それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
またこの展開かよ、ノアはテーブルに付きミルクティーを飲みながら思わずそう思う、隣を見ればニコニコ笑顔でケーキを頬張る自称姉ことユノの姿、そして前を向けば、自身も紅茶を飲みながらいやぁ悪いねと笑うヴァニラ。
本日はこの三人でのお茶会、言ってしまえば少し前にクリミナ、クフェア、スプリングフィールドの三人で行ったものの意趣返し、更に言えばヴァニラがノアとこうしてあまり長々と世間話みたいなものをしたことなかったなということもあり彼女がセッティング、こうして二人は集められたということである。
「で、何を話すってんだよ」
「ほう、ふぁにふぁなふっへひぃてふぁいよ?(そう、何話すって聞いてないよ?)」
「てめぇはしゃべるか食べるかどっちかにしろ能天気バカ!」
「まぁまぁ、唯のお茶会よ、強いて言うなら二人の甘々なお話でもって思ってね~」
ヴァニラの顔がコレでもかとニコニコになるのを見てノアは強いて言うならとか言ってたがコレが一番の目的だろと気付く、まぁ気付いたところで別段どうしようという考えは出ないのだが、と言うよりも
「甘々なってなんだよ」
「あるでしょ~、朝のおはようのチューしてますとかさぁ」
「あ?あれって挨拶みたいなもんだってクフェアが言ってたが?」
「え?」
ヴァニラの失敗をもしあげるとするならばこの二人に恋バナをさせたということだろうか、それともくっついてからの話をさせたということだろうか。
過去にもクリミナがユノとの生活の話をしてその甘ったるさに胸焼けを起こしているはずなのだがそれを忘れていたのだろうか、そう思わざる追えない人選に実を言えばスプリングフィールドは苦笑いを浮かべていたりした、それで止めなかった辺りのは知ってて誘ったのだろうという考えだったからだ。
だが上記の反応の通り、ヴァニラはどうやらその件を忘れていたのかもしれない、まさかジャブで放った話で右ストレートカウンターが飛んでくるとは思ってなかったという顔を晒す。
「キスって、普通じゃないんですか?」
「え、あ、そそ、ええ、そうよ、ええ」
「何動揺してんだオメェ……」
大人の意地で見栄を張るがそもそもにしてヴァニラには完璧に分が悪いお茶会であると言わざるを得ない、ヴァニラは未だ同棲ではなく、対して二人は当たり前のように同棲であり同じベッドで眠り、そして
「う、噂に聞いたんだけどさ、その、夜、マジ?」
「夜?……あっ、え、えへへ」
「な、なな、何で話さなきゃイケねぇんだよ……」
よし、今すぐ話題を変えよう、二人の反応を見た瞬間、彼女はそれを決断した、いや、片隅では分かっていた、分かってはいたがいざ本人たちがそういう反応されるとキュン死にしそうで辛い。
しかし、その決断は少しばかり遅かった。
「そういやよ、あんたらはどうなんだ?まさかアタシたちに話させて自分はしないなんて真似しねぇよな?」
「あ、私も聞きたい!」
「……」
ノアの当然だよなという目、ユノの純粋にキラキラした瞳、その2つの視線がヴァニラに突き刺さり思わず作り笑いが出てしまう、予想できたと言えば予想はできてはいたのだがいざ話そうとすると思ったよりも恥ずかしいのだ。
だがしかし、二人に夜のことまで話させておいて自分はと言われて話さない、なんてことは責任感ある大人として出来るわけがない、そう、退けないのだ。
「まぁ、あなた達に比べるとのんびりでしょうけど、私達だって仲良くやってるわよ?」
「のんびり……そうなのか?能天気バカの方は知らねぇがアタシ達の方は早すぎるってのはあると思うぞ?」
「ノアちゃんとクフェアちゃんは出会いが完璧だったじゃないの、だからあの速さには疑問に思わないわよ、逆に私達はやっと進めてるって感じ、でもいいのよ、こうしてのんびりスプリングの出してくれるコーヒーを飲んで会話して……」
「大人って感じだね!私とクリミナは、私がその感情を知らなくてカリンちゃんに相談してって感じだったけど、まぁ夕食を食べながら告白しちゃって悪いとは思ってるけど」
当時のその場面を思い出して申し訳無さそうな顔をしてからミルクティーを一口、確かにクリスマスに改めて告白をし直したが最初のユノからのそれはあまりに場面が整ってなさすぎたと今更ながら反省しているのだ。
「何で夕食時に告白できんだよ……」
「まぁまぁ、その時のユノちゃんは本人も言ってるけど恋って感情を知らなくて駆け引きも分からなかったのだから仕方ないわよ、でもそのくらい真っ直ぐに言葉を伝えられるのは羨ましいわね」
私も、もう少し若かったらそのくらいストレートに行けたのかねぇとわざと年寄りっぽい感じの声でそう言ってから紅茶を飲む、因みにノアはこの事にはノーコメントである、あれは完璧に場の空気にと言うよりクフェアのペースに飲まれてそんな流れになってそのまま押し倒された、思えばその日から自分がクフェアに強く出れないと言うべきか、彼女に主導権を握られるようになったなと言うことを思えば少しため息が出る。
「あら、悩み事?ほらほら、お姉さんにしてみなさいよ」
「アンタさっきまでこの手の話題を変えようとしてたじゃねぇか、まぁいいか。いや、最近クフェアに頭上がんなくなったと言うか、主導権を握られ続けてるっていうか、まぁそう思ってな」
「?」
「あ~、ノアちゃんって受けなのね、うん、分からなくないけど、諦めなさい、どう足掻いても今から逆転は無理だから」
「受けとか逆転ってなんだよ……」
おっと、と口元を抑えるヴァニラ、ついつい趣味の方での言葉が出てしまったらしい、だがノアがそんな事を分かるわけもなく疑問に思いながらも伝えたいことは何となしに分かったのか諦めたようにクッキーに手を伸ばし気を利かせたヴァニラが皿ごと渡せば、嬉しそうに笑ってから受け取ってモリモリと食べ始める。
(あ、怒らないのね)
「そう言えば、ヴァニラさんはスプリングに愛称とか付けてあげないんですか?」
それはあまりに唐突な言葉だった、気付けばショートケーキのワンホールを完食していたユノが思い出したかのように彼女に聞いた、特に深い意味はないのだが折角だし考えてあげればという感じのトーンにヴァニラは驚きながらも
「考えたこともなかったわね、何時もスプリングって呼んでたし、でも、大事なのかしら」
「名前は大事だよ、クリミナもクフェアちゃんも今の名前がついてなんだか更に活き活きしてる気がするし」
「確かにな、何でもその名前で呼ばれるのが嬉しいんだってよ?」
二人の言葉にヴァニラはふむと目を閉じる、だとすればやはり
(考えてあげるべきかねぇ)
とりあえず後日相談しよう、ヴァニラは結論を出してから、その日の夜、夕食をスプリングフィールドと共にしてる時に聞いてみた、のだが
「……」
「スプリング?」
「キュ~」
「スプリング!!!???」
曰く、ヴァニラに名前を呼ばれた場面を想像してオーバーヒートしたらしい。
やだ、春田さんのレベルが上ったり下がったりしてる……
あとノアちゃんのツッコミスキルがいい感じに上がってきましたね。