それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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あの襲撃で一番の被害者である。


アーキテクトだって凹む日は凹む

見事にほぼ全壊したアーキテクトのラボ、それを扉があった場所から腕を組み眺める小さな影、誰?などと聞くまでもないだろう。

 

此処で奇襲を受けて前の素体は壊されたものの、地下の特殊ラボに安置されていた予備素体にて復活したアーキテクトその人である、因みに誰が呼んだか【ロリテクト】、なんて呼び名が合ったりなかったり。ともかく彼女はここで自身のラボだった場所をただただ見つめて、そして一言

 

「いやぁ、見事に吹っ飛んだね……」

 

腕を組んでとはいったが別にコレは自信の現れとかではなく、単純にポーズを決めたかっただけと言うだけであり、本人はこのラボの惨状を見て割と凹んでいたりする。

 

吹き飛んだのだ、丹精込めて再現したあの鉄血製のパソコンも、巨大モニターも、作り途中だった手書きの設計図も、数体のお手伝いちゃんも、全部吹っ飛んだ。

 

「はぁ」

 

いくらアーキテクト言えど、これには流石に溜息を吐きたくなるというものである。一応、データのバックアップは88式のラボのパソコンに移してあるのでそれは大丈夫だし、重要なものに関しては自室の厳重にロックされているパソコンにあるのでそれは問題ない。

 

問題ないが、それとコレとは別である。たとえ趣味であろうと丹精込めて作っていたのは確かであり、それら全てが消えてしまったとなれば、遂に彼女はガクンと両膝と両手を地面に付き項垂れ

 

「あだじのざぐひんだぢがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

やっと現実を認識したアーキテクトの心の叫びであった。この惨状を見るまでなんとか抑え込んでいた激情が遂に叫びと涙になって溢れ出た、あんまりだと、ていうかラボ吹き飛ばす必要なかったじゃんと、終いには

 

「おのれエルダーブレイン……!!!」

 

ここに、完璧な私怨でエルダーブレインに敵対意識を持ったハイエンドモデルが生まれた瞬間であった、ある意味快挙と言えるかもしれない、ともかく彼女のラボは現状でコレであり、此処で開発等は出来ないので今は88式のラボを間借りしている状態である、と言うよりもロリ体型の彼女が一人で開発というのは88式的にもゲーガー的にも気が気でないので正直に言えば近くで作業してもらってるほうが安心である。

 

「うぅ、アタシの作品達が全部……全部ぅ……」

 

「仕方ないですよ、寧ろあの規模の爆発でラボだけで済んだのが逆に凄いと思うんですけど……」

 

「そこはあのラボはもし万が一が有っても大丈夫なように作っては有ったからね!まぁ、まさか内部からドカンは想定なんてしてなかったけど……」

 

褒められ上がったテンションが急降下したのを88式は感じ取った、どうやら本気で凹んでいるらしい、しかも彼女が凹む理由はラボだけではなく、こちらも無残にジャウカーンの光学兵器による砲撃で損傷した特殊監視塔も彼女のテンションを凹ます理由になっている。

 

あの特殊監視塔は彼女の持てる技術の一つである、反重力フィールドを使い、攻撃を感知すると反重力フィールドを展開、重力にて攻撃を防ぐという物だったのだが、これ光学兵器を想定して居らず、実弾が対象だったが為に初めの一撃で反力フィールドは無情にも貫かれ監視塔は半壊、コレを聞いたアーキテクトが項垂れたのは無理もないだろう。

 

「凹む、すっげー凹む……自信作が尽く今回はぶっ壊されたから……」

 

「あわわ……ほ、ほら主任、元気出して下さい!あ、そう言えば先程指揮官がダンボールいっぱいのカステラを貰ったとか仰ってましたよ?」

 

ガタッ、と立ち上がるアーキテクト、どうやら食い付いてくれたらしいと思いながら詳細を話せば、まぁ今できることないしねと一言、それから

 

「んじゃ、ちょっとユノっちの所に顔出してくるよ~、なんか向こうも最近は働きすぎだって言われてるみたいだし、親友として止めてあげないとね!」

 

「いってらっしゃい、主任。確かにここ最近、指揮官がきちんと休んでいるところを見た記憶ないかも?」

 

今彼女が気付いたこの事、コレが後にユノのワーカホリック大矯正大会に発展することになるのはもう少し先の未来の話である、とまぁそんな余談は置いておき、アーキテクトはテコテコとユノが居ると思われる茶会場所に行ってみればそこにはもう既にユノとクリミナ、ノアとクフェア、更には娘たちが集まっており、送られてきたと思われるダンボールからダイナゲート型のカステラを美味しそうに食べていた。

 

「あ、アーちゃん!そうだ、アーちゃんも食べる?」

 

「もちもち!おっと、悪いね~、よいしょっと……所でこのカステラはどこからのだい?」

 

「リホ・ワイルダー、前回のS10での作戦の時に居た奴だよ。まぁそこで少しあってな、まぁでもアタシは気にしてねぇんだけどなぁ……」

 

モグモグと食べながらノアがそうボヤく、手紙の内容も彼女的には確かにあの時は少し激昂してしまったが寧ろ自分が突っかかった方なのだから寧ろ謝る立場なんだけどなぁとすら思っている。

 

が相手がどこにいるのかも知らないので取りあえずは次あったら謝っておくかと保留し、カステラを食べている。その辺の事情は知らないアーキテクトはふぅんと思いながらカステラを一口、程よく柔らかく、甘さもあり、思わず二個三個と食べ進めてしまうほどで、その様子を見ていたユノがふと思い出したことを聞くことにした。

 

「そう言えばアーちゃん、ラボは大丈夫なの?」

 

「うぅむ、あれは暫く無理そうだね……今はナデシコの修復と改修もあるからまぁ一月二月は考えないといけないかなぁ、その間ははっちゃんのラボを借りるしかないね」

 

でもまぁラボは残念だったけど、それ以上に嬉しいことがあったんだよねと彼女はカステラを食べながら更に続ける、嬉しかったこと、それは

 

「D地区のドリーマーや、ゲーちゃんとかがさ、私が殺されたって時に、怒ってくれたって聞いて、なんだろ、ちょっと嬉しかったんだ」

 

「そりゃ勿論、怒るし、私達だって悲しむよ」

 

ユノの言葉にクリミナ達も頷く、あの日トゥーマーンから告げられた時、ユノは勿論だがその場に居たヴァニラ達も、同じ様にその心に大きな衝撃を受けており、ゲーガーに至ってはあの通りにガチギレになるレベルであり、事故とは言えD地区のドリーマーも激昂、それを聞いてアーキテクトは本当に嬉しかった。

 

自分は皆に想われていたんだと、だからこそ考えた

 

(次からはこの作戦は止めておこ……)

 

モグモグと楽しい茶会を過ごしながらアーキテクトは自身を囮にするあの作戦は余程なことがなければ使わないと心に誓うのであった、最後にだがゲーガーが大破させてしまったあの小手を見た彼女は

 

「……すまん」

 

「私の傑作が、全滅した……」

 

また深く凹んだことだけを報告しておこう。




まじで今回の一番の被害者よな……

サラッと出しましたがリホ・ワイルダーさんからの贈り物美味しく食べました!(なお、一時間も掛からず完食した模様)

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