それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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ぶっちゃけMP5ちゃんの大きさの娘が速度そこそこで突っ込んでくるだけでも相当脅威だと思うんですよ


小さいというのは武器となる

人形といえどそれぞれが悩みを抱えるものである、その内容は千差万別、些細なことから大きな事、他人からはそうでもないようなことでも本人からは深刻だったりするもの、とにかく様々だ。

 

今回はそんなお話、主役となるのは

 

「背を、のう。わしはそこまでこの体を不便に思ったことはない故にお主の悩みにアドバイスできる自信は無いのじゃが……」

 

「ですが、小さいとそれだけで舐められたりは?」

 

副官の言葉に驚くように返すのはMP5、周りからはフュンフと呼ばれている赤いペレー棒が特徴的な少女である。彼女の悩みはその自身の身長の低さ、人形なので成長などはないのだがどうしても小さいというだけで子供扱いされたり他所からは甘く見られたりとするのが悩みらしくそれを副管に話すも返ってきたのはそんな言葉だった。

 

副官からすると身長の低さはぶっちゃけそこまで不利な要素だとはあまり思ってなかったりする、強いてあげるとすれば

 

「まぁ、高所のものを取りにくいのはあれよな」

 

「物凄く日常レベルの不便を語られました……でも、大きな人を相手にするときとか困りませんでしたか?」

 

よく警邏や指揮官の護衛として外に出ることが多い彼女はそれなりの回数の悪漢などを相手にしたことはあるのだが身長の低い彼女からすれば大きな相手というだけで威圧感を感じてしまい、素人ならまだしも回数こなしている相手だと少し怯んでしまう時があった、その事を話してみれば

 

「ふむ、確かに体格な大きな者と相対するというのはわしらのように小さき者からすれば少々威圧を感じることがあるじゃろう、だがそれが間違いじゃよ」

 

「え、と言いますと?」

 

「デカイが故にそれは明確な弱点じゃ、小さい、故にそれは明確な強みじゃ」

 

言葉に疑問符を浮かべるフュンフ、その様子にふむと考えてから副官はとある人物に通信を入れてからでは少々付き合ってもらうかのと移動を開始したのでフュンフも慌てて付いていけば、場所は訓練所、そしてそこに居たのは

 

「副官から此処に呼び出しなんて初めて過ぎて怖いんだけど……」

 

「57さん?」

 

「すまぬな、高身長の存在と言えばでお主が真っ先に浮かんだのじゃ、他意はない」

 

呼び出されたのはFive-seveN、だが向こうも詳しい理由までは聞いてなかったのか、思わずなんか悪い事して自分は怒られるのではとすら考えている、そんな彼女の気持ちに気付いたのか副官はすぐに楽にせよと言いつつ着いてきたフュンフに向き合い

 

「では、実戦を交えて軽くその小ささが確かな利点になることを教えよう」

 

「なるほどね、フュンフからの悩みを聞いてあげれるってことか、良いわよ、なら私に出来ることならやってあげる」

 

「話が早くて助かる、の前に軽く座学にしようか」

 

ヨイショとその場に座り込む副官、それから二人にもまぁ座れと伝えてからまずは言葉として自分たちのような小さき者がどんな形で有利に働くかを説いてく。

 

銃撃戦の際の遮蔽物に出来るものが多いこと、潜入の際の進入路の多さ、そして

 

「わしら人形だから出せるパワーと速度、そこに技術を乗せれば図体がでかい相手からすれば消えたように動くこともでき、死角からの一撃が放つことができる」

 

「死角からの、一撃」

 

「うむ、では軽くやってみよう、57、今から本気で行く、お主も全力で抵抗せよ」

 

「あら、いいのかしら?これでも強いわよ私も」

 

呵々、年寄りを舐めるなよと笑ってからそれぞれが定位置に移動し対面の形を取る、フュンフはそれを端のよく見える位置で座り観戦する、と同時に副官が初めから格闘戦するのを見るのは初めてだなと思い出す。

 

