それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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ハイエンドモデル二人が大浴場で語るだけ


こちら側の理由

時間にして夕方、夕食にするにはまだ少し早いかなと言う時間帯、基地の一角にある農場エリアの養鶏場でふぅと本日の業務をあらかた終えて一息つくゲーガーが居た。

 

この基地に来てそれなりの時間が経ったな、ふと特に何かがあったというわけでもなくそんな事を思った彼女は近くのベンチに腰を下ろして買っておいたペットボトルのお茶を一口飲んでからそこから見える風景を眺める。スリーピースの面々が今日もお疲れと言いながら農場エリアを後にしていったり、最近配属されたRF人形の【ファルコン】がギター片手に現れて練習を始めたり、それを少し離れた所で【M200】が見ていたり、ここからだけでも多種多様な光景が入れ代わり立ち代わりに見れて退屈しない。

 

(聴こえるのはギターの音と鶏の鳴き声、ふふっ、やはり一度は打診されたヤギの引き受けを考えてみるか?)

 

杏仁豆腐!メーゴート!少し先の未来でそんな言い合いをしているユノとノアの光景が脳裏に浮かぶまた一つ笑うゲーガー、この時は出てこなかったがその場合は互いのパートナーが困った感じの笑みを浮かべることになるのだがそれは余談だろう。

 

そんな呑気な仕事終わり、あとは自室に戻りシャワーを浴びてから夕食を食べて床に就く、何とも健康的なサイクルを終えるだけ……

 

「さて、そろそろ戻るか、後は任せたぞお手伝いロボ、今日は何を食べるか……」

 

「お、ゲーちゃん此処にまだ居たのか、おーい!」

 

「……五月蝿いのが来たな」

 

どうやら今日は少しだけそのサイクルが崩れるらしいと聞こえた元気ハツラツな声にゲーガーは思わず隠す素振りも見せずにそんな事を呟いてしまえば、腐ってもハイエンドモデル、バッチリそのボヤキは彼女、アーキテクトの耳に届いてしまったようでぷくーと頬を膨らませながら

 

「五月蝿いのなんてひどーい、君の相棒だぞこれでも!」

 

「はぁ、それで何の用だ、お前からこの時間帯に声を掛けてくるなんて珍しい」

 

「いやぁ、偶には構ってやらないとゲーちゃんが拗ねちゃうかなぁって待って!嘘、いや完璧に嘘じゃないけどほとんど嘘!!」

 

妙なしたり顔でそんな事をのたうち回る元上司にさっさと見切りをつけ、とりあえずシャワー浴びてくるかとベンチから立ち上がればアーキテクトが謝罪をしてるのかしてないんだかよく分からない言葉を発しながら彼女の腰を思いっ切りホールドする。

 

コレには若干イラっとしつつもコイツ相手にイライラしても仕方がないことだと過去の経験から知っているので

 

「じゃあ、何だ、さっさと言え」

 

「大浴場入ろうぜ!」

 

カポーン、流石に二人っきりではなくスリーピースも今日は此処を使用している大浴場、どういう訳かアーキテクトに誘われたゲーガーは無下に断るのも後々が面倒だなと言うことでここに来ていた。

 

何もここを使うのは始めてではないが『誰か』と共にというのは以外にも今回が初めてだったりする、彼女は昔からなのだが一人で過ごしている方が好きだったりする。

 

「はふぅ、やっぱ気持ちいいねぇ」

 

「あぁ、そこは同意する。」

 

湯船に身体を目一杯伸ばして寛ぐアーキテクト、だが彼女はどうして自分を誘ったのだと言う疑問はまだ晴れない、そして向こうはまだしゃべる様子もない、まぁ今はゆったりとしたいからいいかとスリーピースの楽しげな声をBGMに目を閉じて自身の体から余分な力を抜いてリラックスする。

 

「……ねぇゲーちゃん」

 

「やっと話す気になったか」

 

「まぁそんなに重い話とかじゃないけど、いやさ、この基地に来てからゲーちゃんとこうして腰を据えて話してなかったなぁって、なんで笑うのさ」

 

「くくっ、いやすまん、少し前に副官にも似たような理由でカフェに連れられてな、お前もそういう事を気にするのかと意外に思ってしまっただけだ」

 

ひっどーい、と言う抗議の声にやはり笑いながら謝罪するゲーガー、それから少し宥めてから続きを促してみれば、彼女はむぅと軽く頬をまた膨らませるも真面目な眼になり

 

「こうして暮らしてるとさ、少し前まで人類と敵対してたんだなって忘れそうだよね」

 

「あぁ、そうだな。私達は少し前までは確かに鉄血としてグリフィンと、そして人類に反旗を翻してた存在だったな」

 

「それでさ思ったんだ、あたしはレイラとの約束があって、それでこの基地に来てユノっちを気に入ってあの娘の味方に、親友になるんだって決めた……ねぇ、ゲーちゃんは何でこっちに着こうって思ったの?」

 

アーキテクトの真剣な声がゲーガーの耳に嫌に響いた、その質問はもしかしたらずっと彼女からは来ないとばかり思っていたというのがあり思わずアーキテクトから視線を外すために天井に顔を向ける、ハイエンドモデルたる自分はアーキテクトのように約束が合ったからというわけでもない。

 

他の基地のハイエンドモデル達のように何かを気に入った、誰かを気に入った、中には惚れ込んだ、と言う理由で離反しているのも居るらしいが彼女はそうでもない。ではゲーガーが離反した理由は?今挙げたどれでもないとすれば何が彼女を行動させた物なにか、それはそれなりの時間をコンビを組んだアーキテクトにも分からなかった、だからこそ今日、こうして誘って聞いてみたのだ。

 

「言ってしまえば、私は今でも人間に付いてるという感覚はないさ」

 

そう、周りからはもう人間の、人類側と思われそうな暮らしっぷりを見せているゲーガーだが本心を言えば人類側という自覚は一切ない、もしなにか切っ掛けさえあればあっさり鉄血に戻るくらいには、だが間違ってもそうはならないだろうと彼女は思っている。

 

「じゃあ、尚更どうしてってことになるけど?」

 

「どうして、か。先ずは牧場での牛飼いの経験、あれは中々に面白いと思った、それとこの基地での農業の体験も向こうに居ては絶対にできないことだ」

 

「はっはーん、じゃああれか、ゲーちゃんはそういうのに惹かれてしまったということだな?」

 

間違ってはいない、4割位の理由で彼女がこっち側にいるのはそれなのだから、だが残りの6割はそれではない、言ってしまえば簡単である、アーキテクトがレイラを気に入り、その娘のユノを気に入ったように、彼女も唯一人を気に入り、彼女がそっちに行くならば自分は付き添ってやろうという感情、彼女はそれを口にしたりはしない、しないのでアーキテクトにはその4割の理由で納得してもらいつつゲーガーは湯船にもう少し深く浸かり

 

(お前が行く道に私は付いて行ってやる、だからお前はお前が笑える道を行け)

 

隣の輝く笑顔の相棒に優しく微笑むゲーガー、彼女は口では何だかんだ言ってもつまりはそういうことなのだ。




アーキテクトからゲーガーは相棒もしくは同級生の親友的なノリで、ゲーガーは親友以上に若干足踏み込んでる感じ、良くない?

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