それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
M4はある日気付いた、いつか見たあの夢、図書室にある夢占いの本でははっきり言って何も分からなかったあれ、その時は仕方がないと諦め、記憶に蓋をしたのだが、その日カフェにて閃いた。
(占い師居るじゃないですか)
彼女の視線の先には道具一式を広げのんびりとしているこの基地唯一の占い師であるK5、聴いた話だと得意なのはタロット占いというだけで占いはジャンル問わずにほぼ全般をこなせるらしい彼女ならばあの日見たあまりに謎に近い夢を占ってもらえるのではないかと。
という事でM4は彼女の前の席に座る、そうすれば向こうは珍しいお客様に目を少し丸くしてから笑みを浮かべて
「いらっしゃい、さて、どのような占いをご所望かな?」
「夢占いを、と言うよりも私が見た夢の内容を聞いて貰いたくて……」
「ふむ、話には聞いてるけど確か人形なのに君は夢を見るんだったね、いいよ、話してごらん」
優しく促されればM4はあの日見た夢、指揮官と森林を歩いて湖に言ったあの夢の内容を覚えている限り話していく、夢の中の自分は指揮官と共にピクニックをしており、森林を抜けたと思えば湖があり、湖の側を歩けば指揮官が落ちて、女神を名乗るAR-15似の質問に答えたら金と銀の髪飾りをした指揮官を渡され、最後は無数の指揮官に囲まれた……
今こうして話しても意味が分からなすぎるし、ぶっちゃけホラーも良いところだとM4は少し疲れを感じながら話し
「っていう内容だったのですが……」
「ふむ、では幾つか確認していいかな?」
「え、はい」
「まず一つ、指揮官の様子を覚えてる?こう、普段の彼女とは違うとか」
聞かれ思い出す、確かにあの時の彼女はあの時期の彼女だとしてもどことなく幼い感じの精神年齢だったかもしれない、なのでそう答えれば何度か頷いてから
「じゃあ次、その湖、もしくは森林を現実で見たという記憶は?」
「それが……思い出せないんです、でもあそこまで詳細に見たってことは何処かで資料なりを読んだのかもと」
一体この質問に何の意味がと思いながらも答えればK5はまたふむと一つ唸ってから顎に手を当てて考え込む、じゃあコレが最後だと告げてから
「その時の君は、指揮官がクローンであるということは知ってた?」
「いいえ、あの、それが?」
「……今から話し内容は少しぶっ飛んでるかもしれないけど、君は何らかの形で指揮官の真実をその当時から知ってたことになる」
何を言っているのだとM4は思う、自分が彼女をクローンであることを当時から知っていた?そんな馬鹿なと、だが目の前の占い師が決して適当なことを言ってるとは思えないので続きを促してみれば
「そう思った理由は夢の内容、森林とか湖とかはちょっと判断がつかないけど、指揮官に関しては確信できる、始めに出てきたのは【オリジナル】そして落ちて君が質問に答えて出てきた二人は……」
「まさか、【指揮官】と【ノアちゃん】!?」
「うん、そして最後、無数の彼女がと言ったね、それは恐らくは生み出されたクローン達じゃないかな……勿論、全部夢からの推測、間違ってるかもしれないのは重々承知してるよ、だけど夢の内容を今でもそこまではっきり覚えてるってなると意味があるように思えるんだ」
まさか唯の夢占いからこんな話に展開するとは思わなかったM4は、一先ずお礼を言ってからカフェを後にして歩きながら先程のK5との会話を整理していく、が
(やはり、間違いなのでは?)
どれだけ整理しても自分が当時その事を知っていたという記憶も何も出てこない、だけどK5は終わり際にこうも告げている
『その手の夢は本人が忘れたいこと、または忘れてしまったことを近い形で追体験させる、みたいな意味合いがある、もしくは何らかの形でそれを予知した、というのも決してゼロじゃない』
忘れた、忘れてしまった、と言われてもと思いながら歩いているとどうやら気付けば中庭に出ていたようでルピナス達の声に混じって指揮官の声も聞こえ、ふと、本当に何でこんな疑問をと言う物が頭を過ぎった。
(此処に居るのはクローンでオリジナルの彼女は亡くなっている……あれ)
一気に整理される情報、ノアの話からクローンは今やユノとノアの二人だけ残して全滅しているとは聞いている、だがもっと大事な存在がどうなったかを聞いていなかったと、それは【オリジナル】の【遺体】がどうなったか。単純に考えれば処理されてしまったのだろう、だがM4はそうとは思えなかった、なぜだから知らないがそこに考えが至った瞬間強烈な悪寒に襲われたのだ。
そう言えばユノがエルダーブレインにナデシコ内で襲われた時に彼女は向こうの容姿をこう言っていた、まるでナノマシン治療をする前の自分みたいだと。
(少し前の指揮官の姿に似ていたと言うのは偶然……?)
普通に考えれば偶然である、だがこの基地で彼女関連のことを見続けたM4だからこそそんな安直に考えて終わりだとは思えなかった。
たかが夢、だとその時まで思っていた、ついでに言えばK5の占いも正直話半分ではあったのだがここに来て彼女の話した内容が急に寒気を覚えるくらいに現実味を帯び始める、自分はもしかして本当に
(何かを忘れ、その【何か】で指揮官のことを知っていた?)
気付けば足はM16の元へと向かっていた、彼女ならば何かを覚えているかもしれない、もしくは何か鍵を握っているかもとすら考え彼女の自室へと向かいノックをしてから自分だと告げれば
「おう、ってどうしたんだM4」
「少し、お話が」
とは言ったものの何を忘れているのかも分からないということに今になって何を聞けばとなるM4は急いで話を組み立てる、もし彼女のことを知るとすればこの基地に来る前の任務、もしくは此処に保護される前の任務のハズだ、そう考えて電脳内で全力で整理をすれば
「……これ?」
「これ?お、おい、どうしたんだM4、急に来たと思ったら黙っちまうなんて」
「姉さん、私達がこの基地に来る前、そして散り散りになる寸前の任務、覚えてますか?」
「え、そりゃあお前……待て、いや、任務に出たのは覚えてる、そこはいい、あれ、おい」
言葉に詰まるM16、それを見てやっぱりと呟くM4、とある期間、そこの任務の内容だけが綺麗にないのだ、まるで知られたら困るとばかりに。
コレが何を告げるかはまだ分からない、だがM4は確信めいた何かを感じた、それは
(また、彼女は現実を突きつけられる……)
そういやオリジナルの遺体の話ししてなかったよねからの派生である、因みにコレが活かさせるのはどのくらい後かは考えてない。
更に言えば夢の内容がマッチしたのは完全に偶然である。