それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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アーキテクトの発明品がなんか久しぶりに輝いてるな!


立って歩けるという感動

よいしょ、そんな感じにヘリから降りてきた彼女にユノが先ず行ったことはアーキテクトのラボに連れて行くことだった。

 

「おぉ、わぁぁぁぁぁ!」

 

「ん?おろ、初めて見る娘だ、やぁやぁようこそ我がラボへ!私は此処の主任ってことになってるアーキテクトさんだよ~」

 

それがアーキテクトと新たに配備された【開発班志望】の戦術人形【88式】の出会いだった。だが戦術人形が開発班志望と言うのはどういう事なのだろうかと聞かれそうなのだがそれには彼女の【脚】が原因だったりする、と言うのも例のごとくと言うべきか何と言うか、この基地に回されてきた彼女は脚に多少なりと不具合が残ってしまっている状態らしく、義足状態での日常生活及び戦闘行動が困難なものになっているらしい。

 

結果、そんな戦術人形を抱える余裕なんて無い、もしくはだったら要らないという事になり、最終的にこの基地にお鉢が回ってきたということだ、当初は88式は半ば諦めていたりする、この基地でも結局はという感じに、だが

 

『ふむふむ、ならぴったりだよ此処は!』

 

『え?』

 

『まぁこの基地では何も戦うだけが存在意義ではないというわけじゃよ』

 

『え?』

 

今までと全然違う歓迎ムードに戸惑う88式だったがそんな彼女を知ってか知らぬか、もしくは歩きながら説明をしたほうが早いと判断したのかユノは彼女が乗っている車椅子を押しながら目的の場所へと向かったのが冒頭の場面になる。

 

はっきり言えばアーキテクトのラボは彼女にとってはまさに天国であり宝物庫だった、自分もそれなりに自信があったが彼女の前には赤子も良いところであり、一つ一つの発明品が刺激になって自分も更に頑張ろうと火が付き始め、そしてその様子を見たアーキテクトが更にエンジンが掛かり始めると言う相乗効果になっている。

 

「そう言えばさ、はっちゃんは足をどうにかしたいって思わないの?」

 

「え、うーん、確かに歩けないのは少し不便だなとは思いますけど、どうしてですか主任?」

 

ある日のラボ、今日も今日とて二人はラボに篭もって開発作業に勤しんでいるとふと手を止めたアーキテクトから来た質問に88式は少し考えてからそう答える、因みに開発部に配属になってから彼女はアーキテクトの事を主任と呼ぶようになった。

 

それを聞いた、ゲーガーが一度本気で88式のカウンセリングを行わなければいけないのではなかろうかと心配になったとか何とか、と言う話は置いておき、その返しを聞いたアーキテクトはふむぅと唸り、それから手元のキーボードを数度叩けばモニターに表示されたのは

 

「これは、義足ですよね?」

 

「そうだよ、いやね、はっちゃんの足について医療班からの情報とラボでの検査のデータを元に作ってみたんだ。考えられるとすれば素体と義足との不適合だというのは分かってたと思うんだけど、その不適合が何なのかっていうのがあたしでも中々見つけられなくてね~、それでやっと形にしたのがコレ」

 

「見た目はそこまで変化はなさそうですね」

 

「無いよ~、ぶっちゃければ適合させて日常生活に困らないくらいに歩けるようにを目的にした義足だからね、ほら何をするにも車椅子じゃ色々不便じゃん?」

 

言われれば確かに不便だとは思ったことは多々あるなとは88式は頷く、彼女は基本的に車椅子で過ごしており、誰かの補助がなければ高い所の物を取ったり、入浴もできなかったりするのでまぁ不便と言われれば不便である。

 

なので脚を用意してくれると言うのならば、彼女としても嬉しい所ではある、が

 

「上手く適合するでしょうか……?」

 

「シミュレーターだけなら成功してる、だけど実際に成功するかは試してみないとね。どうかな?」

 

「主任の腕を信じます、なのでお願いできますか?」

 

遠慮気味の答えにアーキテクトは自信満々の笑顔を彼女に向けてから、じゃあすぐに取り掛かろうかと88式をベッドに寝かせてからステアーと58式に手伝ってもらいながら義足の装着の準備を進めてから

 

「さて、これから装着を始めるけど質問あるかな?」

 

「えっと、日常生活に困らない程度とは言ってましたが、もしかしなくても他に機能あったりしません?」

 

「君のような感のいい助手は好きだよ、じゃあ始めようか~」

 

うわぁい、一体何が追加されてるんだろうな~と若干遠い目になりながらカウントダウンが始まり、0と同時に一気に接続、両足でしかも神経直結だということもありその激痛は割りかしシャレにならない物であり思わず軽く悲鳴が上げてしまう。

 

が痛みは直ぐに収まり、数時間だけ安静にしてからその後、ひょこっと現れたユノとそれを追ったのとそろそろラボから一度は引き摺り出すかとやってきたゲーガー立ち会いの下、88式の義足の稼働試験が行われることに。

 

「じゃ、じゃあ、立ちますね」

 

「あぁ、私が支えてやるから安心して立ってみろ」

 

はい、とゲーガーの頼りになる言葉に返事をしてから彼女の両手を握りながらそっと脚に力を込めてみる、とその時点で彼女は既に変化を感じ取った。

 

今まではこの時点で無理だと思うくらいには力が入らなかった脚が確かに力んだ感覚が生まれた、これはもしかしてと未だ疑惑が拭えないが期待が生まれた表情でグッと体全体に力を込めて今度は完全に車椅子から『立ち上がる』

 

「あっ」

 

「よっしゃ!!どこか不具合とか無いかな?」

 

「今のところは……すみませんゲーガーさん、少し歩きますので支えてもらっていいですかね?」

 

「構わん、合わせよう」

 

「き、気をつけてね88式ちゃん」

 

よいしょとよいしょと言う感じにゆっくりと、だが一歩一歩を踏みしめるように歩き出す、最初の数歩は不安だらけな表情だったが6歩、7歩と進んでいく度にその評定は段々と笑顔が浮かび始め、最終的には感極まったのか眼鏡の奥の瞳に涙を浮かべ始めて

 

「あれ、あはは、嬉しいのに涙が」

 

「うんうん、大成功だねコレ!」

 

「少し休憩するか、それに目を拭かないと前も見えないだろう」

 

「あ、はい、クスン、ありがとうございます」

 

近くの椅子に座らせてからユノがそれを見計らってハンカチを手渡せば感謝を述べてから涙を拭いていく、余程嬉しかったようで涙は中々止まらず、同時に自分でも歩けるだけでこんなに感動するのかと驚いている。

 

その日から88式は歩けるようになってラボ以外でも彼女の姿を見ることが多くなったのだが、この脚を作ったアーキテクトに向ける目がゲーガー曰く

 

「あれは尊敬か、それともってやつなんだがどうすればいいと思うIDW」

 

「……そっとしとけばいいんじゃないかにゃ」




尚、まだ戦闘行動には程遠い模様なのだが彼女的には今で十分らしいですぞ!

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