それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
「あ?能天気バカの姿が見えねぇ?」
「はい、その様子ですとノアも見てないようですね……」
業務も終わり、夕食も終わった時間に後は自室でゆっくりするか、もう少しブラブラしようかと廊下を歩きながらと考えていると前からクリミナがやってきてユノを見てないかと聞いてきたのが冒頭のセリフの始めり。
話を聞くとどうやら夕食後に少し散歩してくるねと伝えてから姿が見えないらしい、しかもご丁寧に通信まで切っているらしく一体に何処にとかなり不安そうな彼女を見て大きくため息をついてから
「分かった、アタシも探してみる。見つけたら通信を入れてやる」
「お願いしますわ……」
何処か凹んでいる感じのクリミナを見て再度大きくため息を吐いてからクフェアに少し戻るのが遅くなると伝えてから心当たりがある場所へと歩を進める、この時間で散歩するなんて嘘を吐いてまで向かう場所なんて一つしか無いと。
という訳で彼女が向かったのは屋上、事前に買っておいたホットの缶コーヒーを二本手に持って扉を開ければ柵に寄り掛かり外を眺めているユノの姿、一応の防寒着は来ているようだがクリミナが探してた時間まで考えればそこそこ体は冷えているだろうに身震い一つしないユノに全くコイツはと本日だけで何度目かわからない溜め息を吐いて
「おい、能天気バカ!」
「……」
無反応、それだけ深く考え事をしているのかもしれないのだがノアとしてみれば軽く青筋が立ちかけることであるのは間違いないので二度目は無しで彼女に近付いて心ここにあらずな感じの頬にその缶コーヒーをぶつければ
「ひゃぁぁぁぁああああ!!???な、何ってノアちゃん?いきなり何するのさ!!!」
「うるせぇ」
叫びながら抗議するユノにノアはただ一言告げてからもう一度缶コーヒーを今度は顔面に投げつければ反応ができずに直撃、それでも何とか落とさない様に両手を出したのは日頃の訓練のお陰ではあるだろう、が直撃したのは事実であり痛む鼻っ面を擦りながら下手人を睨みつける。
がその程度の睨みなんてノアには無意味であり彼女は彼女で柵により掛かりながら片手で缶コーヒーを開けて一口、だが
「まず、コレなら面倒臭がらずに紙コップにしとけばよかったか……」
「ねぇ、聞いてるの?」
「そりゃこっちのセリフだ能天気バカ、最初に声を掛けたのに無視しやがって」
再度抗議の声を上げたユノだったがノアの一言にえっとキョトンとした表情を晒してから、少し間を開けてから
「ごめん、考え事してた」
「だろうな、クリミナにも告げずにまぁた一人で抱え込んでんだろ、信頼してるって言った側からそれってどうかと思うぞアタシでも」
「あ、いや、悩んでるってわけじゃないんだ……いや、悩んでるのかな」
はっきりしろよこの能天気バカと思いながらもその言葉をあまり美味しくない缶コーヒーと一緒に流し込む、対してユノも両手で缶コーヒーを開けてからゆっくりと一口飲んで、黙りになってしまう。
どうしたものかと考えるノア、だが一々コイツに合わせるのも面倒だなと判断し
「ダミーブレインのことだろ」
「あはは、分かっちゃう?」
「たりめぇだ、あれからずっと探してるのに全部空振り、この間のテロの際にも出てきたのは確かなんだろ?」
「うん、人形が二人同時にロストしてその地点を情報部が探ったんだけど合ったのは過激派と思われる遺体だけ、誰かが助けてそれで尚且持っていったのは確か、だけど……」
何度も見返しても反応がなく、それによってダミーブレインはナデシコの眼を掻い潜れる手段を持っていることと断定、今現在はその街で情報部と暗部が表と裏から情報をかき集めている段階だ。
しかし、コレが彼女の悩みとは思えない、なので続きを促してみれば
「ダミーブレイン、と言うよりその中にあると思う【お姉ちゃん】の意識についてなんだ」
「確かこの基地に執着してたイントゥルーダー、まぁ母さんの脳みそを載っけてたって言うアイツと同じ様に意識が出てるかもって話だっけか」
「うん、それで思ったんだけどさ……【お姉ちゃん】からしてみればさ意識が戻ったと思ったら私が名前を使っててしかもおばあちゃんと一緒じゃん」
彼女はふと思ってしまったらしい、自分は彼女から見ればとんでもない悪なのではないかと、自分の名を奪い、祖母とも言える存在であったナガンとともに笑いながら過ごしている、それが故にあのナデシコ内での殺意じゃないかと
だからこそノアは次の言葉を彼女が出す前にスパンと軽快な音を立てて頭を殴る、無論そんな事をされれば
「いったい!?何するの!?」
「本物を押し出して幸せをもらって良いのかとかなんとか言ってみやがれ、次はグーで行くからな」
「え……?」
「確かにテメェの名前は【姉貴】のものだったかもしれねぇ、婆ちゃんもまぁアイツから見ればそうかもしんねぇ、だけどなオメェが過ごしてきた『今日』までは偽物か?」
そんな事無い、と言葉にしなくても分かる眼で答えるユノ、どうやら彼女の悩み事はそういうことだったらしい。早い話が罪悪感で埋め尽くされていたということである、がノアからしてみれば何でそんな事に罪悪感を感じる必要があんだよとすらある。
もしオリジナルの彼女だとすればそもそもにしてこんな大層な基地の指揮官になっては居ない、とすれば自分も存在しないしクリミナも彼女を慕う娘たちも、人形だって存在しない、だからこそ
「オメェが作り出した『今』を否定するな、そんな事言えばそれこそアイツラへの侮辱になるからな」
「……ごめん」
「バァカ、謝んのはアタシじゃねぇよ」
笑いながらそう告げると同時に扉が開かれワイのワイのと入って来たのはクリミナ、だけではなくルピナス達や、副官、それだけじゃないこの基地の暇をしてた人形やヴァニラとカリーナ達が揃ってやってきていた、コレには流石のノアも予想外であり思わず目を丸くしていると呵々と副官のいつもの笑い声がしてから
「すまぬな、お主がクリミナに通信を入れたタイミングでわしら全員聞いてしまってな、さて指揮官、いや、この場面ではきちんとこう言ってやるか、ユノ?お主は前にも言ったが信頼していると言う割には抱え込むのを止せ、わしらがその程度で迷惑に思うと思ってか?」
「そうですわ、此処に居る皆、寧ろ貴方の助けになりたいと思っている位ですから」
クリミナと副官の一言にそれぞれが頷き声をかける、対してユノはノアに話したことをまるっと聞かれてたというのが少し恥ずかしく、だけどそう言ってくれた皆に思わず涙が出てき始める、なんで自分は抱え込んでしまうんだろうと。
「ありがとう、ごめんなさい」
謝るなっての、誰かの声がそう届けばユノは改めて感謝の言葉を述べてから、ただまぁ今日は流石にもう遅いから全員解散じゃと副官の号令のもとガヤガヤとユノにまた一言言ってから全員が屋上を去っていき、最後に
「……それにだ、オメェにアタシは救われた、それだけは誰にも否定させねぇからな、あと難しいことは他に任せて能天気バカは能天気バカらしくしてろってんだ」
「それ、励ましてるの?」
「多分な」
なにそれ、思わず屋上に二人の笑い声が響くのであった。
一つ分のの陽だまり、されど彼女たちはそこに居る。
残業で疲れ切ってる頭で書いてるから何書いてるかコレもう分かんねぇな?