それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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少しは隠す素振り見せろよオラァン!!


ダミーブレインの一幕

数式の羅列が流れる大きめのモニター、幾数のコードが部屋中に引かれその先にはP基地に存在する【ナデシコ】と【オモイカネ】と酷似した機械が鎮座しているその部屋のパソコンが置かれているデスクの前に座っているのはこの部屋の主でありダミーブレイン、もしくは【キャロル】または【アルアジフ】と呼び合っている人物、と言っても二重人格というわけではない、彼女たちはそれぞれが確立した個であり、もっと言えばアルアジフが本来この体の主人格である。

 

彼女はキーボードを叩いていくのだが、その指は途中で急に止まり、何かを考え込むように顎に手を当てる。その姿は今日の昼間に見せたあの無邪気な、だが狂気に染まったものではなく大人びた、少女の姿に似合わないほどの思案の表情をしているところを見ると今の彼女は【アルアジフ】ではなく【キャロル】であり、基本この深夜とも言える時間ではアルアジフの方は子供らしく寝ている時間なのでキャロルしか活動していない。

 

(相変わらず条件は不明か、二人目が増えたのは嬉しいのだが条件がわからないのは些か不便だ)

 

そんな彼女がそうして考えているのは自分陣営のハイエンドモデルを増やすために使っている例のウィルス、今日で漸くと言える数の人形に投与して二人目のハイエンドモデル化に成功したそれなのだがキャロルに言わせると全くと言っていいほど成功の条件が不明、失敗から検証しようにもこのウィルスは失敗と同時に人形のデータとOSと言える基盤も全てを巻き添えにして自壊する様にプログラムされ、更に自分たちの足が万が一にも付かないようにとバックアップを取ることもしていないため、データが取れるのは成功時のみ、つまり

 

(2件だけでは検証もままならない……電脳ランクが高ければ成功するというわけでもなく、最高ランク(星5)の人形で数体試したが何れも失敗……)

 

その時は416、WA2000、ウェルロッドMk2の三体で試すが結果は失敗に終わり、だがその二週間後にその一つランクを下げたスプリングフィールドでは成功、ではそのランクで確実に成功するのかと思えば今日まで失敗続き、寧ろ今日のM1918が何故成功したのかと逆に聞きたいくらいであり、今こうしてデータを参照しているのだが

 

(全く分からん、前回の成功と並べてみてもほぼ同じだぞ……)

 

ギシッと椅子の背もたれを軋ませ思考を巡らす、前回の時はキャロルが行い、そして今回はアルアジフが打ち込んだ、つまりどっちかじゃないと成功しないと言うわけではない。打ち込んだ時の状況は、正直当てにならないくらいに件数が少ないので何とも言えない、強いてあげるならば

 

(声を掛けられたか、声を掛けたかの違いだが……コレを参考にできるのか?)

 

いや、出来ないよなと軋ませた背もたれを戻してもう一度パソコンのモニターに表示されているデータの羅列を眺め始める、とここで部屋の扉がノックされて答え入ってきたのはパッと見はスプリングフィールドなのだが肌は病的なまでに白く、元はきれいな亜麻色だった変則的なハーフアップの長髪は純白と言える色に変わっている女性はキャロルを見て

 

「失礼します、キャロル様でしょうか?」

 

「ああ、でこの時間に何の用だ【スユーフ】」

 

スユーフ、そう呼ばれた彼女こそ、初のあのウィルスに適合しハイエンドモデルとなった人形、今では家事全般から適合せずに素体だけとなった人形をブラックマーケットに流す業務までこなしており、彼女が居なければ正直この陣営駄目ではないかと言う存在にまでなっている。

 

元がスプリングフィールドだけあって家庭的であり優しいお姉さんと言うのは変わっていない、なので彼女がこうして彼女の部屋に来た理由は唯一つ

 

「いえ、光が漏れてましたのでまだ寝ていないのかと思いまして」

 

「アルアジフは寝ている、私はウィルスの改良を進めなければならない故に寝てる暇すら無い、それだけを言いに来たのならもう戻れ、お前には明日また作業を言い渡す」

 

