それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
※一人称ですぞ
S地区ではなく他の地区で人類人権団体の過激派に寄るテロが勃発、しかも現在進行系で街は内外から襲撃を受けており手が全く足りないという報告を聞きP基地からヤークトフント、エアレーズング、416が隊長を務める第三作戦部隊、そして現場では衛生兵も足りないという事から医療班も全員現場に飛ぶことになった……のだが
ヘリから降りた私を迎えたのは『地獄』だった、少し前までは確かに人々が賑わい、活気に溢れ、この街の全ての中心だったと言える空間は今、辺りに人々が横たわり、そのどれもが無傷ではなく、至る所から血を流してたり、欠損していたり、行きているのかすら怪しい人も居る。
人間だけではない、人形も同じ様に倒れ伏しており、民間の人形が掠れた声で助けを求めてたり、先程まで戦闘をしていたと思われる戦術人形が他の戦術人形を引き摺り帰ってくるのだがその相手は下半身が既にぐちゃぐちゃであり、それを見た私は思わず降りてきたヘリの影に向かい、思いっ切り戻した、今見てる光景が現実のように思えなくて、だけど絶え間なく聴こえる様々な声がコレが現実だと思い知らされ、その思考の混乱に追いつかなくて……
コレではまるで新兵だ、いや、実際私は新兵のようなものだ、今まで座学で映像記録からこういった光景は見ていたが何処か他人事で、今日初めて凄惨な現場をこの目で見て、そしてこのザマだ、医療班の一人として来たというのにそのスタッフがこうなるというのはどうなのだろうかと思わず自問自答と自己嫌悪に陥る私の様子に気づいたのかSOCOM副医務長が近付いてきてから両頬を優しく包んで
「私の目を見て、そう、それから3つ数えて……息を吸って、また3つ数えて、息を吐いて、えぇ良い子ね」
「はぁうっぷ、はぁ……はぁ……」
「そうよね、貴女はロールアウトされてから戦場も何も知らずに居たのだからね、でも厳しいことを言うけどコレが現実なの、そして私達の戦場よ」
真剣な瞳が私を捉える、だがその言葉に私の中で意識が変わり始める、そうだ私は医療スタッフで、命を救うための存在だ。見れば医務長は既にダミーを率いて指示を飛ばしながら患者を診て、即座に今処置が必要か等の判断を下して他のこの街の医者だったり近くの人形だったりに指示を飛ばし始める、それは無論
「ソーコム、すぐに手を貸して!」
「今行くわ!リベロール、もう行けるわね?大丈夫、ペーシャの勉強と実学に喰らいつけて物に出来てるのだから、それにサポートは私達もしてあげる」
優しく、だが決心を促すような副医務長の言葉に私も出来る限り力強く頷けば、向こうも嬉しそうに、そして満足気に頷き返してから
「ただ、肩の力張りすぎよ、適度に適度に……さぁ、行くわよ!」
私達も駆け出す、漸く来たかとばかりに医務長は改めて指示を飛ばしてくる、基本的に医務長と副医務長がダミーフル動員で重症患者を、そして私は重症ではないが処置が必要な患者を、と言ってもダミー含めても15人が限界の私達ではこの役割分担も本当に簡単なものであり臨機応変に対応していくことになるのだが
中には人形になんかと言う患者もいる、自分たちは助けようとしているのに敵意を向けられ私は思わず怯んでしまうのだがさっと現れた医務長が
「んなこと言ってる場合じゃないでしょう!!!!」
「ヒッ、いつつつ!!??」
「リベロール、貴女も怯まない、軽傷者ならまだしもこのような重症患者なら踏み込んで治療を施してください!」
「いや、今日が初陣のこの娘に何無茶言ってるのよ……はい動かないっ!」
「アガガガガ!!??」
この二人は多分強い人達なんだなと思わず遠い目になるが自分もコレを目指さなきゃと気持ちを入れ直した時、耳に微かに声が聞こえた、本当に微かであり寧ろこの喧騒の中よく拾えたなというレベル、もしかしたら気の所為かとも思ったけど
「……けて」
(向こう?)
距離はそこまでではないかもしれない、だがあまりに微かなその声からは覇気などは感じられない、だとすればあまり猶予はないのかもしれない……この事を二人に報告しようと振り向いてみるが向こうも向こうで手を離せるような状況ではない、となれば自分が向かうしか無い、何故此処で私は二人に一言告げてから向かわなかったのかと今思えば疑問である。
ともかく声を頼りに走って向かえばそこには少女が倒れた街灯に足を挟まれ動けずにいる状況、即座に私は駆け寄り容態を確認を始める
「大丈夫です!?」
「痛いよぉ……」
恐らくは逃げようとして転けてしまい更に運悪く街灯が倒れてきた、と考えた所でふと気づく、親は?この場に居ないということは助けを求め何処かに向かった?様々な憶測が頭をよぎるが今は彼女を救うべきだと近くの廃材から使えそうなものを探し出してテコの原理で街灯を少し持ち上げてから少女を救い出し、それから
「大丈夫、お姉ちゃんが助けるからね」
足は折れてはいなさそうだ、それから他に怪我と思われる場所もなく、思わず安堵の息を吐きながら処置を進めていくとふと、背後から複数の足音が聴こえ、親が誰か連れて帰ってきたのかと思った時
「お姉ちゃん後ろ!!」
「えっ」
少女の声と同時に振り向いた時、そこには何かを振りかぶった男性の姿、今からでは自身の銃を構える余裕はない、殺られる、だけどこの娘は守らないとと彼女の覆い被さり衝撃に備えて目を閉じた時、乾いた複数の銃声、遅れるように倒れる音が聞こえ目を開け見てみれば
「ふぅ、流石に焦った」
「ゲヴェーア?」
「怪我、ない?」
居たのはG11、私とは昼寝仲間でゲヴェーアとよく呼んでいる彼女はその普段の気怠そうで眠そうな表情ではなくて鋭い目つきで辺りを見渡しながら居るその姿は正直に言えば少し新鮮であった。
どうやら彼女は医務長が自分が居なくなったことから急遽、探しに来てくれて、見つけたは良いけどあの場面だったので慌てて射撃をしたらしい、あれで慌てての射撃、やっぱり古参勢は凄い人達ばかりです……
ともかくお礼をしてから少女を広場に送れば丁度この子の両親も来ており泣きながらお礼を言われた、コレには思わず照れくさくなってしまう、だけど
(温かい気持ちになれますね)
「リベが笑ってる、ふひぃ……もう大丈夫かな」
「助かりましたG11、そしてリベロール、何故動くのならば報告をあげないのですか?」
ごめんなさい、自分でもわからないですとは言えないので深々と謝り医務長からの説教を甘んじて受ける、その日、少ないながらも死者は出してしまっただがそれ以上に救われた命があったと後に街から感謝状が送られ、その中にはあの時救った少女からの手紙があって思わずニヤけてしまった。
……そう、死者は出してしまった、あれだけのテロだから仕方がない、ロストした人形も逃げられた過激派によって持ち去られた、基地の皆も私達もそう考えてしまった、だからこそ見逃してしまった、あの日、あの時、あの街に彼女たちが居たことを、死者の中に明らかに関係のない戦術人形が二人居たことを
ちなみに今回襲われたこの街は人間と人形が上手く共存しあいある種のモデルケースのような街だったらしいっすよ
情報部、まさかのガバ、と言うよりも情報部でも流石に他の地区では少々弱くなるんよ……