それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
爆発、その衝撃はナデシコ内の彼女たちにも伝わり、次に騒がしくなる基地、何が起きたかなんて聞くまでもないユノはナデシコを地区の監視を継続しつつ基地の状況をモニターに映せば映ったのは数箇所から黒煙をあげる自分の基地の様子。
「じょ、状況報告!!!」
《こちらFMG-9、ゲホッ、はぁ、数カ所で同時に爆発を確認、被害は各人形が確認中です!》
《こちらPPSh-41、医療班は全員無事です、現在フルメンバーで負傷者を救護中!》
《こちら監視塔A、シュタイナー!ナデシコ、基地周辺に鉄血が出現、しかも一体がきゃああ!!!??》
シュタイナーからの通信が突如爆音によって途切れる、何が起きたのかとオモイカネが問い掛けを続けるが返ってくるのはノイズのみ、ユノは今も届く基地各所の被害状況、そしてシュタイナーが通信を途切れる前に伝えた基地周囲の鉄血の反応を見るのだが
「視えない……?」
「シュタイナー!!何が起きたの!!ああクッソ、一番近いのはエアレーズングか、こちらオモイカネ、エアレーズング応答を!!駄目だ、通信が繋がらない、いや、コレって……!!」
「っ!?ナデシコより全員へ!現在基地が襲撃を受けてます、戻れる部隊は至急帰投を!!」
オモイカネの声に何かを気づいたユノが外に防衛任務に出した彼女たちを呼び戻そうとするがこちらもノイズのみ、この時点で判明したのは現在この基地は外部との通信を一切遮断されたということ、だが被害はそれだけじゃない、今尚鉄血の襲撃を受けており防衛部隊にも被害が出始めている、タダの鉄血相手であればこうも遅れを取るはずがない、何が戦場にユノが何度も戦場を見つめるが一般鉄血兵以外の反応が全く視えず、焦りだけが生まれ始めるそこに
《はぁい、あらあら随分と大慌てのようね~?》
割り込み通信という形で映像付きで送られてきたのは余裕たっぷりの笑みを浮かべた見知らぬ人形、誰だという疑問をぶつけようとした時、彼女たちは気付いた、その人形がいる場所というのは
「基地の中!?」
「こちらオモイカネ、基地内に侵入者!場所は……嘘でしょ」
「……そこって、ラボ?」
《ご明察~、まぁ言ってもラボ跡地って言ったほうが正しいかしらね~、ではご挨拶を、アタシはマスターに作られしハイエンドモデルが一人【トゥーマーン】こんにちは、もう既に役立たずのお嬢様?》
演技染みた挨拶をしてからトゥーマーンは笑みを浮かべユノにそう告げる、その言葉がユノの心に刃を立て抉った、役立たず、何を示してそう告げているかなんて彼女自身が分かっていた、この状況下にまで追い込まれたということ、今目の前にハイエンドモデルと名乗った人形が居るというのに関わらず彼女の眼には『何も映さない』
更にトゥーマーンのいる場所がアーキテクトのラボだった場所、今はもう見る影もないそれに爆心地の一つだったと気付くまでに時間は要らず、それと同時に
「アーキテクト、アーキテクト応答して……アーキテクト!!!!!!」
《応答できる訳無いわよね?だってもう》
「嘘、嘘だ、ウソウソ!!!」
《私殺しちゃったもん、音もなく基地に潜入して爆薬仕込んで、後はラボでグサって、あぁそれと眼鏡かけた義足の人形も一緒に爆殺したっけ?》
心から楽しそうに告げていく内容に力なく崩れ落ちる、基地の人形たちからの報告も、叫びも今の彼女の耳に届かない、その様子にオモイカネが
「まさか、ヴァニラ、カリーナでも良い、もしかして指揮官って今まで」
《無いわよ、ダミーの被害や、負傷こそあれど帰って来なかったなんてパターンは一度もね……》
《ありませんわね、それほど指揮官さまは眼を上手く使ってましたから》
そう、ユノは今の今まで作戦や任務に送り出した人形に誰一人の『欠け』を出したことがない、当然だろう、鉄血であれば問答無用で探れる彼女ならば相手の奇襲も無効化にし、的確な戦力で立ち向かえるのだから、だからこそ今回の事はたった一発で彼女の心に罅、いや、もう後ひと押しで砕ける所まで追い込んでしまったのだ。
