それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
S09地区P基地、この基地には救護室があり迷ってきた、戦場で怪我してて動けずに居た等などの理由で保護した動物たちが暮らしている。
そういった動物たちは大体がこの基地で過ごしているか信頼ある人物に引き取られるか、稀に本社の方の職員がスチェッキンから聴いたのか飼いたくて買っていくパターンも有り、更に発展すれば指揮官に名前を付けられるものも存在する。
「わんわん!」
「うわっとと、今日も元気だね~」
本日も晴天なり、絶好の散歩日和ということでユノとクリミナ、救護室の室長WA2000の三人は犬の散歩のために基地内を歩いていた。また数が増えたのか今はもうダミーまで使っての散歩であり、中々に苦労があると思われるのだがそれでも彼女らの顔は笑顔、もしくは頬を緩みきらせた感じであり癒やされていることが非常に良く分かる光景だ。
それは犬も同じようで比較的新しい子犬達はそれはもうはしゃぎ周るほどであり、少し前のユノならば振り回されている光景だったのだが今ではもうきっちり制御でき、その御蔭なのかは不明だが
「パグ助が最近私に合わせて歩いてくれるようになったんだよね」
「あら、それは良かったじゃな無いですか、っととラムレーズン、貴女は少し落ち着きを持ったらどうでしょうか……」
「バウバウ!」
どうやら彼、黒柴の【ラムレーズン】は他の犬がいると楽しくなる性分なのかクリミナも油断をすると制御が追いつかなくなるくらいには走り回る、それに対して一番の古参であるパグ助はのんびり、と言うよりもどっしりとした感じでありユノが歩く速度に合わせてピッタリとその側を歩く、だが彼女の言う通り少し前のナノマシン治療前の彼女の時はそれはもう振り回されていたのでその辺りは不思議だなぁと思っていると。
「多分、急に大きくなって今の指揮官と少し前の指揮官が同じだって思われてないんじゃないかしら?」
「……え?そ、そんな事無いよねパグ助?」
「バウ」
「ほ、ほらきっと分かってるって!」
因みにパグ助は大福たちのように賢いという動物ではない、正確には賢いには賢いのだがあそこまでというわけではないので今の会話中もパグ助は小首を傾げて散歩を促す、恐らくだがWA2000の推測は正しいのだがユノにはその思いは届かずに分かってくれてるよな~と気を良くした彼女は散歩を再開するので本人が良いなら良いけどとクリミナと笑いながら彼女らも付いていく。
「ですがその、シベリアンハスキーでしたっけ?」
「違うよクリミナ、その子はガナッシュケーキだよ!」
「……思うんだけど、何を基準に名前を付けてるのかしら指揮官って」
え、ほらガナッシュケーキっぽくない?と新入りのシベリアンハスキー【ガナッシュケーキ(メス)】の顔を撫でながらそう言うのだがWA2000から見てもあまりそうは思えないというのが本音、一体どの辺りが彼女にはガナッシュケーキに見えたのだろうかとすら思う。
因みに旦那の方は微笑みながらユノらしいですわねと感心してるのでWA2000的にはもう当てにしてない、こういうことに関してはこの旦那は妻には非常に甘いというのはこの基地での共通認識、それでも駄目な時は駄目だと伝えるだけマシなのかもしれない。
まぁそれは置いておこう、ともかくこのシベリアンハスキーことガナッシュケーキは新入りの中でもかなり落ち着いている犬である、もしかしたら元々は何処かで飼われていたのかもしれないと思えるくらいに人馴れしており、ルピナスダミー四姉妹に揉みくちゃにされても嫌がる素振りも起こる素振りも見せずに大人しくしている位だ。
「元々が飼い犬だったら……お前の飼い主はとてもいい人だったのでしょうね」
「ワウっ」
「確か、任務先の場所で縮こまっていたのでしたか?」
「ええ、それを偶々私が見つけてね。それなりに大きいのに大人しいから手がかからないし物覚えもいいしで助かってるわ」
更に言えば他の子犬たちのまとめ役にもなっているのか、ガナッシュケーキの周りには子犬が集まったりすることが多々ある、のだが本人はそのつもりが全く無いらしくそうなると逆に戸惑う姿が見られる、多分どっしり構えてるから大物だと思われてるだけで本人は意外と小心者なのかもしれない、と考えると
(揉みくちゃにされても怒ったりしないのって単純にそのタイミングが分からないだけじゃ……)
「アニス達も貴女のことは気に入ってるよ~、聞いたけどシベリアンハスキーって飼育が意外と難しいんだってね、まぁどの動物にも言えるけどこの基地じゃキチンと接してあげないとね」
「ええ、まぁこの娘は多分、前の飼い主さんが本当に愛情を注いで育てたのでしょうからこんなに大人しくて良い子なんだと思う……一応、飼い主が生きてる可能性を考えて探してはいるんだっけ?」
「うん、だけど情報は全然……」
このように、明らかに飼い犬、飼い猫と言ったペットだったと思われる個体の場合は基地からサイトや広告、本社を通してのグリフィンが出している雑誌などで飼い主を探してあげている、が大体は既に亡くなっている、その余裕がないという場合がほとんどであり元の飼い主のもとに戻れるのは本当に一握り、となると大体は先程も言ったように新たな飼い主のもとに向かったりすることになることが多い。
この世界、人が生きていくのも苦労が多い故に致し方がないとは思うのだが、こうして戦場などに置いてけぼりにされる動物たちを見つける度に
「一緒に逃げるって選択肢は取れないものなのね……」
「やはり難しいかと、ならば野生として生き延びてくれればと思って断腸の思いで置いていってしまったという声も聞きますし」
「だから私達が保護して、新しい暖かい家族のもとで暮らせるように手配してあげてるけど、それも多くはないからね。気付けば皆この基地のほうが居心地がいいと言う感じで過ごしてる気がするし」
散歩途中だと言うのに空気が重くなる、このご時世だから仕方のないことなのだが、が人間人形がそう思ってるだけで動物たちはあまりそう思わないのか、はたまたそう思ってるが意外と前向きなのか、パグ助を始めとする犬たちがリードを引っ張り早く行こうと促す。
「……ふふ、そうね、私達が落ち込んでても仕方ない、か。それよりも皆を歩かせないとね」
「だね、で、話を戻すけどパグ助は私を認識してるよね?」
「大丈夫ですわユノ、きっと分かってくれてますわ」
分かってなかった模様、こうしてこの基地の朝の犬たちの散歩の【一陣】は終わりを告げる……そう、一陣なのだ。
シベリアンハスキー【ガナッシュケーキ】
モデルは『動物のお医者さん』のチョビだったりする。
じゃあ俺、アトリエ進めてるから……(ライザ並感