それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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サブタイトルこんなんだけどブラックマーケットそこまで関係しないと言うね。


ブラックマーケット

ブラックマーケット、この世界においてそれは当たり前のように行われており、それはS09地だけではなくその他の地区においてもグリフィンの監視を逃れ隠れるように、だが確かに貧民や脛に傷を持つ者たちの助けとなっているその市場。

 

監視を逃れていると行ってもグリフィンは認知していないと言うだけであり実を言えば基地での利用もあるのだがそれは今は関係ないので置いておこう。まぁ何が言いたいかと言えば隠れてとは言いながらブラックマーケットは客寄せなどの賑わいを見せるその空間を視線だけで物色しながら歩く一人の女性が居た。

 

レインコートのフードを被り、丈が非常に短い迷彩柄のタイトドレスのような服から見えるスラッとした生足は市場の男性陣の視線を釘付けにしていくのだがそれを知ってか知らぬか彼女は気にする素振りもなくブラックマーケットの商品を眺めていく、が急にその足が止まった。

 

「……」

 

フードの奥の視線が鋭くなる、そこにあったのは一体のIOP製の人形【WA2000】、それだけならば彼女の視線を奪う理由にはならない、このブラックマーケットにおいて人形が売りに出されるなんて日常茶飯事であり一々気にしてても仕方のないこと、しかし問題なのはその人形が『異様なまでに綺麗』なのだ、戦場に転がっていたのを売っているわけでもない、前の所持者から酷い扱いを受けた挙げ句、売られたという風でもない、それはまるで製造した直後の物をそのままブラックマーケットのこの商店に降ろしたという風な綺麗さ。

 

「(奇妙ね、うーん……)ねぇ、ちょっといい?」

 

「お、何だい嬢ちゃん」

 

出来る限り相手に警戒心を湧かせないようにフランクな感じに女性が声をかければ店主の男性はやったぜという感じの声で応対する、その瞬間周りの男性陣から嫉妬の視線を受けることになるが、それよりも店主は女性が話しかけてきたことの方が重要なので気にしない。

 

「コレ結構どころかかなり綺麗な人形ね」

 

「だろぉ?うちの一番の自慢の商品だよ、しかも内部のパーツも全て新品同様ってんだからすげーだろ」

 

確かに凄いわねと驚く演技をしながら、彼女はもう一度その人形を見てみる、恐らくは他人から売られたであろうこの人形なのだが服もそのまま、髪も、肌も、ラブドールにされたという痕跡も見当たらない、本当にまっさらな状態、寧ろ此処まで小綺麗だと気になってしまうのは

 

「足付いたりしない?」

 

「俺もそれは初め気にしたんだがな、覗いたら何も無かったんだよ」

 

「何もなかった?え、ごめん、それどういう事?」

 

「だから『何も無かった』この人形がこうして売られる前の記録も、記憶も、それだけじゃねぇ、メンタルマップも起動に必要なデータファイルも何一つねぇんだ、お蔭で足が付くどころかこの人形が今どうしてるかまでも追われる心配すら無いってことよ」

 

今の店主の言葉、それを聞いた時、彼女は此処最近でよく聞くようになった噂話を思い出す、週に一度の間隔起こっていると言われる人形の神隠し、確かその人形の中に目の前のWA2000も混ざっていた筈と

 

だからこそ今ここで踏み込むべきだと判断した、女性はそっと人形を近くで見る素振りで店主の側まで近付いてゆっくりと手に何かを握らせてただ一言

 

「ねぇ、ちょっとこの人形を売りに来た人のこと聞かせてくれない?」

 

数時間後、情報をホクホク顔で握った女性が商店を去るのだがそこの店主は幸せそうに、だが何処と無く窶れた顔で座っていたとか何とか、そしてそこに置かれていた人形も無くなっていた。

 

そして数日後、女性は何処に居るのかと言えば

 

「久しぶりね、マリア」

 

「貴女から連絡が来た時は驚いたけど、どういう風の吹き回し【ヤーナム】」

 

ここはS09P基地、その正門にてこの基地のVectorとヤーナムと呼ばれた彼女は相対していた、だが敵対や険悪という感じではなく久しぶりに会った旧友との会話であり、だがVectorは正直それなりに警戒している、というのもヤーナムが背負っている大きめの袋、人一人くらいならば余裕で入りそうなそれに、彼女が此処に来た理由はまさかと思い始め

 

「申し訳ないけど、この基地じゃ遺体は処理できないわよ」

 

「物凄い失礼なこと言い出さないでくれない、そうじゃなくて、そうね……一月ほど前から一週間に一度起きてる【神隠し】その手がかり欲しくない?」

 

ピクッとこの手の話をしてる間は滅多に動かないVectorの眉が跳ねた、それは丁度この基地でも集めている情報のことであり、正直に言えば喉から手が出るほど欲しい物である、だが目の前の彼女はそれらをタダで差し出してくれる存在ではない。

 

つまり彼女は何か対価を要求してくるのは間違いない、だが彼女は長年傭兵として様々な地区をあるき渡ってきた人形、その情報の価値は計り知れない故に背に腹は代えられないというのも事実、Vectorは少し考えてから通信機のスイッチを入れて

 

「ではこちらからは衣食住にこの金額の給料、更にボーナスとその他福利厚生はこの書類に書いてあるだけ、他に要求があれば……」

 

「待って、待って?え、良いの?あの情報の対価でこんなに差し出してきていいの?」

 

ヤーナム、改め【Px4ストーム】の狼狽える声がカフェに響く、あれからVectorに呼び出されたユノはPx4と交渉の席に座ったのだが彼女が前持って出してきた書類に書かれた福利厚生に給与形態を見た結果、彼女はVectorに視線を送り、そっと両手を上げた。

 

「参りました、この待遇で文句なし、こっちの情報を全部明け渡すわよ」

 

「……情報って?」

 

「え?」

 

Vectorがクツクツと笑いを堪える様子にPx4は嵌められたと気付くまで時間は掛からなかった。その後、ユノにも事情を話してから情報部とアーキテクト、更に医務長のPPSh-41を医務室に集めてからPx4はあのブラックマーケットで入手してきた人形を彼女たちに見せ、先ずはとアーキテクトと情報部が人形の内部データを確認した時

 

「嘘、何も無いんだけど!?」

 

「言ったでしょ、店主にも何度か確認したけど中身のデータというデータは何一つ無い、反応がロストしたっていうのもそれが理由でしょうね」

 

「そりゃロストするでしょ、所属してた基地情報もないんですからね、いや、それどころか起動に必要な物も一切合切無いですよコレ……」

 

驚きに包まれる医務室、更にPPSh-41が体を調べたところ、新たに判明したのは本当に小さな穴、まるで物凄く細い針に刺されたような痕、それからPx4が店主から引き出した誰が売りに来たのかと話は

 

「長身の白髪の女性、店主が言うにはスプリングフィールドに非常に似ている人形だったって話よ」

 

「小さな少女ではなくて?」

 

首は横に振られる、また振り出しか、そんな空気が漂うが、その長身の女性が無関係とも思えないと判断、その行方を追うことにしてこの場は解散、最後にPx4が引き取ったその人形なのだが動かすことも出来ないということでとりあえずペルシカに事情を話して彼女に引き取ってもらうことになった。




Q つまり

A 前回の話で適合しなかったIOP人形の末路だよ。因みにウィルス自体は打ち込んだ人形が非適合だった場合は即座に自壊するようにシステムが組まれてるからバレないよ。

ところでPx4ストームさん、その、丈短すぎません?

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