それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで


世界を識れと言われた日 Session3

キャロル・エストレーヤ、高らかにそう名乗った彼女に雰囲気は先程までとはかけ離れており、エージェント達がそれに飲まれ数歩後退りする。

 

だがキャロルはそれを気にする様子もなく倒れているイントゥルーダーの傍に行き、それから周囲を見渡す、少ない時間ながらも思い出の詰まった家とも言えるそこは見る影もなくなり、瓦礫に保たれるように倒れるスユーフ達を見てから

 

「……すまない、俺が迷ってたばかりに」

 

「いえ。キャロル様ならば、絶対に戻ると信じてました」

 

「ねぇ、アルアジフ様は……?」

 

ジャウカーンの言葉にキャロルは静かに首を横に振る、そうすれば全員がその意味を理解してから悲しげに視線を落とす、彼女たちも実を言えばダウルダヴラの起動条件を知っており、そして

 

『だから、私がそのパーツになる』

 

決意の籠もったその言葉をキャロルが起きる前に起きていたアルアジフから聞いていた、無論止めはしたのだがアルアジフの固まりに固まった決意を崩せるわけもなくジャウカーンなんかは泣きながらも彼女の決定に従っていた。

 

しかし、彼女はアルアジフが死んだとは口にせずに

 

「姉上は、こ こ(こ こ ろ)に共にある、寂しくはないさ」

 

「はは、キャロル様がそんな詩みたいな事言うなんてトゥーマーンびっくり~……」

 

「茶化さない、でも本気で心配は、してましたよ……」

 

この状況でもお前らは変わらんなと笑いながらエージェントに睨みを効かせつつしゃがみ込み、イントゥルーダーに肩を貸してから適当な場所に座らせ

 

「イントゥルーダーも、まさかそこまでボロボロになるまで戦うとは思ってなかったぞ」

 

「ただ、もう無理ね……あとは、任せるわ」

 

見ればもう瞳に光は無くなりは始めていた、それは彼女だけではない、スユーフもダラーヒムもトゥーマーンもジャウカーンも、彼女が来たと同時に力が抜けたかのように火が消え始めていた。

 

それを感じ取りながらキャロルは立ち上がり、顔を俯かせる。覚悟はしていたとは言えやはり目の当たりにすると辛いものがあり、ついさっき姉であるアルアジフを失ったばかりの彼女にとっては休む間もなく来た精神へのダメージ

 

「ハハッ、俺は失ってから気付くなんてな……お前たちが居たことがこんなにも救いだったのか……」

 

全てを失った、たったこの数時間の出来事で起きたこの現実にキャロルは乾いた、そして自嘲染みた笑みを浮かべながら誰にでもなく呟く、こんなことならば自分が馬鹿げたことを考えなければよかったと今更ながら後悔もしてしまう。

 

だがもう戻らないのだ、そして約束したからと笑みを引っ込めて

 

「寂しくはなるな、だが……ありが「だったらテメェも送ってやるよ!!!」

 

エクスキューショナーは許せなかった、自分を無視して此処まで語ってたことも、一瞬でも自分がダミーブレインのハズのキャロルに恐れを抱いたことが、だからハンターの静止も聞かずに斬り掛かる、自分が出せる速度で。

 

だが振り下ろされる筈のブレードは、いや……エクスキューショナーの体全体はキャロルが機械的でありながらもスマートな感じのデザインになっているガントレットが嵌められている右手を翳せば、攻撃を今まさにしようとしていたエクスキューショナーの周りに空間の歪みが現れて銅線が射出、彼女に巻き付き動けなくなった。

 

「っ!?」

 

「感傷に浸ることすら許せないとは、まぁいい、理解してくれとも思わん、だから」

 

死ね。言葉と同時に導線が光を帯び、エクスキューショナーの至るところから焦げる音と匂いが広がり始め、彼女が悲鳴を上げる間もなく銅線は彼女を細切りの残骸へと変える

 

あまりにあっさりとした行動にエージェントもハンターも言葉を失う、あのエクスキューショナーはエリート改造もされていた筈、だが結果はあれだ。

 

「どうした?ハッ、所詮は弱い者いじめしか出来ない連中だったということか?別に貴様らがこのまま尻尾巻いて逃げても俺は構わんぞ?」

 