大体は銃撃戦、本当に接敵されるまでは彼女はそのスタンスを崩さない、後にどうしてなのか聞いてみれば、幾ら格闘戦が出来ると言っても自分が戦う時は大体が格上なので銃で戦うを基本にしないといけなかったからだと笑いながら話したらしい。

 

とは言ってたが状況が許せば近接戦を始めるので恐らくはその時の言葉は適当だったとフュンフが知るのはかなり後となる模様。

 

「それにしても副官とこうして戦うのって初めてね」

 

「そうさな、基本的に組手もそんなにせんしのう、やる時もいつもはVectorに頼んでしまうのじゃ」

 

Vectorに、その言葉を聞いた瞬間の57は一気に神経を目の前の彼女に集中させた、少しでも気を抜けば、いや、気を抜かなくても正直に言えば勝てるビジョンが見えなくなったというのが正しいだろう。

 

対して副官は気負う様子もなく軽く体の調子を確認、問題ないと判断してから、態々では始めようかと声を掛け……

 

「っ!?」

 

(え、はやっ!?)

 

驚く57とフュンフ、いや、57は想定はしていた、していたがそれ以上だったという感情が大きい、声を掛け少し構えを取り、僅かに身体に力を加えた、と言うところまでは二人は認識できたのだがその次、動いたという瞬間を捉えることが出来なかった。

 

だが驚きこそはするが彼女とて伊達や酔狂で主力部隊の一人を担っているわけではない、此処まで接近されることだって両手の指じゃ足りないくらいあった、だからこそまだ対処はできる。できるのだが動きは同じHGなのかと思えるほどに自分との差を感じている、目には自信があるはずの自分でも捉えられるのは白い影、まるでそう

 

(Brute、しかもエリートクラスのを相手にしてる気分ね!)

 

(は、早すぎて参考にできないんですけど!?)

 

フュンフは戸惑っていた、副官の言動から考えれば今から行う組手を参考にしろと言っていたのはよく分かる、だから本気で行うのもまぁ分かる、だが、だがだ、彼女の追えない速度でやられるとそれはとても困るというのが今の彼女の心境だったりする。

 

一応、どうにか参考にしようと目を凝らし、神経を尖らせ、全てを目の前の組手に集中させるも、分かることと言えば

 

(57さんが、凄く苦戦し始めてます)

 

時折、ああクッソと彼女の素の部分の口調すら現れることからかなり余裕がないと思える、しかも副官は接敵こそすれど何故か攻撃を行わず57からの攻撃を避けるかいなすだけに留めているのも向こうからすれば何時でも自分を倒せると言われているようで余裕を削られる要因になってたり。

 

結果だけを言えば

 

「では決めるぞ」

 

「はっ!?しまっ、ぐぎゃ!!??」

 

一瞬だった、今の速度に漸く目が慣れ捉えたとばかりに拳を放ったというタイミングで副官はギアを一つ上げ懐に潜り込んでその隙だらけの顎をかち上げる、無防備の状態からの一撃にいくら人形といえど悲鳴とともに彼女は地面に沈んだのを確認してから

 

「とまぁ、今回はアヤツという強者が相手だったから時間を掛けたがお主らSMGでアレばあんなまどろっこしいことはせずとも相対からの潜り込めばお主を認識する間もなく沈められる、小さいが故に油断し、大きいが故に懐という死角が生まれやすいのを突いた攻撃じゃな……どうした、鳩が豆鉄砲を食ったよう顔しよってからに」

 

「あ、いえ、ただえっと……」

 

早すぎて参考になりませんでした、その素直な言葉に呵々と笑い副官は

 

「では、実際に相手してみれば分かりやすいじゃろうて」

 

「え?」

 

その日、フュンフは沢山絞られた、無論得るものは多かったのだがそれ以上に

 

(……痛いです)

 

あのおばあちゃんはスパルタだったということを忘れていましたと思い出させる一日だった。




おばあちゃん@ちょっとスイッチが入っちゃった。

この流れで明日は他の人形の格闘戦の訓練風景でも書くかな

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