそんな音が聴こえたような気がしたヴァニラは自分に向けてではないのだがそれでもおぉうと若干顔を引き攣らせながら、目の前の猿に所でさとニコリと笑みを浮かべながら左手を上げればそこにあったのは、いつの間にか握られていたスタンガン、それを見た男は目を見開いてから腰渡りをしきりに探りそれから
「て、テメェ!!」
「おうなんだよ、やろうってのか?」
声の質が一気に冷たくなった、次の言葉はない、暗にそう告げた雰囲気に流石のソイツも腰を軽く引きつつ、逃げるように去って行くのを確認してから、ヴァニラはベンチに腰を掛けて息を一つ、見れば冷や汗が流れ始めておりかなり緊張していたと今になってスプリングフィールドは気付いた。
「だ、大丈夫ですか?」
「それはこっちのセリフよ、何もされてないわよね?」
頷けば良かったぁと男装中の演技も忘れて安堵の息を吐く、そこで彼女が過去に男性に何をされたかそれによって男嫌いだったと言うことを思い出して、それから
「もう、アレくらいでしたら私だって対処できましたよ」
「馬鹿ね、惚れた女にカッコいい所見せたくなるものなのよ」
まぁ、結果このザマだから締りは悪いんだけどとアイスを一口食べながら呟く、はっきり言えば少し怖かったというのもある、だがそれでも彼女の前で情けない所は見せれないというのと、実を言えば今日のデートではいい加減、自分に踏ん切りをつけようというのがあったりしたので、ああして態々挑発紛いなことをしてでもスプリングフィールドにカッコいい所を見せたのだ。
だが流石に此処じゃあなぁと思っても居るのでその後は彼女の買い物、自分の買い物、時にはゲームセンターなどで遊んだりしてから夕方頃、駐車場にて車に乗り込んでから
「今日は楽しめたかしら?」
「はい、とても楽しめました。思ったよりもこうした息に抜きは有効なんですね」
「そりゃあね……ねぇ、スプリング」
「どうしたんですか、急に真面目な声を出しっ!?」
助手席のスプリングフィールドがヴァニラの声に反応して向いた瞬間、その唇を奪った。
意を決したヴァニラ、付き合い始めてそれなりの日数が経っているというのにまだしたことがないなとすら思っていた、もしかしたらノアとクフェアの二人の距離の詰め方を見て焦りと言えばおかしいかもしれないが、自分たちも、もう少し踏み込んでもいいんじゃないかなという感情が生まれていた。
唇だけを重ねたキスを数十秒、そっと離れたヴァニラが見たのはスプリングフィールドの驚きと嬉しさが混ざった瞳と表情。
「……ふぅ、ごめん、もう少しロマンチックな場面が良かった?」
「いいえ、十分ヴァニラさんらしいですよ、嬉しいです」
初めてのキスは、バニラアイスの味がしたらしい。
まぁほら、いい加減そのくらいは進めてもいいかなって思った次第であります、何かこうこの二人は若いの二人組よりもスローだけどこんな感じに進めていきたい。
???ーさん「『ヴァニラ』のキスは『バニラ』な味、ふふっ」