それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
突如現れた少女、見た目はキャロルと殆ど変わらない、強いてあげるというのならばキャロルよりも目つきが幾分柔らかい印象を与えるという所か。
だがそれはあくまで第三者が見ている分である、今こうして相対しているナデシコ内の全員に言わせるならばその目は酷く冷たい物だと。
「ダミー……黙れ、私は私だ!!」
「理解不能、貴女は今も私のダミー。その証拠に貴女は此処に攻め込んだ」
「違う、これはアイツに全てを取り返すために、そして貴様よりも優秀だと示すために!!」
「まだ言うの?そう、それだけ気付かなかったということか。貴女は私の任を忠実にこなした、廃棄されるはずだったロストナンバーだったと言うのにね」
キャロルの叫びの反論にもメインフレームと思われるエルダーブレインは淡々と機械的に返していく、そしてそれを眺めるユノはエルダーブレインに警戒しつつ二人の話を整理していく。
エルダーブレインが言うことが正しいのならば今目の前に居るダミーブレイン【キャロル】は何らかの理由で廃棄されるはずだった、そこから推測できるのは
(初めの襲撃はエルダーブレインのダミーとして来ていた)
しかし結果はオモイカネの介入で失敗、その後破棄されるはずだったのだろうと考えていたのだがキャロルのその後の叫びでどうやら違うということを知る。
「ああそうだ、貴様はあの後私を不良品だと告げ廃棄した、その時に私はアルアジフに助けられた、アイツの意識が目覚めたから今こうして存在している、そして……」
「お蔭で私は外で勝手に作戦を遂行してくれる駒を手に入れた……そうね、その点では貴女は優秀だったかも知れない、本来自我を持つはずがないダミーがそれを持ち、私への復讐心だと思っているそれで戦力を整えると言う所までは」
感情が全く乗っていない声でひたすら淡々と言葉を告げていくエルダーブレインにユノは恐怖を覚えた、ただ事柄を告げているだけであり相手の感情など関係ないというそれに。
エルダーブレインにしてみれば本当に事実を告げているだけに過ぎないという感情である、寧ろ何故キャロルがそこまで激昂しているのかが理解できない。
「でも、貴女は勝手が過ぎた。このままでは私の邪魔にしかならないと判断したから貴女と配下のハイエンドモデル達を利用させてもらった」
「利用……だと?」
「メインフレームからダミーへの指示、ってこと?」
ユノが思わず呟いたそれにキャロルが目を見開き、それからエルダーブレインへとそれだけで殺せるのではないかという殺意をぶつける、それは今になってやっと自分がいいように使われていたことへの怒りか、それとも自分が不甲斐ないばかりにただ利用され玉砕させてしまった彼女たちへの後悔からの感情か。
どちらにせよ、キャロルがこれから行う行動は一つしか無い、ユノに向けていた射撃ユニットを即座にエルダーブレインに照準を変えて怒りの感情のまま発砲しようとするが……
「!!??」
「初歩的、ダミーがメインフレームに攻撃は許可されない」
当たり前すぎることだと言う感じの声で告げてから、逆に彼女も射撃ユニットをキャロルに向けてから
「此処まで進んでくれたことは感謝する、でも貴女は此処で終わり、家族ごっこは楽しかった?」
『キャロル!逃げようキャロル!!』
「メインフレームよりダミーへ、その場より動くことは許可できない、さようなら、不良ひっ?」
エルダーブレインからの指示を受けてしまえばダミーであるキャロルは動くことも攻撃も出来なくなり、いよいよ彼女が殺されようとする瞬間、パンッ!という発砲音と同時にエルダーブレインの額に弾丸が直撃、だが彼女の装甲を貫くことは勿論叶わずに弾かれるが彼女の動きは止まり、その方向に向く。
キャロルも同じ様に向いてみれば、居たのは睨みつけるような眼でPPKを構えるユノの姿、周りのオモイカネ達は分かった、彼女は今
「巫山戯んな」
怒っていた、いや、これはもう激怒と言える所まで来ているのは口調からして間違いない。今まででも中々お目に掛からないだろうその表情の彼女にナデシコ外のヴァニラ達も驚いたようにモニターを見つめる、が
「ちょ、指揮官なんで刺激したの!?」
「不良品だとか、家族ごっこだとか、貴女に何が分かるの!?」
「理解不能、事実を告げただけ、更に言えば何故ルーラーが感情的になる?」
本気で分からない、と言う声でユノに告げる、対してユノはその態度ですら今は神経を逆なでをし、銃を持つ手に更に力が籠もってしまう。
その態度ですらエルダーブレインには理解が出来ない、そもそもキャロルとユノは他人であり、ついさっきまでは殺そうとしたものと殺されようとしてた者の間だと言うのに何故彼女はキャロルへの言葉に此処まで怒れるのだろうと。
彼女には理解できない、だから
「バグ、やはり人間素体のハイエンドモデルなんて不要……でも今はルーラーじゃない、ダミーを処理するほうが先」
ガチャリと改めて射撃ユニットをキャロルに向ける、がそうすればユノが射撃を開始、無論先ほどと同じ様に弾かれるのだがエルダーブレインにしてみればウザったいという感情になり始める。
どうしてこのダミーに此処まで出来るのかと、どう足掻いても自分には勝てないと言うほどの存在だと言うのに何故牙を向けるのかと。
「お前は、何がしたいのだ」
「キャロルちゃん、逃げて!!!」
「何……?いや、今更私にどうしろと言うのだ」
「逃げるの!!キャロルちゃん、貴女はこうして今まで生きてた、その間の想い出はあるんでしょ!」
弾倉が空になれば即座にリロードしながらキャロルに呼びかける、確かに彼女は今日までの作戦までの行動はエルダーブレインの意志が混ざっていたかも知れない、だけどユノは仲間たちが戦ったハイエンドモデル達の最後を聞いて、決してずっと操られていたわけではないと確信していた
「想い出……?ははっ、どうだったかな」
『そうだよキャロル、皆とのあの日々は皆で作ったものだよ!』
「だが、アイツらは私の命令で……」
意気消沈のキャロルへ、ユノとアルアジフが声を掛けるも動き出さない。彼女の中で今日だけでの出来事で心が砕けてしまった、アイデンティティが無くなってしまったと言う感情に囚われている。
「無駄、だがいい加減にして欲しいから……」
「っ!?」
「貴女から消えろ」
あまりにしつこいと判断したエルダーブレインは標的をキャロルからユノに切り替え射撃ユニットを彼女に向けると同時に銃口にエネルギーが貯まり始め
「クッソが!!!」
「皆動かないでね!いくよ~【ミラクルカーニバル】!!!」
聞き覚えがあるのだが妙に幼い声がナデシコ内に響き渡ると同時に数十発のミサイルがエルダーブレインに襲来した。
最後の人物は誰なんだろうな~
あ、はい、報告しますとP基地側のお話が終わってもキャロル陣営で数話あるのでもう暫くは真面目話なんです、すんません