それだけを言って彼女から視線を外して作業を再開する、対してスユーフははぁと小さくため息を吐いてから、あぁと伝えようとしたことを思い出して背中を向けている彼女に

 

「そう言えば例のブラックマーケットに流した人形の一体が買われ、P基地に渡ったようです」

 

「問題にはならない、あれには何も残ってない以上、私達がバレることはないだろうしな。それよりもお前のことがバレたのではないか?」

 

「恐らくは、なので今後はどうしようかと、特に問題がないというのならば継続して私が流すことにしますが」

 

ふむとキャロルは思考を巡らす、確かに今回で遂に向こうに神隠しされた人形をブラックマーケットに流している人形であるスユーフの存在がバレたのは間違いない、とすれば今後も行えば向こうは馬鹿ではないので彼女の足取りを追い始めるだろう、とすればこの拠点が知られるのも時間の問題になる。

 

「(だが今バレるのはマズイな)……【ダラーヒム】はどうした」

 

「まだ学習中ですが、彼女を動かしますか?」

 

「ああ、今後は二人同時、もしくはランダムで交代して流すようにしろ、と言っても暫くは無いだろうがな」

 

「まぁ流す人形はもう無いですからね、ある程度は残して私達のニコイチパーツにしなければいけませんし」

 

そういうことだと相変わらず背中越しで伝えてくる主にスユーフはどうせ言っても寝ないんだろうなと諦めてから、ならばと思考を変えて

 

「所でキャロル様、お夜食はいかがでしょうか、腹が減っては何とやら、お腹が満たされれば何か発見ができるやもしれませんよ?」

 

「何だ突然、そもそも小腹も空いてないから(グゥ~)……」

 

要らんと言おうとしたタイミングで可愛らしく鳴り響くお腹の虫、これにスユーフは微笑みを向け、キャロルはプルプルと小刻みに震える、表情は見えないが恐らくは顔を赤くしていることだろう。

 

暫しの沈黙、向こうとしては黙って出てってくれという感情なのだろうが主の空腹を聞いてしまった以上はスユーフとしてはそのままスルーするという訳には行かないので

 

「貴女の体は確かに人形に近いのかもしれませんが根本は人なのですよ?空腹は感じますし食事をしなければ倒れてしまいます、更に言えば指揮官が起きてから大騒ぎしますよ」

 

「んぅ……これだから人間の体というのは本当に面倒だ」

 

心からそう思ってますという声、だが愚痴った所で体が変わるわけでもなければ空腹だというのも紛れもない事実であり、最終的には

 

「本当に軽いものでいい、と言うよりもそんな事に資金を使って大丈夫なのだろうな?」

 

「問題ありません、やはり最高ランクで足が付く心配もなく無傷の人形となればいい値段で買ってくれますからね、ではすぐに作って参りますので少々お待ちを」

 

と告げてからスユーフは部屋を出ていくのを音で聞いてからキャロルは視線を動かさずに

 

「まぁ焦らずとも大丈夫か。とりあえず、あと二体はハイエンドモデル化を成功させ、それから次の段階に進めるか、そして何れは……」

 

自分があのメインフレームよりも自分が優秀であることを知らしめ、アルアジフの為にルーラーから祖母と名を取り返してやろう。モニター越しに見える彼女の瞳には確かな決心の色、彼女は命題とも言えるコレを果たすまでは倒れないだろう、だが

 

(キュ~)

 

腹の虫だけは空気を読まないことに思わず意味もなく苛立つキャロル、因みにスユーフが作ってきたのはサンドイッチとコーンスープで大満足だったとのこと。




ぶっちゃければアルアジフちゃん陣営のノリは【キャロルちゃんと愉快なオートスコアラー】なのであと増えるハイエンドは二人です。

更に言えばアルアジフとキャロルの関係性はXVのキャロルナイン的な感じです。

これもう(ドールズフロントラインなのかシンフォなギアなのか)分かんねぇな
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