それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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試作機のテレポートは壊れた


識る旅、ある日のキャロル

S地区のどこか、街道と言える道の脇をただ歩く少女がそこに居た。深緑のフード付きのマント風な外套を身に纏い、そこからチラチラと見える服装は年頃の少女らしいフリフリが付いたモノ、肩からは大きめのショルダーバッグを掛け、特に目的もなく歩いている彼女は【キャロル・エストレーヤ】

 

世界を識るべく旅に出てはや数日、それだけだが様々な出会いがあった。ある時は人攫いに拐われそうになっていた姉妹を救った、ある時は野盗に襲われていた家族を救った、そしてある時は……

 

(人を救ってばかりだな……)

 

別に救うことに関しては嫌ではない、別段苦戦するような相手でもないので少ないながらもお礼を貰えるというのは彼女的にも助かる。まぁ無ければないで別に困らないのでこの行動に出るもう一つの理由のほうが割合的には大きいだろう。

 

それはごく単純に、姉上ならば救うべきだと言うだろう、それだけである。

 

(姉上、世界を識るってなんだろうな)

 

無論、救ってばかりではない、街に寄り様々な人と会話もした。この年頃の少女が一人旅ということで毎度のことのように心配の声を掛けられ、中には食料や水までタダで分けてくれる住民も居た。

 

こんな怪しさ満点の少女相手になんともお人好しな人間だと思いながらも、寧ろこんな世界でそんなお人好しを発揮できるのは凄いなと関心もする、無論、彼女を誘拐しようとしたものや、養ってやる変わりに奴隷のごとくな扱いされろみたいな奴らも居たが、まぁどうなったかは語るまでもないだろう。

 

だが肝心の世界を識る、それはまだ彼女の中で掴みかねていた。【知る】事はできているとは思っている、実際、こうして一人で旅に出て改めて人という物を、この世界のことで初めて知ることが以外にも多かった。でも【識る】とは違う気がした、姉であるアルアジフが言ってたこれがどういう意味なのか、まだそれが彼女の中で分からないでいる。

 

「……今日は、冷えるな」

 

北風が彼女にぶつかり、少し冷気を感じた。自分で少し冷えると感じたということは他の者にとっては今日はとても寒い日なのだろうと考えながら街道を道なりに歩いていると一台の車が猛スピードで彼女の隣を過ぎ去り、停車した所で思わず溜息を吐いた。

 

今日に至るまでに何度目だと、いや、こんな世界だからこそこういう輩が多いのは分かるのだがとなんとか納得させて、被っているフード越しで目の前を見れば数名の男達、開いた扉から見えたのは人間と思われる少女数名と、人形が一体

 

(アイツは確かM12だったか?人攫いと人形攫いとは豪胆な……いや、人質にされ人形が手出しできなかった、が正しいか)

 

「よぉ嬢ちゃん、一人で旅してっとアブねぇぞ?俺達みたいのに拐われちまうからなぁ」

 

声を掛けられるも無視し冷静に状況を分析、恐らくはM12は縛られているだけで無力化はされていない、人質が居るから動けないだけだろうと推測、敵は目の前に3人、車内の助手席に一人、ワゴン後部に二人、そこまで分析してから

 

(ダウルダヴラ、ガントレットのみ限定展開)

 

「おい、無視してん……」

 

「聞いてるな人形、拘束は解いてやったから車を飛ばして逃げろ」

 

目の前の男が細切りになった、と同時に車内で少女たちの悲鳴と血と肉が落ちる音が聴こえた、そしてキャロルはそんな事を気にする様子もなく銅線で高速を切ってあげたM12に向けそう告げれば

 

「え、でも貴女が!」

 

「俺が足止めしてやるから、良いから行けと言っている」

 

若干ドスを聞かせた声を響かせればM12はごめんと謝ってから運転席に飛び移り急発進、それを見ていた残り二人がキャロルに睨みを効かせるも、そんなものが通る彼女な訳がなく、数秒と要らずに細切れ遺体となり道に転がることになる。

 

ここ数日、毎日だなと思いながら返り血が付いた外套をショルダーバッグから取り出したタオルで拭いてからまた歩こうというタイミングで車が逃げていった方角からバイクのエンジン音が聴こえた、新手かと思っていると現れたのはキャロルは知らないが式自が見れば即座に【ボンネビルT120】と答えたそのバイクは彼女の前に停車し、ドライバーがヘルメットを取れば現れたのは美麗と言える顔の女性。

 

彼女はキャロルを見つめ、周囲を見渡し、最後に道に転がる細切りのそれを見て、改めてキャロルに視界を向けてから

 

「それ、やったの貴女?」

 

「だとしたら?そもそも急に現れ何の用だ」

 

「さっきうちの相棒にね、自分達を助けるために一人で囮になった女の子が居るって教えられて飛ばしてきたのよ……まぁ、要らないお世話だったようだけど」

 

この手の遺体には慣れているのか、特に大きな反応も示さずに寧ろ傷一つどころか服装の乱れすらなしにこの惨状を引き起こしたキャロルに関心をしている様子が見て取れた。

 

一方、キャロルはこれからどうしたものかと考えていた、車が向かい、そして彼女が来たということは間違いなく先に街はある。問題は歩いてそこが日没までに突くのかという所だ、そんな事を悩んでいると

 

「さて、見た所訳有みたいだけど、女の子の一人旅は危険じゃない?」

 

「言われ慣れた、だが止めるつもりはないぞ、俺はまだ旅を続けたいからな」

 

「そう、まぁだったら止めはしないわ。でもまぁ今日はお礼をしたいから街まで送るわよ」

 

ふむ、とまさかの提案に思考を巡らす。今の会話から恐らくは悪人ではないだろうとは判断が付いた、先程相棒、と言っていたのはお礼は相棒を救ったその事だろう、暫しの思案、それから

 

「一つ聞いていいか、S地区を出るにはまだ距離はあるか?」

 

「S地区を?そうね、この先の街が丁度境目、抜ければ直ぐに別地区に行けるけど」

 

これもまた想定外、どうやら思ったよりも歩いていたらしいと更に驚いたキャロル、それからならばと女性からの提案を受ければ、じゃあ後ろ乗ってねと言われバイクは彼女が来た方角に向け走っていく。その間キャロルは自分が歩くよりも遥かに早く流れる風景を見ながら、また世界を識る、ということを考えていると

 

「所で、貴女はどんな理由で一人旅なんて?」

 

「唐突だな……姉上が生きたかった世界を生きてと、見たかった景色を見てくれと、話したかった人と話してくれと……そして」

 

「そして?」

 

「世界を識れ、と託されたからだ……意味は、まだ分かってないがな」

 

随分と壮大な理由ね、と女性が呟くがキャロルも改めて自分で言ってから確かになと思ってたりした、そして、思った。

 

もしかしたら難しく考えすぎてるのかもなと、あの姉上がそんな難しいことを言うだろうかと

 

(あぁ、だとすればもっと単純かもな)

 

バイクは速度を上げ走る、目的地は地区境目の街の……

 

「孤児院だとは聞いてなかったんだが!?ああ、こらオイ、服を引っ張るな!!」

 

一晩お世話になるも、寝静まるまで女性が経営する孤児院の子供たちにもみくちゃにされるキャロルだった。




こんな感じに彼女はまだ旅の途中。

え?女性のモデル?最近MGS3と4の動画見ててね?

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