それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
銃というものは訓練だけの使用だとしても、否、使ってないとしてもメンテナンスというものは定期的に行うものである。
そんな訳で此処はP38達、スリーピースが銃のメンテナンスを行う部屋、そこに今回は珍しいお客としてユノの姿があった、整備するのはもちろん結婚記念として隣の基地のガンスミスから送られた銀色のPPK、それを真剣な眼差しでP38の教えの通りに備品一つ一つを整備していく。
「こう、かな?」
「失礼……はい、大丈夫です、ただこの部品は間違えないようにしてくださいね」
「指揮官も結構筋が良いよねぇ、いや、覚えが良いと言うべきかな」
スリーピースの面々からそう褒められれば、嬉しそうに笑みを浮かべながら、再び目の前の作業に集中する。 前々から教わりつつはあったのだが、ここ数日前くらいから少し本格的に教わり始めていた。
理由はと聞いてみれば、やはりあのダミーブレインの襲撃が気にかかっているようで、万が一に備えて何時でも発砲出来るようにしておかないとな。という考えになったからとのことらしい。
なのでそういう理由であればスリーピースのリーダー、P38も教えるというのはやぶさかでもないし、寧ろ非常に喜ばしいことだとは思っている、思っているのだが
「うーむ、やはり一度、師匠のところに行ったほうが良いかもしれませんね」
「へ?師匠って、ガンスミスさん?」
ユノの整備の腕は、当初は本当に基礎の基礎程度の素人だったのだが、彼女たちが教えたことを例のごとくスポンジのように吸収、結果としてこのPPKだけに関してならば一人で行っても問題なくメンテナンスは出来るだろうというレベルにまでは達した、のだがP38は一つの懸念があった。
それはこのPPKである。これはガンスミスが結婚記念として送ってくれたというのは冒頭に書いた通りなのだが、P38はこの銃のメンテナンスを一通りしたからこそ分かった。これ部品一つ一つに手が加えられていると。つまりオーダーメイド、となると
「もしかしたら、私では整備ミスを見逃してしまうかもしれません。正直に言えば、私と師匠ではまだまだ天と地の差があると言えますからね。それに一度は本職の整備というものを教わるのも、指揮官にはいい刺激になるかもしれませんし」
「え、師匠に会いに行くんですか!?」
「師匠、と言っても私達は会ったことないですけどね。私も一度は見てみたいかなぁ」
「いや、会ったこともない人を師匠って呼ぶって向こうからしたら軽くホラーでは?」
因みにだが、向こうのガンスミスが預かり知らない場所で彼の弟子(自称)はスリーピースのメンバー分増えている。無論、向こうはその事実をまだ知らない。多分今日知ることになるだろう。
という事で執務室、その事を副官に話せば
「ふむ、まぁ良いのではなかろうか?それにお主が今の姿になってからまだ挨拶に行っておらんじゃろ?」
「……あ」
思わず額に手を当てる副官。もしやとは思い続けていたが、どうやら自分が今の姿になった事情説明などを含んだ挨拶回りを今日まで行わなかったのは、本気で忘れていたかららしい。
「はぁ、でP38と行くのか?」
「あとはノアちゃんもかな。ほら、説明しておかないと色々勘違いとか起こりそうだし」
主にグレたとかそういう方面である。過去に数度、町の住人からそういった連絡を受けている以上、他の基地の誰かに見られた時は絶対に勘違いされると判断。ならば先に説明してしまおうという算段である。が、此処で問題なのはどう説明するか。
バカ正直にクローンだとかは言えない、となれば
「じゃあ生き別れの妹であれだろ、人体実験されてましたで良いだろ」
「多分それなら上手く通せると思うっておばあちゃんも言ってたし、ペルシカさんもそれで良いって言ってたからお願い」
「まぁそのラジオの基地にはアタシも気になってたし、なんかクフェアはクリミナ達とお茶会だとかで暇してたからな。すぐ行くんだろ?」
「向こうに連絡したら、是非おいでって言われたからね。今P38が車の準備してくれてるから、それに乗って行くことになるよ」
と伝えたところ、ノアは念の為、空からの哨戒しながら付いていくと提案。まぁ確かに必要かもねとユノも同意したのだが、後にB基地に到着した際に飛行ユニットを展開したまま着地、挙げ句ガンスミス達の目の前で消失させるという事を行い一騒動起きるのだが、それはまだ未来故に置いておこう。
こうして決まった基地間交流、無論タダで教わろうとか言うことは決してしないのがこの基地、特にP38は久しぶりに師匠たるガンスミスに会いに行き、今の自分の実力を見てもらえると思えば御礼の品を用意する力も自然と籠もるものであり、今は
「えっと、サツマイモにフルーツ数種類、今朝採れたての卵、あとは」
「リーダー!レタス、レタス送りましょうよ!」
「D地区からの技術提供で生産できるようになったお米も良いかもしれませんね」
「トマトも良い色してるから、それでも良いかもしれないよ」
「ではそれの辺りを送りましょうか。よし、じゃあ行ってきますよ、きちんと皆さんのことは伝えますからご安心を」
お願いね!PP-90の元気一杯な声。HK45とスピットファイアの、宜しくおねがいしますと言う彼女等らしい落ち着いた声を背に、愛車であるフィアット500をユノを待たせている正門前まで走らせてから彼女を回収、ノアもポジションに付いたことを確認してから車を走らせ目的地であるS09B基地に向け出発。
道中、特に何かがあるというわけでもなく順調に走行するフィアット500は無事にB基地に到着、要件を伝えれば駐車場に案内されそこで向こうが来るのを待っていることに、その間に
「ノアちゃん、そろそろ降りてきたほうがいいよ」
《ん、今から降りるぞ、巻き込まれんなよ!》
「あっと、来ましたね……絶対に今の指揮官見たら驚きますよね」
ブワッとそのタイミングでノアが着地、軽く着地の際に付着した汚れを払ってから飛行ユニットを消失させたのだが、結果として
「え、今のなんだ?と言うかユノちゃん随分と大きくなってない?」
「成長期、と言うのでは説明が付かんな、それと今降りてきた者も……双子か!?」
あ~、これは説明が大変ですね。そう感じながらユノを促して前に出し、それぞれ決まりの挨拶をしてから、ユノの口から彼女自身とノアのこと(全てではないが)を話せば
「なるほど、まぁ分かった」
「うむ、それとなく事情はわかったのじゃ」
とりあえずはガンスミス達が納得してくれたことに安堵の息を吐くP38。こうして、彼女たちの基地間交流が始まる。
ここから向こうにバトンパスして良いのか、それともこっちでもう少し書くべきなのか、これの判断が難しいんやなって。
でもここから先は好きに書いていいのよ!!(ぶん投げパス