《ケケッつまりアタシがお嬢様の初めてを奪っちゃったってことかしら~、悔しいでしょ?悲しいでしょ?でもね、それは貴女の所為なのよ~?》
響く声、自分の所為、そうだ、自分にはもっと出来ることがあったはずだと言うのに、相手がナデシコを掻い潜れることなんて分かってたのに、ナデシコからの監視に拘ってしまった、基地のセキュリティは万全だからと慢心して安安と侵入を許し、親友とも言える彼女と新たに来たばかりの仲間を失ってしまった……
《まぁ?アタシはコレでも潜入特化のハイエンドモデル、更にナデシコの眼を掻い潜れるほどのステルスを発揮できるこのペンダントの改良型があればあの程度なんで楽勝なんですけど?それにしたってザルすぎるでしょ中身、外部ばっかりに目が行き過ぎだったんじゃないの?》
「黙ってろ!!」
《図星?そりゃそうよね、ラボだけじゃなくて同時に数箇所も爆薬仕込めるくらいにはザル、貴女がもっと内部の事も考えてればもしかしたらアーキテクトは無事だったかもしれないわね~》
因みに嘘である、トゥーマーンは割とヒーヒー言いながら設置してたのだがそんな事言わなければ分からなく、成功したのは確かなのでと彼女は煽っていく、煽り砕く、事実ユノの心はもう限界に近かった。
元々自責が強い子である彼女がこの現実を見たら一気に限界にまで追い込むなんて分かりきっていること、ケケケッというトゥーマーンの勝利を確信した笑い声、だが彼女だけは違った、オモイカネはユノの側まで行き先ず一回平手を噛ましてから
「甘ったれるんじゃないよ!!!」
「ひゃ!」
「どんな作戦だって、どんな天才だって、どんなやつだって失わないなんてありえないんだ、そりゃ失うってのは辛いよ、でもだからって此処で止まるな、貴女が止まれば今この基地で、外で戦ってる皆はどうなる!!!」
両手で彼女の顔を掴み自分に向かせて叱咤する、ユノの虚ろになりかけていた目に光が灯り始める、何故かは分からない、だけどオモイカネの眼から母親のような厳しい、だが優しさも混ざったそれを感じた、だからなのか、それとも指揮官として今日まで過ごしていたからこその責務か、どうであれ
「ごめん……こちらナデシコ、状況を確認するよ」
《立ち直った?ちっ、おっと!?》
《こちらルピナス、見つけたお母さんを悲しませるやつ!!!行くわよステアー!!》
《容赦しない、此処で倒す!》
立ち直り指揮を始めたユノを見て面白くないとばかりに呟いたトゥーマーンだったが次にの瞬間、ルピナスとステアーの連撃に回避を強いられ、映像がそこで途切れた。
状況は変わってない、未だに危機であり外部との通信もできない、それはつまり繋がりを持った存在とも現状では援軍も頼めない、だが
《こちらシュタイナー、すみません通信機が壊れて今SASSのを借りてます!それで外の鉄血の中に三体の見慣れない人形、その内の一体がさっきから砲撃をしてきて被害が広がってます!》
「駄目、視えない……イチイバル、出れる!?」
《言われなくても、もう出てる!!オラオラオラオラ!!!》
何度確認してもそれらしい反応が見れないとなれば自分の目は役に立たないと判断、ノアに通信を繋げば返ってきたのはその一言であり、直後には彼女愛用のバルカン砲が火を吹く音で塗りつぶされる。
「偵察ドローン展開!イチイバルの戦闘区域へ!」
「……ごめん、それどころじゃなくなるかも」
え?とオモイカネの方を見れば冷や汗を垂らし銃を構える姿、その視線の先を見れば……
「チェックメイトだ」
絶望が、そこの顕現していた。
現状のP基地。
アーキテクト不在、ラボ壊滅
通信施設、ヘリポート等が爆破され、更にはジャミングにより通信阻害等発生中
絶賛鉄血一般ロボと人形、更にはスユーフ、ダラーヒム、ジャウカーンが襲撃中、ナデシコ内にキャロル降臨
現在進行系でジャウカーンの砲撃で基地に被害拡大中。
クソゲーかな?