それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
新たに判明した衝撃の事実から一夜明けた翌日、結局の所、【ダミーブレイン】(命名アーキテクト)の現在地も何も情報は一切ないのと言う状況、一応ナデシコからも探索は掛けてみるが
「駄目だ、S地区には居ないのかな」
「いや、居たとしてもルーラーの眼を掻い潜れるのかもしれないよ」
と言った具合に彼女の眼にも引っかからないという結果になった、なので現状では情報部が総力を上げて情報を集め、ナデシコ側の電脳組は防御を固め、備えるという形に収まった。
それと並行して基地の面々にも箝口令を敷きつつ今回のことを説明、必要なのかと副官達は疑問だったが何も知らずに向こうから先手を打たれるよりはマシだと指揮官の判断で当初は少々の動揺は見られたが今ではもう落ち着いている。
「お姉さんがですか?困りました、私嫌いなんですよね」
「へ?」
とまぁ色々あってもこの基地は結局は通常運行、更に久しぶりに新たに配属される人形が来るということで、しかもその人形の名前が【カルカノM1891】なのでその妹とも言える【カルカノM91/38】周りと指揮官に押し切られ彼女は良く【シノ】と呼ばれているが、ともかく彼女に姉が来るんだよとユノが伝えた所返ってきた答えがこれ。
あれ~そうだっけと思いながらユノはシノの顔をよく見つめる、嫌いだ、と言う割には彼女の眼には口元は少し嬉しそうに上がっており、目にも期待に満ちたキラキラのようなものを感じ取れた彼女は
「もぉ、そうやって嘘つくのはどうかと思うよ?」
「あら、嘘じゃないですよ?」
「私の目を誤魔化せるとでも?」
ニコリと笑うユノ、どうもシノという人形は息を吐くように嘘を吐く、と言うよりも天邪鬼みたいな性格らしく、配属当初の頃はユノもよく騙されていた。
時には私は食事は取れないんですよという言葉にすぐにヴァニラの所に連れて行きどうにか出来ないかと慌てながら相談したり、実は体の一部に爆弾がと言えば急いでヴァニラの所に担ぎ込まれ、と言った具合にシノに良いように振り回されていたユノだがそれも本当に初めの方であり、今では彼女がウソを付く時の顔の癖を見抜いたのもあって早々に騙されたりはしなくなった。
「……はぁ、やはり私はこの基地とは相性が悪すぎると思うのです」
「えへへ、コレでも指揮官だからね、ホイホイ騙されてるようじゃ困っちゃうよ」
やりにくいですね、というのが最近の彼女のユノへの評価だったりする、無論指揮官としては信頼しているし過去に任務中に何時もの悪い癖が出た際には同一人物かと思うくらいには怒られた、具体的には
『言っていい冗談とか、あるよね?』
たったこの一言でシノは色々悟った、天真爛漫とも言われているこの基地だがこういった事にはきちんと怒れる基地なのだと、だからこそ信頼はしている、が
「きっとこの基地のエイプリルフールは窮屈ですね」
「前のエイプリルフールの時は気付いたらあまり重い嘘は止めようって張り紙されてたね」
ああ、やっぱり、とシノが納得しているタイミングで彼女らの前から副管とピンクの髪のとても勝ち気で活発ですというのがよく分かる少女が歩いてきたのに気付きユノはあっという感じの声を上げて、対してシノはあぁという観念したような顔と声で彼女らを出迎える。
対して向こう、と言うよりもその活発系少女はシノを見つけるとそれはもう輝かしい笑顔で手を振りながら
「シノ!あれ、何でそっぽ向いてるんですか、おーい、私です、カルカノM1891ですよシノ!!」
「分かってます、分かった上で今の反応なんです、はぁこれだからお姉さんとは会いたくなかった……」
「またまた、そんな嘘ついてたら辛いのは自分ですよって何度も言ってるじゃないですか~、あ、ハグしましょハグ!」
「ええい、ひっつかないで、ハグはしませんからっ!」
そんな連れないこと言わないでくださいよ~とグイグイ来るカルカノにシノは先程までの余裕の表情は何処へやらという感じの顔で何とか拒否しようと手で彼女を押す、だがそれはどうやら本心からの拒否ではないらしく。ユノも仲が良いようで何よりと言う感じに笑ってみている、が隣の副官としては
「じゃれるのはまぁ良いのじゃが、先に済ますべきことがあるじゃろうて」
「あ、失礼しました!コホン、カルカノM1891、本日よりこの基地に入隊します!」
「ユノ・ヴァルターです、これからよろしくね」
では挨拶のハグしましょ!と向こうが両手を広げればユノもノリノリで勿論とハグを返す、まだ出会って数分としていないはずだと言うのにこの波長の合い方に思わずシノが額に手を当てて溜息をつく、曰く
「お姉さんと同じ波長とか私にとっては悪夢なのですが」
「と言う割には口元のニヤケが抑えきれておらぬぞ」
嘘でしょと口元に手を当てるが副官が言ったようにニヤけているような感じではない、と言う所でノセられたということに気付いたジト目を送れば
「呵々、なるほどコレはお主が天邪鬼もとい嘘で相手をからかうのを止めぬ訳じゃ、まぁわしには通用せぬがなぁ?」
してやったりという表情の副官の声、シノは指揮官の他にも副官とも相性が悪い、と言うべきかそもそもにして稼働年数が段違いだからなのか彼女には嘘が通用した試しがない、どれもバッサリと一刀両断され勝ち気に笑われるというのが一連の流れとなっている。
「あ、副官と何話してるんですかシノ!」
「あれ、シノちゃん何か嬉しそうだよ?」
「う、五月蝿いです、あと嬉しくなんかありません、あぁこれで私の快適ライフもおさらばなのかと思うと涙すら出そうですよ」
取り繕うように発言をしてからそっぽを向くもその顔は照れてるのかほんのりと紅く、それを見逃すはずもないこの二人は嬉しそうに笑ってからシノに近づいて
「もぉ、意地張らない、ほら、ハグしましょうよ~」
「だぁぁ、お姉さんのそのハグ癖はどうにかしたほうが良いと思いますよ私は!」
「直せだなんて、何時だったか私がハグしなかったらそれはそれでソワソワして落ち着かない感じじゃなかったですか~」
ば、それは決してして欲しいからではありません!!!カルカノ姉妹のそのやり取りにユノはやっぱりシノはお姉ちゃんが好きなんだねと頷き、副官はあやつやっぱり嘘が下手じゃのぉとクツクツと笑うのであった。
なんか姉妹ともどもキャラ違くない?……まま、えやろ!(思考停止