「舐めた口を、合わせなさいハンター!」

 

「ああ!」

 

スカートの裾を上げサイドアームの機関砲を連射、ハンターも両手の大口径ハンドガンを火を吹かすが今度は同じ装備が施された左手を翳し今度は電磁フィールドが展開、弾丸全てを難なく防いでいく。

 

防ぎつつキャロルは背中の装備を展開、閉じられた三対の羽のような構造が広がりチャージを行っているのかスパークを散らし始めれば、エージェントとハンターは身の危険を感じ飛び退こうとした瞬間、其の足が縺れた、見れば

 

「(銅線がいつの間に!?)まさか、同時に此処まで!?」

 

「当たり前だ、俺と姉上が手を組んでいる以上この程度造作でもない……散れ、そして復活してからメインフレームにこう告げろ、その首を長くして待ってやがれとな!」

 

叫びと同時に彼女の眼の前の空間が捻じれ、ジャウカーンが使った極太レーザーが撃ち出される、無論身動きがとれない彼女等に回避するすべなどあるわけもなく、光に飲まれ収まる頃には影しか残っていなかった。

 

誰が見ても圧勝と言える光景、だが戦闘が終わったと同時にキャロルの身体がガクッと膝を突く、それと同時にブワッと額に汗が溢れ息も乱れているのが分かった。

 

(余裕を演じてみたが、思ったよりもキツイな……調整などはしてないからもあるが自衛の瞬間しか考えてないということか)

 

いや、今はそれを考える時間ではないなと立ち上がり、イントゥルーダーの元に帰れば、なんと

 

「圧倒、的ね……」

 

「大丈夫、では無さそうだか。これでも結構辛いがな」

 

「もう風前の灯火ってやつよ……それにしても『俺』って何?」

 

正直に言えばそこが一番気になっていたのはそれだ、この状況で聞くことではないとは思うのだがイントゥルーダーの中のレイラの欠片が聞いてくれと騒いでる気がして仕方がないので聞いてみれば

 

「む?この姿で『私』ではメインフレームと勘違いされるだろ、だからジャウカーンが読んでた本から『俺』と言うのを引っ張ってみたのだが……似合うだろ?」

 

「……まぁ、良いんじゃないかしら?」

 

「さて、皆は……もう逝ったか」

 

見れば安らかな笑みを浮かべ眠っている彼女たちの姿、キャロルは全員をなんとか一箇所に集めてから、一度部屋に戻りダラーヒムが育てていた花を一つ一つ添えてから一度目を閉じて

 

「ありがとう、お前たちのことは決して忘れない……何時までも、絶対にだ」

 

祈りを捧げ、それからイントゥルーダーと声をかけようとした頃には彼女ももう息を引き取っていた。せめて最後の別れくらいはと思っていたが故に済まないと彼女にも花を一つ添え、最後に忘れないようにと見渡してから、もう一度自室に戻り旅の準備をし少し大きめのショルダーバッグと格納状態のダウルダヴラを背負い、基地の入口に向かい、一度振り向いてから

 

「……じゃあ、行ってきます」

 

『行ってらっしゃいキャロル!』

 

『行ってらっしゃいませキャロル様』

 

『お気をつけて、キャロル様!』

 

『知らない人とかに付いていっちゃ駄目ですからね~』

 

『また遊ぼうねキャロル様!!』

 

そんな声が聞こえた気がしながらキャロルは歩き出し、少ししてから試験的に運用してみようと持ち出していたテレポート装置を起動、彼女の姿は掻き消え、その後P基地が今現在も行方を追ってはいるが不明、だが

 

その日を境に銅線を操る少女を見たとか、放浪している少女を見たとか、噂が流れ始めるようになる。そんな件の少女は

 

「ふぅ、ここはどこだろうな……」

 

また起動したテレポートにより、どこか知らない荒野を彷徨っていた。




速報 キャロルちゃん暫く放浪の旅状態へ。もしかしたらコラボ先のところにもふらっと現れた話書くかも。

キャロルちゃんの資料は早めに書いて纏めます、言うならば彼女の身体はオリジナルの死体で、腐敗等を防ぐためにナノマシンを過剰投与、結果『不変』と言う特性に変容、なので彼女の身体は未来永劫『ロリ体型』であります。あります!(鋼の意志

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